セルフライナーノーツ。

2003年12月13日(土) 続うつくしいことば。(最終侍ネタバレ)


前日の、”うつくしいことば”、から転じてもう一つ。
仕事に全力投球していたら金曜の午前中に週のノルマ終えてしまったので、午後はお休みにして『ラスト・サムライ』観に行ってきました。
上映時間156分とこれまた(私の嫌いな(笑))長尺映画なので、仕事帰りにはちょっとキツいなー、と思っていたのです。年内は混みそうな予感だし…。
ちょうどシネコンのスタンプが貯まってて、1回は無料で観れるとこだったしね。つー訳で同じチームの子にも半休を取らせ(笑)同行。
封切り後1週間経っていないとあって、平日昼間でもそこそこの人手でした。題材のせいか、年輩のご夫婦がちらほらいたのにも驚き。
長尺を覚悟して開演直前にトイレに行ったにも関わらず、終演後にはまたトイレに直行したくなる、冬場にはなかなか困った上映時間ではありますが。(笑)実際にはそれほどの時間を感じさせない、インパクトとスピード感のある、美しい映画でした。
(何故か異常なくらいカラダに力を入れて観てしまった…(笑))
(以下ネタバレ感想)







メイキングや各インタビューでも大々的にアピールされていた通り、これまでの”海外から観た日本”のあの奇天烈さは殆ど観られない、限りなくジャポニズムをリスペクトして作られた作品だと思います。
もちろん、あちこちにボロはある(笑)。オールグレンがいきなり一人で着物を着こなせたり、ヒロインの”たか”が襖開けっ放しで着替えをしていたり(この家は終始あちこち襖が開きぱなしだった。襖を閉める仕草を、なかなか心のうちを見せない日本人そのものに例えたいのかも知れないが、あれじゃあ誘っているのかと思われてもしょうがない(笑)しかも、真冬の山の中…ありえないよ!(笑))、襦袢姿で外うろついたり(ボブも真っ青!Σ(゚д゚|||;))。廃刀令を下した政府側が、反体制の勝元に間者差し向けてたり。
でもまあ、そんなのはご愛敬だろう。史実に基づいた完璧な歴史映画なんて、多分今の日本でだって作れない。
これは、主人公が異文化と出逢い、そこで自分に欠けていたものを見つけ補う(そして尚かつ、それが出来ちゃう俺って心広くて純粋でしょ?的な(笑))、パターンとしてはそう珍しくないストーリー。
今まで私が観た中では、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』や『ウインドトーカーズ』(『ジェヴォーダンの獣』…アレは違うか。(笑))を思わせる話の運び。(後半、勝元の一団が上京してきた姿は、古きよき西部劇を思わせましたが)
部族の娘とのほのかな恋(しかしあくまでプラトニック)つーのも、いかにもメリケン好みだと思います(笑)どんなに心を通わせても骨を埋めるつもりはないところまで。(笑)(私は本作ラスト=幻想派だから(笑))
ネイティブ達が本当にああいう生活をしているのだと私達(観客)に思いこませれば映画としては成功な訳で、それさえクリアしていれば、多少のことは映画のウソとして許されるものでしょう。(当の日本人だって、歴史オタや軍事オタでもない限り細かいことはわかってないし(笑))
随所に出てくる寺院や仏像の映像が非常にスタイリッシュで美しいのも、やはり”あちらの目”を通しているからなんだろうな。仮に、今国内でcoolだと言われている映像作家(行定でも黒沢清でもSABUでも誰でもいいけど)に撮らせても、こうはいかないと思う。
大半が無神論者、法事の時以外仏様とは縁のない人間の多い現代でも。日本人である限り、寺社仏閣や仏像は歴史を示すものであり、生活に根付いた(いい意味でも)土臭いもの。だけど、あっちの人間からすれば単なるアートでありオリエンタリズムの権化だもんね。
多生のウソが混じってはいても、日本人には絶対に撮れないだろう”格好いい”日本を見せてくれたことは素直に嬉しいような気がします。



ただ、そこでどうしても気になったのは。
雇われてこの国に来た外国人の目を通した物語であっても、これは日本における、日本人の生き様を描いた話である筈で。
なにせテーマは”武士道”です。武士道ストラップもグッズ販売されるイキオイ(笑)。
なのに何故、重要なシーンの台詞が英語で語られるのだ?西洋かぶれしすぎて母国語忘れちゃった?(笑)(;・∀・)
最後の決戦の場で、政府側と勝元側とが袂を分かつシーン。側にいる勝元と大村には見向きもせず、雇われバグリー大佐とオールグレンが英語でやり取りして対戦開始。おいおい、日本人の立場は?!オーナーはどっちだよ!(笑)
そして何より重要な、勝元の最後の台詞。
”パーフェクト?”何処が?何が?
武士道精神を体現してきた男の、死に際の言葉が英語?……それって、2時間かけて描いてきたこの映画の趣旨そのものに矛盾してるんでないか?
オールグレンの介錯に向けての言葉だったから?一度目の”パーフェクト”はそうかも知れない、でも2度目は違うよなぁ…絶対。考えらんない。おかしいよ、可笑しすぎる。
辞世の言葉は、勝元には何よりうつくしい日本語で語って欲しかった。ラスト近く、オールグレンと語り合う天皇の会話も、日本語であって欲しかった。
残念だったのはその点だけかな。あとは、文句なく楽しめて涙腺も緩む感動大作でした。



俳優陣について。
さんざん露出しているトム・渡辺・真田・小雪の面々は予想に違わぬ演技で大満足でした。小雪嬢は大満足…でもないな、まぁ可ってとこかな(笑)あまり台詞がないので救われてるかも。
ビジュアルは楚々として凛々しくていいんだけど、いかんせん背が高すぎる…(汗)和服は長身の人が着ると間延びして格好悪いからね。あと、おチビさんトムとの対比も非常にゼツミョウなカメラワークで何とか切り抜けてるってカンジでしょうか(笑)
渡辺氏の表情豊かな眼の演技、真田氏の端正な佇まいと美しい所作。(この世代がいなくなったら、今後こういう時代作品を撮るのは国内でも不可能ではないだろうかと、一抹の不安を覚えます…)
中でもとりわけ”当たりだ!”と思ったのは天皇役の中村七之助氏。本作で映画デビューということで、実力のほどは未知数ですが、少なくともこの役にはハマりすぎるくらいハマってた!(>ω<)
若くして孤立無援の君主の座に置かれ、周りには魑魅魍魎が跋扈している。その中で唯一、信頼できる男勝元に助力を請おうとする。けれど。
あの時勝元が、彼を現人神扱いせず、たとえ一言でも何か背を押してやる言葉を投げかけていれば。おそらく、天皇は議会の場で勝元から眼を逸らしはしなかっただろう。遅すぎた決断を、もっと早くに口に出せる勇気を持てただろう。
僅かなシーンの間に揺れる感情を見せてくれた、本作では最も私の萌えゴコロを刺激してくれたキャラクターでした!
えぇと…カプで言うなら天皇→勝元ってことで。……あ、伏字した方がいいのか?(笑)
次の映画は来年かなぁ…当分観劇予定詰まってるし。
『昭和歌謡大全集』が激しく観たい!(>ω<)



そう言えば。これも観たいなと思っている『半落ち』のチラシを貰って来たのですが。裏面の解説文が激しく読みにくい!Σ(゚д゚|||;)
これ、句読点の位置が全部間違ってるんでうまく意味が取れなくなってんだよ……ライター誰だ?!理系じゃないのか?(笑)
小学校から出直してこいっ!(ノ`皿´)ノ:・'.::・┻┻








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