WELLA
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2000年08月05日(土) 第5話 自由への足跡

今日はFreedom Trailというアメリカの独立にまつわる様々な史跡を歩いて辿るコースを行くことにする。丁寧に見て回ると一日かかるというが、ボストン歩け歩け運動には最適である。出発地点は街の真ん中にある観光案内所なので、そこへ行ってまず地図をもらう。
ガイドブックには、この地点からさあ出発!という印が案内書の目の前の地面にあると書いてあるが、見当たらない。せっかくの気分がそがれたがかまわず出発する。はじめは金ぴかのドームを持った州立会議場。ここでボストンの名物をもう一つ見つけた。JFKである。州立会議場の庭にはアメリカ建国に寄与した様々な偉人や、Websterなどの教育者の銅像が並んでいる。その中の一つにニカっと笑った首だけのJFKの銅像がある。JFKは郷土の誇りである。 JFKの名がついた道路、建物は至るところにあり、JFKの博物館、多忙な公務の合間を縫って家族で休暇に戻ってきたという家もあるらしい。さすがアイドルさすが貴公子である。

Freedom Trailは、順路に沿って道路にペンキか煉瓦で赤い線が示してあって、ともすれば赤い線だけ見つめて進みがちだが、その線を辿ってちゃんと目を上げて歩けば古い教会や墓地、集会所の跡などを順に見ることができる。墓石が朽ち始めている墓地には案内人や案内板が用意されていて、きっとアメリカ人が多いのだろう、観光客が建国当初に尽力した偉人たちの墓石をひとつひとつ興味深げに見て回っている。夏休みのシーズンとあって、家族連れや留学生らしい若者の姿も多い。私にとっては遠い国の昔の事情なのであるが、彼らにとっては祖国の尊厳、自分たちのアイデンティティに関わる史跡である。熱心になるのもうなずける。

日本よりかなり涼しいとはいえ、やはり日中はかなり日差しが強い。途中にスターバックスコーヒーが3〜4軒あって、思わず吸い込まれていく。小休止のあと、古い煉瓦造りの建物が見えてきた。これは当時の州会議場で、その前の交差点にはボストン虐殺事件の現場に丸い大きなプレートがはめ込まれて保存されている。ふむふむなるほどと感心した後改めて建物を見ると、見覚えがある。なんと初日に地下鉄に乗った駅舎ではないか。集会場のように見えたのも無理はない。元が会議場だったのだ。こんな歴史的な建物の地下を駅にしてしまうとは、さすがアメリカ人、身も心も太っ腹である。

さらに歩き続けるとピザやエスプレッソの看板が増えてきた。リトルイタリーと呼ばれる地域らしい。イタリア系の移民が多く住むのでカトリック教会もある。そういえば他にチャイナタウンもあるし、ニューイングランドだといって、英国系清教徒の移民ばかりではないのだと初めて思い至る己の無知。
道は起伏を繰り返しやがて港を見下ろす墓地に出る。この後イギリス人に奇襲をかけた合図が灯された教会、最古の軍艦、砦の跡に立つ記念塔などを順に見て回る。それぞれに逸話があり、イギリスとの戦いにおいてここを舞台にいかなる出来事が繰り広げられたか、自国を勝ち取るということはどういうことか、考えてみる。それらの史跡にはそれらを見つめ、記憶に刻み続ける人々の思いが込められている。

丘の上から街を見渡す。そちこちで星条旗がはためいている。この地で晴天に翻る星条旗は、ひときわ思い入れ深く誇り高く掲げられているような気がした。


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