いつもの日記

2001年04月29日(日) 「おとう」

僕は父のことを「おとう」と呼ぶ。
もちろん母のことは「おかあ」である。
僕だけが言っていたわけではなく、僕の兄弟はみんな言っていた。
「おとう」「おかあ」と。

両親のことを普通の家庭ではこのような呼び方はしない。
だいたい「お父さん」「お母さん」である。

子供の頃は、それがたいそう嫌だった。
友達はみんな「お父さん」「お母さん」と言っているが、
僕だけ「おとう」「おかあ」と呼んでいたからだ。

それを僕はかっこ悪いと思って、
友達の前では「お父さん」「お母さん」と無理に呼んだこともあったが、
やはりシックリこなくて困った事を覚えている。

でも今では気にせず「おとう」「おかあ」と呼べる。
みんなと一緒じゃないと嫌だと言う子供の時の価値観から、抜け出ているからだろうが、
そんなことより、僕の父は「おとう」で、母は「おかあ」なのである。
必ず「お父さん」「お母さん」では無い。


日立の内定が決まり、「おとう」に電話をした。

「日立から内定もらった」
「おぉーそうか」
「でもリクルートが受かればリクルートに行きたいと思ってる」
「おい健一。リクルートなんて行ってどうしょうけな。日立いっとけ」
「でもリクルートって社風も雰囲気も自由だし、
 やりたい仕事もできると思うから、今一番行きたい。
 だから受かったらリクルートに行く。落ちたら日立」
「そうかぁ。。。まぁよう考えて、行きたいところ行け」

家では絶対の「おとう」が案外素直に聞いたことに少々驚いて、
「おとう」も「お父さん」並みの寛容さと余裕が出てきたのかな?と思いながら、
「じゃあな」と電話を切ろうとしたら、最後に「おとう」が言った。

「おい、健一」
「なに?」
「三菱重工はどうした?」
「どうしたって言われても、俺全然興味ないよ。推薦枠あるけど。。。」
「やっぱり、三菱重工やで、健一。みつじゅう行かんとあかんで」
「そうやな。はいはい。じゃーね」

やっぱり、「おとう」はいつまでも「おとう」だった。 


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