昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2005年11月16日(水) クロス・シャッセ

ジョン・カサヴェテスの映画『こわれゆく女』の好きなシーンに、ジーナ・ローランズが精神のバランスを崩していくのにともなって、どんどん家庭の雰囲気が悪くなっていくのをなんとか食い止めようとがんばるピーター・フォークが、子ども達を海岸に連れ出して、「さあ、楽しめ!ふつうにしろ!、ふつうに楽しめ!」と言って遊ばせる、というのがあって、最近それをよく思い出す。
夜が明けてカーテンをあける時などに、自分にそう言ってみる。さあふつうにしろ、ふつうに明るくしろ、ふつうに楽しめ、ふつうに、ふつうに。
そうしたら、ちゃんとふつうに、当たり前みたいに、何でもなく簡単に、振舞えるのだ。

夕刻、天牛堺に寄り道。今日の天牛の500円均一、すごかった。欲しい本がいっぱいあって、目移りした。ずいぶん我慢したけれど、たくさん買ってしまった。
石原吉郎『禮節』(サンリオ出版)。石原吉郎の詩が好きなので。
吉増剛造『王國』(河出書房新社)。吉増剛造の詩が好きなので。それに、時折挿しこまれている写真が、高梨豊だったので。
『原民喜のガリバー旅行記』(晶文社)。子供向けに書かれたもの。解説が長田弘で、絵が佐々木マキだったので。
小堀杏奴『日々の思ひ』(みすず書房)。昭和29年刊。本の佇まいがよかったのと、題名が好きなので。
金井美恵子『小説論 読まれなくなった小説のために』(岩波書店)。講演をまとめたもの。金井美恵子だったので。
長谷川集平『絵本宣言序走』(すばる書房)。何となく。

晩ごはんにカレーライスを作った。ジャガイモと人参をゴロゴロ入れたカレー。朝日放送ラジオを聞きつつ、玉ねぎを長いこと炒めた。
ナイターがなくなった今、関西ローカルのラジオに頼るよりほかに、心を和ませる方法がみつからない。

今日はビールも焼酎も、酒の類はなんにも飲まなかった。熱いほうじ茶と、珈琲をすすったのみ。

田辺聖子の『あかん男』を読んだ。おもしろい。まずタイトルがすばらしい。『あかん男』。
文字どおり「あかん」男の話。20回以上見合いをしても話がまとまらず、35歳なのにはげてきて、親戚中に馬鹿にされ、会社の女子社員に呼び出されて期待してでかけていったら金の相談で、あげくにすっぽかされ、ひとりトボトボ帰る。
『怒ることもできない自分を、あかん男やなあ、と思いました。』というのが最後の文章で、ここを読むと、ああわたしも「あかん女」やなあ、としみじみ思ってしまうのだ。


フクダ |MAIL

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