無責任賛歌
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2003年08月08日(金) |
新車の名前はまだない。/DVD『諫山節考』/『低俗霊DAYDREAM』5巻(奥瀬サキ・目黒三吉)ほか |
車がないので、朝まだ暗い時間帯に、しげはてくてく「チカンさんいらっしゃい」な小路を帰ってこなければならない。 一応、私はしげの夫であるから、まあほたらかしとくわけにもいくまいと、朝の3時過ぎにしげのバイト先まで迎えに行くことにしていた。 そこまではまあ、よかったのだが、帰り道、些細なことでまたしげとケンカになってしまった。きっかけは「しげが曲がり角を間違えた」(私は夜目が利かないので、しげを頼りにしていたのである)という単純なことだったのだが、しげが開きなおって「アンタがどのくらい目が見えんかなんてわかるわけないやん!」と言い放ったもんだから、私も「ふざけんな!」と激昂しちゃったのである。 最終的にしげが謝るまで、また半日かかってしまったが、しょっちゅう私に甘えてくるクセに、こちらの身の上を何も考えないというのは、本気で疲れるのである。 日記の更新なども頑張ってしようと思っていたのに、すっかりくじけて夕方まで寝る。ああ、せっかくの休みがこんなツマランことでムダに……(T∇T)。
で、私が寝ている間に、しげの新車が届いた模様。 さっきまで叱られてベソかいてたしげは打って変わって有頂天。喉元過ぎればなんとやらと言うが、こんなに簡単に過去のことを忘れられる才能が羨ましい。実際、人生に悩みなんてないんだよなあ、こいつ(しげにとっては「今晩の晩飯」以上に悩む材料はないのである)。
新しい車は、グレーだか銀色の軽である。 車に興味が全くないので、車種はよく知らんのだが、買った会社を聞いてみると、なんと親の知り合いのところであった。 それ先に聞いてたら、少しは安くしてもらえたかもなあ、と、一瞬思ったけれど、あまりそういう「特典」を頂くのも好きではない。真っ正直にローンを払うほうが気持ちいいからまあいいか。 私が寝てる間に、しげ、試運転をしてきたらしく、「広くなって、乗り心地いいよ!」と超ゴキゲン(×3)。 午前中叱り疲れて腹が相当に減っていたので、早速新車に乗って「しーじゃっく」まで。夏の企画のエビ天寿司など、安い寿司をたらふく。 そのあと、「ヤマダ電器」で、しげのポイントカードを使って(パソコン買った時に1万円以上溜まっていたのである)、DVD‐Rを買いこみ。さらに「ブックセンターほんだ」で、買い損ねてたマンガをしこたま買う。 水害からこっち、出歩く足がないと、ホントに買い物が減るのだということを実感した日々であった。
DVD『諫山節考』。 蛭子能収第1回監督作品。所詮イロもの監督の余技とか軽く考えてる人がいたら、ちょっとニイさん、そりゃあ心得違いってもんだよ。 文芸でも映像でも、何十年も作品を作って来た超ベテランより、ポット出の新人の作品のほうが遥かにみずみずしく面白い、という例はいくらでもあるのだ。「映画は私の30年来の夢だった」というのは、仮にも監督やろうって人間が口にしちゃあ、かえって陳腐でこっぱずかしくなるセリフだし、テレビのバラエティ番組に出ている時の蛭子さんしか知らなければ、これを聞いて笑う人もいるだろう。けれど、実際に作られた映画を見ていただきたいのだ。
田中良夫(ベンガル)はごく普通のサラリーマン、今日も便器のセールスに励んでいたが、飛びこみで入ったある会社で、“謎の言葉”を聞く。それどころか、その日を境に、彼の妻、保子(伊佐山ひろ子)も、部下の山本(神戸浩)も、“謎の言葉”を口にし始める。田中の回りで、何かが確実に歪み始めていた……。
短編映画は、その短さゆえにアイデア一発勝負の要素が強く、ともすればイメージ映像ばかりの不条理劇に逃げがちだ。石井聰五なんて、一時期そんな映画ばっか撮ってて、いささか閉口させられたものだった。凡庸な監督がたいてい勘違いをしていることは、不条理と言うのはただデタラメをやりゃいいってもんではなく、我々の世界とは別の論理によって成り立っている世界を構築しなければならない点に気づいてないことである。 この映画はまさしく田中良夫の聞く“謎の言葉”たった一つで、見事にその「異世界」を作り上げている。幻想小説ではよく使われる手ではあるが(SFファンならすぐに、「ああ、つまり『馬の首』モノだね」と気づくだろう)、『世にも奇妙な物語』のスタッフあたりなら、臭い演出でだいなしにしてしまうところ が、蛭子さんの演出は、田中の孤独を、たった一人だけこの宇宙に受け入れられなかった者として、切なく描いていく。メイキングで蛭子さんは「失敗した」を繰り返すが、この作劇技術は決して凡手ではない。自信を持って2作目、3作目を監督して構わないのではないか。
