昨日・今日・明日
壱カ月昨日明日


2004年09月19日(日) 観念を追い越せ

 朝6時頃、送別会から朝帰りしたTがリビングでガサガサしたり、シャワーを浴びたりする音で目覚めて、布団に寝転がったまま少し新聞を読んだりしたが、すぐまた寝てしまった。次に起きたのは10時30分。雨になるかと思っていたのに案外いいお天気だったので、洗濯をする。
 Tがもらってきたいくつかの送別のプレゼントの中に本があったので、早速開けてもらう。中からは金子みすずの詩集がでてきた。金子みすずとは…。本と旭屋のプレゼント用包装紙を見つめたまま、お互いしばし沈黙。人に本をあげるって難しいなあ。

 朝食兼昼食用のパンを焼いていたらペリカン便がやってきて、アンゲロプロスのDVDが届いた。早くも3巻目だ。今回は「アレクサンダー大王」(2枚組)と「蜂の旅人」(マストロヤンニ主演)、それから「霧の中の風景」がパッケージされている。
 ごはんを食べた後「霧の中の風景」を早速再生してみた。12歳と5歳の幼い姉弟がドイツにいるという父親に会うためギリシャから列車に乗る。ふたりはお金もないし、ギリシャとドイツの間にどれほどの距離があるか知らないし、国境を越えて行かねばならぬこともそれがどんなことであるかも知らないし、それから「ドイツにいる父親」というのはふたりが私生児であることを隠すための母親の嘘であることも知らない。ただ一途に姉弟は列車に乗るのだ、父親を求めて。
 もうこの設定だけで充分だというのに、姉弟を乗せた列車が発車して駅を離れていくシーンでエレニ・カラインドルーの果てなく哀しい旋律が重なって、無賃乗車が発覚してふたりが警察に連れて行かれてそこから逃げ出すまでの世にも美しい雪のシーン、そのあと夜の街を彷徨う姉弟が出会う小さな結婚式と、ふたりの目の前で死んでいく馬のシーンまで、映画前半のこの一連の流れは、もう片時も平静な気持ちでなんかいられなくて、何か静かにこうべを垂れたくなるような畏敬の念をおぼえる。
 この後も、口をあんぐり開けて観るしかないようなシーンの連続で、それは何度観ても飽きるということがない鮮烈な体験なのだけれども、今日の上映はここまでにする。何故ならば、敬老会の記念品を配りに行かねばならぬので。

 一軒を除いてすべて在宅であった。もらうのが当然という感じの人あり、すごく感激される人あり、配るのが遅いやんか今年はもらえへんのかと思った私はもう人間扱いされてないんかと思たでー、と嫌味を言う人あり、まあいろいろだ。
 嫌味を言ったのは90歳のおばあちゃん。名簿を見たら大正3年の生まれだ。大正3年から今までのおばあちゃんの人生は一体どんなんだったんだろう、と考えてみる。どこでどうしてどうなって、90歳の今現在この大阪の片隅の小さい家にたった独りで住むようになったんだろう。それは私なんかには想像もつかない、膨大で重い時間の流れのように思えた。そしていろんな事を乗り越えて今、おばあちゃんが自分なりのルールで規則正しく静かに暮らしておられることは、本当に奇跡のようだと思った。

 夕方、買い物がてら散歩に出て本屋さんで「クウネル」立ち読み。ミルクと一緒に何を食べる?、というページを熱心に読む。
 晩ご飯を食べてから、またDVDを見たり、昼寝というか夕寝をしたり、のんびり過ごした。明日もお休みなので、今日も夜更かしして本でも読もうと思う。

・購入物:テオ・アンゲロプロスDVD-BOX・第3巻

・朝・昼食:トースト、目玉焼き、ポテトサラダ(昨日の残り)、珈琲、梨(二十世紀)
 夕食:チキンカレー、トマトサラダ、ひじきと大豆の煮物(昨日の残り)、麦酒、バナナのヨーグルト


フクダ |MAIL

My追加