私が散歩から帰ってくると、マンションのゴミ捨て場で中村おばちゃんがゴミを整理していた。
おばちゃんとは1度も話した事もないけど、僕は彼女のことを中村おばちゃんと呼んでいる。 名前をつけたほうが親近感が湧くし、他人に説明するのも楽だからそのほうが幾分よい。
私の住む茨木ではゴミを出す日は月・木である。
しかし、今日は水曜日であるのにゴミ捨て場にはゴミがいっぱい積んである。 納得できないから事情を聞くために意を決しておばちゃんに話し掛ける。できるだけ笑顔で。 私は笑顔は大の苦手だが、致し方あるまい。温故知新である。
「おはようございます。今日ゴミの日ですか?」
ごみの整理を中断し、こちらに振り向き中村おばちゃんは答える。
「はい。おはようね。今日は資源ゴミの日でね、カンやビンなどを収集する日なのよ」
朝の光を浴びた思いきりの笑顔は俺を少しドキリとさせる。 当然ながらトキメキのドキリではなく、すがすがしさのドキリではあるが。
「へぇ。そうなんですかぁ」 「うん。そうなのよ。第2第4水曜の朝10:00に収集車が来るのよ。 他には第1第3金曜日に粗大ゴミね。 でも金曜の粗大ゴミは夜に取りに来るから、出すのは土曜の朝でも大丈夫よ」 「はぁ、はい。わかりました。とりあえず今日の資源ゴミ取ってきますね」
僕は小学生ほどの子供達には意外に怖く見られるが、上の人にはいい青年に写るようで、 この日もこの特典が効を奏したのか、ゴミ整理の作業を中断させているにも関わらず、 中村おばちゃんは笑顔で結構親切にお話をしてくれた。
でもただ僕の住んでいるマンションが学生中心のために、 話し掛けてくれる住人が僕が1年半ぶりで、 中村おばちゃんにとっては意外な来客であり嬉しかっただけなのかもしれない。
こんなことは僕が考えても到底解る範疇ではないから、もうよしておこう。 それより一番問題なのは、粗大ゴミの収集車が金曜の夜に取りに来るのに、 「土曜の朝出せば大丈夫」って言った中村おばちゃんの真意である。
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