小学校からの友達である彼の家は瓦と壁がはがされ、それは見るも無残な姿になっていた。
僕達が小学や中学時代に、 バスケットや庭球野球をして遊んだテニスコートが2面は入る広々とした庭には、 時間を止められたように自然の赴くままに草が乱雑に生い茂り、 バスケットゴールはその中に倒されうもれていた。
その庭の奥には、はがされた瓦が積まれてあり、 小型のショベルカーとその彼の家と土地を買った山添電気の白いバンが止まっていた。 僕は庭を歩きながらこの状態にかなりショックを受けたが、 彼がこの家の姿をみて受けた衝撃を思うと胸が痛くなった。
あの頃のように彼の家に遊びに行って、正面玄関を開けて、彼の名前を呼んでみようと思い、 片開きのおごそかな扉に手をかけて引いてみたが開かなかった。
このぐちゃぐちゃに取り壊されて秩序のない姿とはうらやはらに、 しっかりと頑丈にカギはかけられていて扉を開いて彼の名を呼ぶことはできなかった。
「あの頃とは全て変わってしまったのだよ」
とその固く閉まった扉は僕にささやいた。
すべては年をとり変わっていくのだ。 年をとらずに変わらないのは思い出だけだ。
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