無責任賛歌
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2005年05月27日(金) |
虫歯が痛いよ/『探偵学園Q』20巻(天樹征丸・さとうふみや) |
この日記、わざと「だである」文と「ですます文」を混ぜて、記録的な意味合いとお客様への語り口調とをないまぜにして書いてるんですが、別に文体の統一ができないわけではありません(笑)。 日記なんだから、基本的には前者で書くのが普通だと思ってたんですが、ふと世間の日記さんを見渡してみると、語り口調の日記のほうが圧倒的に多い。そうか、みんなそんなに自分の日記を読んでもらいたいのか、とネットにおける「日記」が通常の「日記」とは意味合いが違うことを再確認いたしました(別に悪口じゃないからね)。 私なんぞは、語り口調を多用しちゃうと、文章がどうしても「落語風味」になっちゃって(「私なんぞ」と書き出しちゃうのが既にそうですね)、いや、お喋りそのものなら早口で一気に言っちゃうから、さほどモタモタした印象にはならなくてすむんですが、書いたものを読んでもらう場合にはただ文章が長くなるばかりですから、鬱陶しいだけだろうなあと、できるだけ避けるようにしてたんですね。それにどんなに「言文一致」を試みたところで、結局、自分のモノホンの喋りと文章とは一致しないんですよ。「語り口調風文章」になるばかりで、どこかね、目の前の相手に語りかけているように見えて、ホンの少し、視線が逸れているというか、宙を泳いでいるようなものになってしまう。「独り語りの傲慢さ」とでも言えばいいような雰囲気が漂ってしまうんですね。「落語口調」というのは実はそれを回避する有効な手段の一つなんですが、二葉亭四迷の『浮雲』なんかを読んでみると、円朝の速記本を参考にしたと言いながら、だからこその「混乱」があちこちに表れてしまっています。まんま落語口調で書いちゃえばいいところを、そこから離れて新たな「語り文体」を開発しようとしたところが急に堅っ苦しくなっちゃって、周囲の文章から浮いちゃって、その「傲慢さ」が目立っちゃってるんですね。エリート崩れはこれだから(笑)。 日頃の私は、他人の言によればかなりぶっきらぼうで無粋で、更にシニカルで余計なヒトコトが混じるんで、耳障りらしいです。亡母には大竹まことにそっくりと言われてましたが、これは喜んでいいのか悲しむべきなのか(苦笑)。自分じゃ全然似てないと思ってるんですがね。お前の書く文章っていやらしいんだよ、と感じていらっしゃる方も多いとは思いますが、ナマじゃない分、まだ「毒」は薄められてますんで、この程度でごカンベンいただければありがたい限りです。
でまあ、今日に限ってどうしていきなり語り口調に変えちゃったかと言いますと、冷静に書いちゃうとやたら悲惨な印象になっちゃいそうだったからでして(笑)。 夕べ、映画の帰りにコンビニに寄ったんですよ。私の場合、糖尿だし結石できやすい体質だし、一日の水分の消費量が結構嵩みますんで、しょっちゅうお茶だの水だの飲んでなきゃなんないんですね。で、帰ってきて早速、がぶっと水を飲んだと。 そしたらまあ、途端にとんでもない激痛が左顎に走りまして。いやもう、脳天をつんざくくらいのオソロシイ痛みで。要するにムシバの痛みなんですが、これまでもたまにズキッと来たことはあったんですが、それがどうやら神経の深いとこまで達しちゃったらしい。痛んでる箇所がちょうど歯と歯とのスキ間だもんで、どうにも処置の仕様がない。正露丸詰めようにもそこまで届かないわけです。 どうしたら痛みが治まるかというと、冷たい氷を口に含んで患部に当ててれば、一応は治まる。けれど、氷が溶ければ元の木阿弥です。仕方がないのでどうしたかって言うと、風呂に入って、口の中にシャワーで延々と水を流し続けた。いやホントに「一晩中」です。だって痛くって眠ろうと思っても眠れなかったんですから。その間、しげはずっと寝こいたままです。 