蛭子さんのマンガを読んだことがある人なら、それが実際の人間によって演じられていることに、妙な違和感、奇妙さを感じるのではないかと思う。 もともと蛭子さんのマンガのキャラクターは人間などではない。人間の情念が具現化された「もの」としか言いようがないものだ。それが肉体を持てば、これはもう「もののけ」になるしかない。ここに至って私はようやく蛭子さんが水木しげるの系譜に連なる人であることに気づいたのだ。……って当たり前だったんだよな、『ガロ』に描いてんだから。 蛭子さんの描いた絵コンテもDVDには収録。これだけでも一つの立派なマンガである。実際の映像と見比べてみるのも面白かろう。
マンガ、奥瀬サキ原作・目黒三吉漫画『低俗霊DAYDREAM』5巻(角川書店/角川コミックスエース・588円)。 壊れたマンガ家と言われて真っ先に思い浮かぶのは冨樫義博だったりするが(^o^)、奥瀬サキも一時期から微妙な壊れ方をしてきている。新人だったころ、御本人は自分のマンガを本気で「面白い」と、自信を持っていたようだ。そして驚くべきことには、それは生意気な新人の思い上がりなどではなく、本当に面白かったのである。 このマンガの前身で未完のままに終わっている『低俗霊狩り』は、不幸なことにマニアなマンガ雑誌『COMI−COMI』に連載されていた。奥瀬さんの面白さは、実は『ジャンプ』や『マガジン』でも通用するようなメジャーな面白さであったと私は思っている。「低俗霊」といういやらしげなものを扱いながら、エピソードごとのラストは、たいてい底抜けに明るかった。絵はいろんなとこからの寄せ集めで(当時は天野喜孝と少女マンガを合体させたような凄まじい絵であった)、お世辞にも上手いとは言えなかったが、このまま上達していけば、雑誌の看板を背負って立つくらいにはなれると思ってていたのだ。 しかし、現実はご覧の通りの寡作作家、『コックリさんが通る』は中断したままだし、この久しぶりの『低俗霊』シリーズは原作のみの担当である。 なんでこうなっちゃったかを分析していったらまたいつまで経っても書き終わらなくなっちゃうので(^_^;)、結論だけを乱暴にも断定しちゃうと、マニアなファンと、バカな編集者が付いたことが奥瀬さんを不幸な道に追い落としていったのだ。 パイパン深小姫女王様、今巻はもう大サービスである。巻頭はカラーで露店風呂に使ってギリギリまでの御開帳だし、まあやっぱりナニがあんな風に食い込むのはとてもいいものです(^o^)。でも、昔はあった「明るさ」は、どんなにギャグを飛ばしてももうないんですねえ。 オビにもあるけど、このマンガ、アニメ化決定ですって。エロアニメでもないのにモノホンの「女王様」がアニメに登場する時代になったのだねえ。これが奥瀬さんに活力を与えてくれるきっかけになればいいんだけど。
マンガ、魔夜峰央『パタリロ!』76巻(白泉社/花とゆめコミックス・410円)。 久しぶりに越後屋波多利郎が出てきたな。まあ、前に出て来た波多利郎と同一人物かどうかはわからんが。 76巻も続くと昔の設定なんて忘れてることも多いだろうしね。そう作者本人もどこかで書いてたよ。 遺影で登場のパタリロの父王、ヒギンズ三世、1巻登場時の崩御時の顔とは全然違うが、「年を取られてからはかなりガタガタに」の一言ですませている。きっとどんな顔だったか忘れた上に、1巻読み返すのが面倒臭かったに違いない(^o^)。 なつかしキャラでは間者猫も再登場。アニメ版では大竹宏さんが声アテてたな……ってニャロメじゃん。そういう遊びも楽しいアニメであった。正直な話、今度出るというDVD‐BOX、買おうかどうしようか、これまたむちゃくちゃ悩んでいるのである。
マンガ、安彦良和『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』5巻(角川書店/角川コミックスエース・588円)。 『ガンダムエース』を買ってる時に感想は書いてるから今更書くこたたいしてないんだが、纏めて読むとやはり「流れ」による高揚感が弥増すのが面白い。特に、最初単発で読んだときには本編に組み入れたら浮くんじゃないかと危惧していた「シャア復活編」、シャアの審問を経て、ズゴックの開発に至るエピソードが、そう違和感もなくハマッているのには驚いた。キシリアがここでジャブロー後略の計画を練っていることが、ちゃんと次の本章でマ・クベによって語られる、その繋ぎ方も上手い。 こういう興味深い新しいエピソードを見せられてしまうと、この部分だけでも新しくアニメ化してもらえんものかと思ってしまうファンも多いんじゃないか。特にガルシア・ロメオ少将のようなクセのある役に合う役者さんは誰だろう、なんて創造するのは楽しい。顔見るともうこれは大塚周夫以外にいないってイメージではあるんだけどね。
2002年08月08日(木) モラリストは読まないように(^_^;)/『軽井沢シンドロームSPROUT』1巻(たがみよしひさ)ほか 2001年08月08日(水) 代打日記 2000年08月08日(火) ボケ老人の夕べ/『カランコロン漂流記』(水木しげる)ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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