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交差点で信号待ちをしていたら、弁慶号がサイレンを鳴らして颯爽と目の前を走り抜けていった。 弁慶号といってもSLではない。白いボディーに赤いライン。脇腹に『小松市中消防署』の文字。上部には勘亭流、つまり歌舞伎文字に似せた丸みを帯びた筆太の書体で『弁慶号』とある。ぴ〜ぽ〜。 やはり「弁慶号、出動せよ!」とか言われて小松中消防署を出て来たのだろうか。 市民からも「弁慶号でお願いします」とかご指名があるのかもしれない。今ごろ「しっかり! 今すぐ弁慶号が来ますからね!」と弁慶号の到着を待ちわびているのだろうか。 …つい不謹慎なことを考えてしまった。ぴ〜ぽ〜。 なぜ小松に弁慶が、というと実は空港近くに『安宅の関』という関所跡がある。歌舞伎「勘進帳」での舞台となったところである。 はは〜ん、あれか。と思わない諸氏の為にさくっと説明を致しますとですね、頼朝に追われた義経に従った弁慶らが、奥州へ落ちる途中にこの『安宅の関』を通ったわけです。なんといっても全国指名手配犯なので、関所も厳戒体制で待ち構えています。しかも関所の責任者である富樫はかなりのキレ者。そこへ山伏姿の弁慶一行が現れます。ぴ〜んち。 ところが弁慶は、寺の建立資金を集めに行脚しているといい張って、白紙の『勘進帳』を読み上げるわ、ふるまわれた酒を桶で飲み干すわ、荷物運びに変装した義経が疑われると、持っていた錫杖で義経をドカバキ殴るわで、さすがの富樫も義経主従と知りつつ、弁慶の剛胆さと機転に免じて見逃します。男だねぇ。 というわけで、小松の人達は弁慶が大好きとみえて、関所跡の弁慶、義経、富樫、の像は勿論、そこら中に 弁慶が座った石とか、 弁慶の読んだ『勘進帳の原文』(笑)とか、 弁慶が義経へ非礼を詫びた『弁慶謝罪の地』とか、 弁慶が乗った救急車とか、あるわけです。 そうそう、空港に向かう橋の上には弁慶とそれを見送る富樫の像があって、この二人は4月になると交通安全のタスキをかけてますな。 う〜ん。おちゃめさんっ!
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