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壱カ月昨日明日


2005年11月10日(木) 真と偽の埒外で

最近のこと。

火曜日に、梅田で『アワーミュージック』を観た。
ゴダールの映画はどうもついていけないことが多いのであまり期待していなかったのであるが、たいへん面白かったのでほとんど意外であった。面白かったし、勉強になった。
書物と赤の映画だ、と思った。ゴダールは本と本を読む人を撮らせたら、実に上手い。
それから街の風景がよい。路面電車、露店の野菜、花、アスファルト、空と木。その間を行ったり来たりする人々。
「煉獄編」で、ゴイティソーロが画面に出てきた時はびっくりした。この人の『パレスチナ日記』を読んだばかりだったからだ。今度は『サラエヴォノート』をぜひ読んでみたい。
それから、映画中に出演する「ゴダール」がサラエヴォの学生の前で講義をするシーンで、ハワード・ホークスの『ヒズ・ガール・フライデー』のスチールを出してくるのだが、この映画も図書館でビデオを借りてみたばかりだった。こういう偶然は時々あって、驚かされる。どこかで何かがつながっているのだと思う。
『カラマーゾフ』からの引用があったことも嬉しかったし、加えて、パンフレットに収録されている野崎歓の文章もよかった。
全体的にとても満足した。機会があれば、再度ぜひ観てみたい。

タワーで、クシシュトフ・コメダによる『水の中のナイフ・袋小路』と『ローズマリーの赤ちゃん』のサントラを買ったり、旭屋でたった一冊残っていた『未来』をもらったりして、このあたりまでは気楽に過ごしていたが、吉朝さんが亡くなったことを知ったあとはすべてが飛んでしまった。

次から次へと、なぜこんなことになるのかほんとうにわからない。なんでなの?
残念だと片づけられないし、かといって気持ちを言語化することもできない。
「あの世」ってあるのかな。死んだらスイッチオフ、真っ暗闇がすとんと落ちて世界が終わるのだと思ってたし、いまもそう思ってる。
でも、「あの世」というものがあるならあったでそれもいいかな。ゆっくり休めるところだといいな、と少し思う。

今日は、旭屋で『みすず』の11月号を買った。「キアロスタミ讃」というのが読めるので。明日は、文芸文庫の小山清を買うだろう。

どんなことが起ころうとも、こうしてなんということもなく毎日が続いていくことが信じられない。


フクダ |MAIL

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