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翌朝はまずまずの快晴。朝食付きなので、レストランが開くのを待って下へ。山と盛られたハムハムハム、チーズチーズチーズ、パンパンパン。それとシリアルとジュース類、湯気を上げているのはスクランブルエッグとベーコンのみ。ひとまず一通り食べる。テーブルの上には「魔法瓶」に入ったコーヒー。今回は移動がないのでこの先数日間はこのメニューである。食べ飽きない程度にドイツ風のすっぱいパンを食べ、穴のあいたチーズを食べ、幾種類ものハムを食べる。ティーバッグの品揃えも豊富でとりあえずアールグレイ。ほっとする。 8時の開始に備えて部屋を出る夫を、学会場まで送りがてらホテルを出る。厳重な防寒具は必要なさそうである。今回は思い立って一眼レフのカメラをひょいとかばんの中に入れてきた。デジカメの簡便性と高性能に押されてずっと戸棚にしまいっぱなしだったのだが、ふと手にとってみるとしっくりと手に馴染む。見るとフィルムが入ったままになっている。ありゃ、いつのだろう。ベランダに出て花の写真をとってみる。シャッターを押した瞬間に手から伝わってくるこの気持ちのいいシャッター音。持っていくことに決定。 地図をもたずカメラだけもって勘で歩き出すと、広場にでた。古ぼけた大きな教会があるので中に入ってみると、息を呑むほど美しい装飾が内部に施されている。素ガラスの窓から入り込んでくる朝日に、祭壇が浮かび上がる。会場は川沿いだというので旧市街を抜けて川に出る。それにしてもあたたかい。街中には雪の気配すらないが、ふと目を上げるとぐるりとそそりたつ壁のように白い山が見える。川沿いに歩きながら何度かシャッターを切る。デジカメと違ってとった写真をすぐ見られないのが、ちょっともどかしい。を学会場まで見送ってもときた道を歩いて戻る。 適当に街をぶらぶら歩く。まだ開店前の店も多く、店頭の品を覗いているといぶかしがられる。お邪魔してはいけませんね。この辺はまたあとで来ることにして、石畳の道をさらに進むと、きらきら輝くクリスタルが目についた。白鳥をモティーフにした看板がかかっている。スワ口フスキーの店だ。 最近はビーズアクセサリーブームの到来とともに「そろばん玉」を呼ばれる高級クリスタルビーズでも有名だが、元はシャンデリアを作っていて、飾りに使うねずみに目玉をつけて置物にしたのが始まりだとか。オーストリアの会社ということは知っていたが、本社も工場もインスブルックにあるということは、今回ガイドブックで初めて知った。 8時から開店しているというので、中に入ることにする。一つ一つ丹念に覗き込んでいると日本語で店員に声を掛けられた。「ローマからきましたイタリア人のリチャードです。」と名乗るその店員に世話をしてもらって友人に頼まれた商品を買う。日本で買うより3割ぐらい安い。ていうか、日本が高いのか。免税にするにはもう少し値段がほしいので、自分用に安い指輪を一つ買う。一応クリスタル、きらきらと光る。日本だったら玩具の指輪しか買えないような値段である。 そろそろ午前のセッションが終わって夫が戻ってくる時間になったのでホテルに戻ることにする。すでに清掃が済んだ部屋で窓を開け、靴も靴下も脱いで、鳥のさえずりを聞きながら免税書類に書き込んでいると、夫が帰ってきた。部屋に入るなり「ああ〜ぼくが居ない間にもう買い物してきたの?」「どこいったの?スワ口フスキー?」「ひどい〜」とひとしきりわめいた。一緒に行くつもりだったらしい。
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