WELLA
DiaryINDEXpastwill


2000年08月02日(水) 第2話 長い長い一日

気がつくと飛行機は降下を始めていて、着陸体勢に入れというアナウンスが流れる。
隣りの韓国人はスチュワーデスに歯ブラシをくれといって首尾よく手に入れる。なるほど、そういうことって頼んでいいんだ。
それにしてもよくも眠ったものである。根性根性、と夫に威張ってみせる。この後もボストンまでの 3時間たっぷり寝てやるぜ。ふふふ。

一方機内で一睡もしていない夫はかなりボケ物質が体内に回っているようだ。ぐずぐずと入国審査を済ませ、のろのろと荷物をピックアップし、国内線乗換えのカウンターに向かう。カウンターではさかんにボストン行きの乗客を呼んでいる。太った黒人の中年女性係員がにこやかに説明を始める。
「ボストン行きの方?ええとね、ボストン行きにキャンセルが出ました。それでその前のこの便に、大丈夫そうならトライしてみてください。45分後の出発です。それと、もっと大丈夫そうだったらもっと早いこっちに乗ってもいいです。こっちはあと15分後に出発です。でも45分後の便がとてもいいと思いますよ。とにかくターミナルに急いでくださいな。荷物はどの便でいってもボストンに着きます」
ターミナルが離れているので、いくらなんでも15分後出発の便は無理だろうと思うが 、どうやら予定していた便より1時間も早く乗れるようなのである。再度荷物を預けてほくほくとゲートに行くとそこでスタンバイのカードを渡された。必ず乗れるわけではないらしい。頭の中を大きな疑問符と不安がよぎる。


どうやら無事に乗り込むことができ、出発時間が遅れたものの飛行機は順調に飛んで、気がついたらお昼の機内食が出され、気がついたら着陸体勢に入っていた。この間、体内時計ではほんの40分ほどなのだが、実際は3時間経っているらしい。日本との時差は13時間。朝家を出たぐらいの時間に戻ってしまったが、ほとんどの時間は寝て過ごしている。夫はやはり機内で眠らなかったらしく、ボケ物質が全身に回っている。
ふらふらと荷物口へ向かう。荷物が出てくる口は二つしかなく、到着便順にどんどん同じ場所に出てくるだけである。あたりにはかなり前に到着した分の荷物が所狭しと置かれている。
…ところで、荷物が出てこないのである。今まで一度も旅先でトラブルらしいトラブルにあっていない私だったが、ついに荷物をロストしてしまったのか?夫の分も出てこない。ただいたずらに目の前のベルトコンベヤーで見慣れた他人の荷物が何度も周るのをむなしく見つめているだけである。
1時間以上も経っただろうか、バゲージクレームに問い合わせると、「多分あとの便で来るだろう」との答え。最初に乗るはずの便に乗ってくるのかと思ったら、その便はキャンセルになって、夜9時45分着の便に乗ってくるかもしれないという話である。キャンセルってそういうことか。ボストンには着きますってそういうことか。
ホテルの予約もちゃんと取れてるかわからないというので、荷物はあとでまた取りに来るとして、ひとまずホテルに行くことにした。この調子だとホテルに荷物を届けてもらうにしてもあまりにも信用できない。空港からはまず地下鉄の空港駅に行き、そこから地下鉄を二回乗り換える。これで後で荷物を取りに来るのは手間のかかることである。帰りはタクシーにしよう。

ボストンは米国最古の町の一つであるので、「米国初」がつくものが多い。ご多分にもれず地下鉄はアメリカで一番古く、路線名は単純にレッドライン、オレンジライン、グリーンライン…、というように色で分けてある。あまり大きくない町なのだ。東京のように色が足りなくなって南北線のような微妙な色合いを設定する必要はないのだな。
とりあえず乗った地下鉄でやっと座れたかと思うと、たった二駅乗っただけなのに次々と乗客が降り始めた。どうやら途中駅止まりらしい。仕方がないので、他の乗客について降りる。ホームには他の乗客が待っていて、この電車に乗り込む様子である。よく分からないので、しばらくホームで様子を見ようとすると、ちょっとインテリっぽい女性が私たちのほうに向かって真っ直ぐに歩いてきて、彼女は「ボストン市内に行くの?」と聞いてくる。そうだ、と答えると「それならバスがこっちから出るわ」という。そういえば他の乗客もそちらのほうへ歩いていく。どうやら電車に不都合があって代替バスがでるようなのだ。
うーん、アメリカ英語ってわかんなぁい。などと思ってみるがイギリス英語だったところできっと聞き取れなかっただろう。とりあえずバスが行きたい方向へ行くのを確かめてバスに乗る。道路は割と混んでいて、途中長いトンネルなどもあって時間がかかる。この道をまた荷物を取りに戻るのかと思うと暗澹たる思いにかられる。


れいこな |MAILBBS