いつもの日記

2002年08月27日(火) 24歳の春

僕は、4月からの全く変わりのない目の前の光景から目を伏せ目を閉じ、
学生時代の何も強制力を加えられなかった捕われの身では無い生活の事を考えた。

時計の長針が12を指して、周囲の人間がガザガザと、
パソコンもそれにあわせてカタカタと、コピーやFAXもガーガーと動き始めても、
僕はずっとあの頃のリングの中にいた。

僕はそのリングで勝利を確信し、静かに勝利のゴングを待っていた。
祝福の歓声を待ち焦がれていた。

下を向いて目を閉じている僕に心配したのだろうか、どうかしたのか、
と通路を挟んで右手側にこちら向きに座っている上司が言った。
すぐに顔を上げて、別に何でもないです、と僕は言った。

「そうか、それならいいが。ところで、昨日話した件をドキュメントにまとめておいてね」
「は、はい。やっておきます」と僕は言った。

今の生活では、あなたの言葉がゴングになってしまっていた。
そんな何も響かない、少しもときめかないゴングなんてとことんウンザリなのに。

「ゴングは選べない」

それが24歳の春に僕が学んだ事の1つだ。


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