昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2007年05月08日(火) たぶんわたしは、立ったまま夢を見ている

水みたいに時間が流れていく。気づいたら連休も終わり、今日は一気に夏だった。紫外線が矢のように降る。日中干しっぱなしにしていた布団は、太陽のにおいがいっぱいでフカフカ!、なんて甘っちょろい感触を通り越して、今はただもう暑いだけだ。干さなければよかった。

泥沼の中をクロールで泳いでいたみたいな4月の終わりにちょっといいことがあって、結局のところわたしはそれだけを明日への糧として生きてるんだけれど、連休後半部分は平常心を装うのに疲れず過ごせた。
しかし目の前の景色が悪いことには変わりない。まず、ダンヒルのウインドウからジュード・ロウが消え、サッカー日本代表メンバーの愚鈍な顔が並んだポスターに張り替えられているのはどういうわけだ、わたしに断りもなしに。毎朝の愉しみを奪われた。それから、阪神タイガースが試合をするたびにおもしろいように負けるのが不思議だ。これはいつか遠い昔に見た光景だ。歴史は繰り返す。わたしは阪神に優勝してほしいと願ったことはないが、試合には勝ってほしいと思っている。少なくとも、「野球」をしてほしいを思っている。それができていないことが嘆かわしい。井川がタンパに送られた。これは当然至極で、仕方がない。

今日は、サンマルクカフェで「有機ブラック」というどこが有機なのかわからない珈琲を飲みつつ、J.M.クッツェー『マイケル・K』を読了した。アフリカが舞台だとは、地名が出てくるまでわからなかった。洞穴でマイケルが育てたカボチャを食べる場面には、強く感動した。人間の本質はつまるところ、この歓びを生涯にいくつ得られるかにあるんやで、と思った。

夜は、自分で淹れた珈琲とビスコを3つ食べながら、『戦後日本のジャズ文化』を図書館で借りて読んでから、最近はずっとジャズのアルバムばかり聴いているせいか気になって、菊池成孔がマイルスの解説をする番組を見た。映画『バード』の中に、マイルスが出てくるシーンってあったっけ、と思って、確かめようと『バード』のビデオを探したけどなくて、そのかわりにマイルスともチャーリー・パーカーとも全然関係のない『北の橋』のテープが出てきたのでそれを観て、ああこの女優さんも亡くなったのか、などと感慨にふけったりなどしているうち、また水みたいにタラリタラリと時間が流れた。

ビデオを飛ばし飛ばしに観た後、連休中に神戸で『サクリファイス』と『ユリシーズの瞳』を観た(どうです、この2本立て。心と頭にずっしり重いよ)ことに影響されて、バルカン半島の歴史を勉強しようと本棚の前に立ったんだけれど、ついつい先日読了した『百年の孤独』を手にとって、パラパラ読みかえす。10年ぶりくらいに読んだ『百年の孤独』は、やっぱりやっぱり素晴らしくて、驚きとため息の連続で、今回何と言っても自分の中で主役だったのは、ウルスラよりもピラル・テルネラだ。愛は孤独のうちにしかなく、永遠は一瞬の中にしかない。
『どの土地に住もうと、過去はすべてまやかしであること、記憶には帰路がないこと、春は呼び戻すすべのないこと、恋はいかに激しく強くとも、しょせんつかの間のものであることなどを、絶対に忘れないように』

毎週、新聞をチェックしないといけなくて、忙しい。たくさんの人に読まれますように。それが、わたしの願いだ。カボチャが実るのを、一日千秋の思いで待ったマイケルと同じく。
伝わってる?それは、どうやったら確かめられるのだろうか?


フクダ |MAIL

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