WELLA DiaryINDEX|past|will
J家で一晩過ごし、午前中はやや低調。血圧ひくーいという感じだが、なんとかごまかして庭を散歩したり。今日はJ家にCとJeがそれぞれ食べ物を持って集まり、ランチ(彼女達はpicnicと呼んでいる。別に外で食べなくても食べ物を持ち込んで食事をするのはpicnicというらしい。公共の場でも「NO PICNIC!」という張り紙を見ることがある。)。その後グランチェスターに歩いていくという「お決まりのコース」の予定である。 ケンブリッジの中心部からケム川沿いに南へ20分ほど歩くと、あっというまに野原が広がり、さらに野原を行くとグランチェスターという小さな村になる。古い教会や農場があるのどかな村だが、偽証罪で収監されたジェフリー・アーチャーの屋敷があったり、その隣にはオーチャードという名前のりんご園に囲まれたティーハウスやその近隣にはパブが何軒かある。ケム川をボートで行くもよし、サイクリングよし、歩いても1時間足らずなので、グランチェスターに行ってお茶や食事をして帰ってくるというのは、ケンブリッジのお手軽な遊びの一つである。 ランチに備えて浴衣に着替える。実は彼らは3人とも日本に行ったことがあり、着物も体験済みなのだが、浴衣というのは案外盲点である。簡単に着られて雰囲気もいいので大変喜ばれる。写真を撮るというので、それらしくポーズをとると、新潟在住経験者のCが「さすが」と笑う。彼女はすごく高い着物を貸してもらって、写真館で撮影したことがあるらしいのだが、ただ仁王立ちに突っ立ってただけで友達に怒られたという。「着物を着てからトイレに行きたくなっちゃったのよ。でも友達にその着物の値段聞いたら恐ろしくてトイレに行けなくなっちゃって、写真撮る間ずっとトイレのことしか頭になかったのわ。」と言った。他の人達も豪華な着物を着付けてもらったらしく、着物=豪華=高いという恐れがあるらしい。 彼らの話は、世間話になってしまうとさっぱりわからない。ただその場にいてニコニコ笑っているだけなのだが、時々私に関連する話題が出ると突然「そうよね!」と話を振られる。私が何かを言おうとすると固唾を呑んで私の言葉に聞き入るのでプレッシャーでもある。ハムとかサラダとかパンとか、Jeの家の庭からもいできたグリーンゲーブル(green gable)の実とか、別に張り切ったご馳走ではないがわいわいと食べる。昨日Cが「うちトマトがすごくたくさんなってるからもってくわ!」と言っていたが、実際笑ってしまうほどたくさんあった。 その後、遠足に出発。午後から雨が降るかも知れないという予報だったが、私が晴れ女なのか、青空が広がってきた。住宅街を抜けて野原へ。その先はほとんど一本道なので、とりとめのないことを話したり、牛を眺めたりする。この時期はブラックベリーがたくさんなっていて、摘みに来ている人もたくさんいる。いいところだよなぁとしみじみ思いながら歩いていると、J夫人が後ろから呼び止めた。Dが現れたと言う。忙しくて今回は会えないと思っていたのだが、たまたま彼女も孫娘とアイスクリームを食べにオーチャードまで行くことにしたという。小さい街ケンブリッジらしい出来事である。孫娘をつれたDに「じゃ、私達は先に行くと思うから」といったん別れの挨拶をして先に進むが、こっちは白鳥の家族連れをじっと見たり、話をするために立ち止まったりするので大幅に遅れ、オーチャードに着いた時には、Dたちはすでにアイスクリームを買って席を探しているところだった。 おなかが一杯なので、全員リプトンの缶入り(といっても紙製)フレーバーティーにする。ジャスミン入りとか緑茶入りとか朝鮮人参入りとかいろいろな種類がある。イギリス人は相変わらずアイスティーを飲まないらしく、冷たいお茶と言うとこのように甘みや香りがついたモノになってしまうがなかなかおいしい。去年あたりまで日本人が目に付いたが、今年は中国人の留学生が圧倒的に多い。一人っ子政策の影響か、みんな贅沢な格好をしている。 しばらくのんびりおしゃべりをして、また帰路につく。敷地の中にグリーンゲーブルの実がたわわになっている木があり、一つもいで食べてみる。甘い!今度はCは植物好きらしく、木の実や種や葉っぱを片っ端から採集しているのでなかなか先へ進まない。JとJeはいちいち立ち止まりながら話をしている。Cが「あたし気づいたのよ。年取った女性ってちょっと大事な話だとすぐ立ち止まっちゃうでしょ」と小声で言って笑う。来年もケンブリッジに来るか?とCに聞かれ、まだわからないと答える。いずれにしても8月のケンブリッジはちょっと飽きてきたので、今度来るとしたら秋から冬にかけた時期に来たいというと、「今度はうちに泊まってね」と言ってくれる。多分再来年だなーと思いながら喜んでおねがいする。 Jの家近くに戻ってきてもまだ採集と立ち(とまり)話は続き、家に帰りつくと6時になっていた。J氏も帰ってきている。今日は来てくれてありがとうまた会いましょうね。とJeとCに挨拶すると、Cが「来年彼女は秋か冬に来るんだって!で、今度は私のとこに泊まるのよ!」と高らかに宣言する。あれぇ、来年来るとは言ってないけど、まだ未定だけど…と思っていると、J夫人が「まるで(チェスの)キングみたいね」といって笑った。確かに来るたびにそのコミュニティの誰かの家に泊まっている。 J夫人は疲れも見せずあっという間に食事の支度にとりかかる。J氏は食前酒のシェリーを勧めてくれるが、それともサケにする?と聞いてきた。お土産の清酒があるので「電子レンジでお燗」というのをやってみたいらしい。小さいグラスに入れて、多分5secぐらいかな?というので、ご冗談を!そんな長いことをやっていたら大変なことになる!せいぜい1か2ぐらい!と主張。日本人がそういうのなら、とスイッチを入れるや否や終了。2にしても終了。ハッと気づく。完璧にsecondsとminuitesをとり違えていた。というわけで「15秒ぐらいです。」と訂正し、上の方だけ温まっているはずなので何かマドラーか何かでかき混ぜて、とアドバイス。J夫人に聞くと「マドラーはなくてこれしか…」といって出してきたのはなぜかアルミ製の7cmほどの釘。いったいコレは?? warmed sakeが出来上がり。安いお酒は熱燗でもいいけど、上等なのはぬる燗で…とか薀蓄を垂れる。J氏は去年日本に行ったとき泊まった家で、燗酒を初体験していたく気に入ったらしい。うちには専用の容器(とっくり)がないのでできないのかと思っていたがこれで自分でもつくれる、と喜んでいる。「グラスに入れて15秒、そしてあとはアルミの釘でかき混ぜるんだね」と再確認していた。
|