朝になって、私が風呂で一晩過ごしたことに気づいたしげが、「そんなに痛いなら、オレを起こしてくれればよかったのに」と言いました。 「お前を起こしたら、どうにかなったのかよ?」と聞いたら、「そりゃ何もできないけどね」と言い返されました。だったら起こす意味なんてないってもんです。どうせ本当に起こしたら、「せっかく寝てたのに、どうして起こしたん!」って文句言うに決まってますから(涙)。 結局今日は、トテモ仕事に出られる状態ではなく、早朝に歯医者に出かけて行って、奥歯を抜いてもらいました。知り合いの歯医者さんで、正直な話、ちょっと藪なんですが、一番近場の病院だったので背に腹は変えられなくて。取ってもらった虫歯は記念にもらいました。こういうの、しげが見るのが好きなんですよ。棄てちゃうと文句言われちゃうんですね。実際に見せたら、「穴が空いてる1」と喜んでました。そりゃ虫歯ですから、穴が空いてるのは当然です。英語では虫歯のことをストレートに“Cavity(穴)”と言いますしね。こういうところもしげは感覚がヘンです。屋根に棄てたってまた生えてくるわけじゃなし、何で取って置かせたがるんですかねえ。
朝になってようやく眠ることができたので、夜まで爆睡しました。ですから今日書くことは本当はほとんどありません。日記の更新もとてもできる状態ではありませんでした。一度更新が滞ると、あとが続かなくなるのでそれは避けたかったのですが、いかんともしがたい運命に苛まれることはあるものです。 日頃ちゃんと歯は磨いてたのか? と言われそうですが、もともと乱杭歯なんで、どんなに丹念に磨いても、子供のころからしょっちゅう虫歯にはなってたんですよ。以前の治療からかなり時間が経ってたとこなんで、今回は結構、持った方です。
金曜エンタテインメント特別企画『空中ブランコ とんでも精神科医伊良部一郎登場』。 奥田英朗の直木賞受賞作のドラマ化、ということで、放送前から結構リキの入った宣伝がされたんじゃなかろうか。いつもより放送前の予告編CMも多かったような印象である。……でも実は私、この原作読んだことなかった、というか、存在自体知らなかった(苦笑)。 調べてみたら、この『空中ブランコ』って、サブタイトルにある通り、いい加減で自分勝手でドデブな精神科医が、なぜか患者を次々に治療できてしまうという「とんでも精神科医・伊良部一郎」シリーズの第二弾で、既に『ヤングチャンピオン』でコミック化はされているわ、一作目の『イン・ザ・プール』も『シティボーイズ・ライブ』や『トリビアの泉』の三木聡監督によって映画化されているわと大人気で、こりゃもう知らなかったこっちのほうがモノシラズなのであった。 主人公の伊良部一郎の外見的なイメージは原作とは全く違うようだが、主演の阿部寛、ヒゲヅラでなんとなく不潔っぽいメイク、長身なのを猫背になって胡散臭い雰囲気を出し、若干ひきつけたような低い声で笑い、たまに何かに取り憑かれたように目を剥いたりもする、これじゃ患者より本人の方が精神的にどこかおかしいんじゃないかと感じさせる演技は、『トリック』の上田次郎をほとんどそのまま踏襲している。だから新鮮味がないと言えばないのだが、阿部寛ファンにはこれで充分だろうと思われる。原作ファンが怒るかどうかは知らないが。 ストーリーは、原作の短編集からいくつかセレクトしたものを一本にまとめたもののようで、突然ジャンプが成功しなくなって“不眠”で悩む空中ブランコのフライヤー・山下公平(堺雅人)、尖端恐怖症のヤクザ・猪野誠司(遠藤憲一)、誇大妄想で自意識過剰なモデル・安川広美(佐藤仁美)の三人を伊良部が「同時治療」していく。まあ、そのまとめ方はまずくはないがうまくもないといったところ。脚本の橋本裕志はテレビアニメの脚本も多いが、原作付きアニメの「引き伸ばし」を長年やってると、こういう「可もなく不可もなく」な脚本しか書けなくなる。いや、そうなっちゃった時点でこれはやはり「不可」だろう。