僕は24歳で、昨日と1cmも変わらない席に座っていた。 僕が所属する巨大な会社は、僕の意思とは無関係に、 ただ前期よりも今期の数字を上げることに注力していた。
時は2002年8月のある日。何日だろうが何曜日だろうが、記憶に無い。 そりゃ毎日毎日同じ事を繰り返せば、誰だって何がなんだか解らなくなる。 ガムをずっと味の無くなるまで噛んでいたら、それが何が解らなくなるようなものだ。 なんでそうしていたのかすらも解らなくなるのだ。
「ふぅ」と僕はため息をついて、ノートパソコンを開き、メーラーを起動した。 メーラーは、狭いLANケーブルの中をくぐり、メールサーバー上に蓄積された 僕の新しいメールをどんどん運んで来た。 メーラーは何度も僕のパソコンとメールサーバーを往復していた。ご苦労なことだ。
僕のパソコンの画面はすぐに未読メールで真っ赤になった。 僕が本当に求めているものなどそこには1つとして無いのだが、 会社員にとっては知らなくてはならない最新情報は一杯あるのだ。
しかしながら、最新情報にはキリが無い。
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