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1997年09月14日(日) ところかわれば

名古屋の婚礼は派手なことで有名ですが、加賀の国も昔前田の殿様が尾張の商人を連れて移り住んだことから、こちらもなかなかの派手っぷりと聞いています。
金沢市内のホテルなどでは結婚式帰りのご夫婦が重そうな引出物を両手にぶら下げてタクシーに乗り込む姿をみかけます。引出物は一家に一つだと思っていたのですが、二人それぞれに引出物を持っています。
なんでも引出物は「片手で持ててはいけない」とか「重ければ重い程よい」「かさばるものがよい」といわれているそうで、お重、果物かご、食器セットの類にずっしりと二人の愛と両家の意地がこめられているのであります。私の友人は、学生時代に東京から日帰りで金沢の結婚式に出席して、あまりの引出物の多さに「すっかり具合が悪くなっちゃったわ」とこぼしていました。彼女は忍耐の人なのでよっぽどだったと推察されます。
そんな訳で。物が豊かな現在では大安吉日ともなると、持ち切れなかった果物かごが小松空港に大量に捨てられている、という話を聞いたことがあります。
そんなの学校にもってきてくれたら、いくらでも食べる人がいるのにね。

結婚式が派手なら、それに付随する行事も派手になるのが自然の理というものです。
酒屋さんに行くと「友白髪」とか「鶴亀」という、いかにもいかにもな名前の一升瓶が並んでいます。それからずばり「結納屋」という看板をよく見ます。結納関係を一切取り仕切るんでしょうか。それと連動して「水引屋」というのも見かけます。水引というのは、のし袋についている細い紐ですね。水引だけで商売が成り立つなんて、すごい土地柄です。水引細工の鶴や亀があるのかな〜などと思いながら一度も入ったことはありません。
それだけで商売がなりたつといえば「欄間(らんま)屋」というのもありますが、これは直接関係がなさそうなので置いといて、あとは家具屋ですね。

この辺の家具屋さんに置いてある婚礼家具はハンパじゃありません。
一度、買う気もないのに友達(しかも妊婦)と冷やかしで入ったのですが、これまた「大きい、重い、かさばる」の三拍子です。よくもこんな大きいものが入る家に住めるものです。
しかも高い。婚礼家具を買う為の「積み立て」というのがあって、式の予定まだ…などと言ってごまかす私達に、お店の人は「お式は決まってなくても積み立てを…」と強く勧めてくれました。三年位積み立てをするのはザラなようです。ホントかな。
それから家具屋には必ず「透明なトラック」というのがあります。これは荷台の部分にガラスがはまっていて、中の荷物が見えるようになっています。そこに大枚はたいて買った家具を詰め込み、音楽を流しながら賑々しくお届けするという次第です。
これは婚礼に限ったことではないらしく、一度、知合いが家具を買った時に「頼むから普通のトラックで来てくれ」と言ったところ、思いもよらぬ注文に家具屋さんは「そんな話聞いたことがない」と、とりあってくれなかったそうです。

あとは車社会なので、お嫁入りの必須アイテムといえば自動車です。新車に大きなリボンをかけて、家具屋のトラックの行列に晴れがましく加わります。
車社会といえば「板金(ばんきん)屋」という商売があります。これは車をぶつけたりこすったりするときにお世話になるところで、ちょっとの傷ですごく料金がかかるそうです。町はずれには必ず板金屋があります。よくまあこんなに密集していて商売がなりたつなと思うのですが、なりたつんですな、不思議と。

…いや、だから、所変われば商売もいろいろだってこと言いたかったんですってば…。


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