原作じゃ多分3人の間には何の関わりもなかったと思われるが、それを中途半端に絡ませているから、ドラマの焦点がぼやけてしまっているのだ。かといってこれを深く絡ませようと思ったら、オリジナルな展開をかなり増やさなきゃならなくなるから2時間ワクじゃまず収まらない。もともと2時間ドラマよりも連ドラ向きの企画なのである。 確かに「面白くなりそうな」要素は多々あって、カウンセリングでやってきたのに、伊良部の治療はいつもビタミン注射だけとか、患者の男の子のお母さん(未亡人)にアタックしたりとか、いったい治療のためなのか単に自分がやりたいだけなのか、「空中ブランコ」を特訓し始めたりとか(原作にもある設定だったら、デブなだけにすごい迫力だろうなあ)、これがミステリーならドーヴァー警部や吉田茂警部補、大貫警部も裸足で逃げ出すほどの傍若無人ぶりだ。けれどその個性が今一つ際立って感じられないのは、要するにドラマ作り自体が全体的に薄っぺらで絵空事めいてしまっているせいだと言えよう。こういうトンガッたキャラクターを魅力的に描くためには、たとえ周囲の人間が心を病んでいてもそれをリアルに描かなきゃならない。堺雅人はまだそうでもないが、遠藤憲一や佐藤仁美の演技はちょっと過剰で切実感がない。そもそも脚本や演出の段階で「ドラマにし損なっている」シーンが多々あって、例えば佐藤仁美が鏡を見て自分の美しさに見惚れるシーンなど、ここにキラリーン、なんてエフェクトをかけちゃうものだから台無しなんである。妄想を全て映像化すりゃいいってもんじゃない。こんな効果を入れられたら、佐藤仁美はただの馬鹿ってことになっちゃって、視聴者が同情できなくなるじゃないか。監督に「これは病気の人を扱っているのだ」という自覚がないせいでこんな事態が起きるのだ。監督の村上正典、映画の『電車男』も監督してるそうだけど、ちょっと見に行く不安材料が増えちゃったなあ。 「伊良部一郎シリーズ」が金曜エンタテインメント枠で今後も続くのなら、脚本や演出をもうちょっと考えてもらった方がいいと思うが、テレビの予算じゃそれは無理かな。意外によかったのは、看護師・マユミ役の釈由美子で、色気たっぷり子ちゃんなのだが、トンデモキャラクターばかりの中で、多分この子が状況を一番冷静に把握しているのである。なぜなら、周囲の右往左往をただ見ているだけで何もしない(笑)。まああれだね、『チキチキマシン猛レース』のケンケンの位置にいるキャラか。台詞もほとんどないのだが、ないからこそまたいいのだ。
マンガ、天樹征丸原作・さとうふみや漫画『探偵学園Q』20巻(講談社)。 どうやらそろそろ最終章が近い雰囲気なので(終わったら金田一少年を再開するつもりなんだろうな)、まああまり貶すようなことも控えようと思うが、今回収録の特別番外編『盟探偵ケルベロス編』にも類似の先行トリックを使った小説があることは指摘しとかなきゃならないし、ケルベロス自身が「稚拙なトリック」と言った通り、あんな方法じゃ証拠隠滅はできないよ。相変わらず最後のどんでん返しが「こんなことなら殺すんじゃなかった」って「犯人の勘違い」で終わるのも興醒め。 本編の方は団先生が倒れて、天草流が復讐鬼への道をたどるのかどうかというところでサスペンスを盛り上げようとしているけれども、少年マンガで一方のヒーローを本気で悪の道に走らせるわけにゃいかないわな。どこかで引き返すか、催眠効果で自分の犯罪に気が付かずにいたから無罪ってことになるか、実は初めから祖父のキング・ハデスに対抗するつもりでいて罪は犯さずにどんでん返しで終わるとか、天樹・佐藤コンビはもうこれまでありふれた展開しか描いてこなかったから、こんな陳腐な展開予想しか浮かばない。で、多分どれかで当たってるんだよ、きっと。 それはそれとして、“冥王星”キング・ハデスの本名が「国王星彦」ってネーミングセンス、何とかならんのか。
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