無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年07月13日(日) 虚構に生きる人々/DVD『プリンセスチュチュ 雛の章』/『Go West!』1巻(矢上裕)ほか

 また訃報。
 俳優・小松方正さんが11日に、糖尿病による敗血症のため死去。享年76。
 同じ糖尿だし、なんだか身につまされてしまうのだが、つい、76まで生きられたら充分かも、なんて不謹慎なことも思ってしまう。でも四十そこそこで足切ったりしてる人も見てるしなあ。最近は私も長いことキーボード打ったりしてると指先が痺れたりするようになったんだけど、どこまで持つかな。
 晩年の小松さんの、闘病中であることが明らかなやつれ具合を見ていると(ベッドで管だらけになっている様子が写真週刊誌に載っていたこともあった)、壮年期はあんなにアブラギッシュだった人もこうなってしまうのかと、そぞろ物悲しい気分にさせられたものだった。
 往年のテレビ番組、『キイ・ハンター』とか『アイフル大作戦』『バーディ大作戦』とかのアクションものにゲストで出るときには、たいてい野際陽子や大川栄子に絡んでくるスケベ親父とか、怪しい外国人の役とかを演じてて、私の心の中ではすっかり「スケベな悪役=小松方正」という図式ができあがっていたのだった。も一つ、映画『ハレンチ学園』で荒木又五郎(丸ゴシ先生)を演じてたこともその印象を強めてる原因かもしれない。
 もっとも小松さんの代表作を『ハレンチ学園』にしちゃ申し訳ないのだけれども。


 長崎の駿ちゃん誘拐殺人事件の関連記事。
 福島市立福島第三中学で、社会科の30代の男性教諭が、犯人の少年と称してインターネット上に掲載された顔写真を印刷して、公民の授業中に生徒に回覧していた。
 その教師の釈明というのが、「新聞は少年を匿名としているのに、ネット上では人権侵害が日常的に行われていることを知らせようとした」ってなもんである。
 これを聞いて多分、誰もがどうにも理解に苦しんだろうと思うのだが、「人権侵害の証拠をそのまま回覧したらそれも人権侵害になるじゃん」ということ。ご当人も、「軽率な行動で自ら人権侵害に当たるようなことをしてしまった」と反省しているとか。
 あまりにアホなんで、もしかしたらこの人、本当は「加害者の人権なんか守ってやる必要があるか。みんな犯人がどんなやつなのか知りたがってるんだから、俺が教えてやる」とかなんとか考えて回覧したところ、意外に強く突っ込まれちゃって、慌てて「人権侵害の一例で」と言って誤魔化したんではないか、と穿った見方もしたくなる。

 私自身は、犯人の写真や名前を公表しても無意味だ、と考える立場の人間なのだが、「犯人晒せ」と主張する人々の心情を興味本意だとかヒステリーだとか言って排撃するつもりもない。加害者の顔など知りたくもない、と仰る方は、日頃よっぽど人を信用して生きているのであろう。世間の大多数の人々はそこまでノーテンキではない。
 「12歳の少年」とだけ聞けば、どうしても一般化された「かわいらしい中学生」のイメージが先行してしまう。実像はどうなのか、自らのイメージとの差異を確認し、修正を試みたいと思う心情は、当然起きてしかるべきなのだ。「生きる」という行為の途上では、自らの拠って立つところを常に確認しておかなければ、次々に襲いかかって来る不安に押しつぶされてしまいかねない。ただ「12歳の少年」というだけなら、我々の日常に掃いて捨てるほど見かける存在ではないか? 隣にいるその子が急に犯罪者に変貌するのなら、日々の生活に恐怖を住まわせてなお恬淡として構える覚悟を強いられているに等しい。それに耐えられる人間ばかりで世の中ができあがっているわけではないのだ。
 犯人はどんなやつなのか、本当に12歳なのか、12歳と言ってもよっぽど特殊なところがあったのではないか、肉体的にも精神的にも何かケツラクしたところがあったのではないか、親の育て方が悪かったのではないか、少なくとも私のこの子はあの12歳少年とは別の安全な存在である、などなど、犯人を差別化することでなんとか自己の安定を図ろうとするのも無理からぬところなのである。ちょうどM君事件が起きたときに、大多数のオタクが「Mはオタクではない」と自らとの間に境界線を引いたように。
 けれど、それは結局は欺瞞なのである。子供は天使ではない。私が「顔を公表しても無意味」というのはその点にあるので、どんなに当該少年と、「私の子」との差異を比較したところで、その子が加害者になることはない、という証拠にはならないのである。危険を含まぬ子供などいない。
 「子供を作ること自体が恐怖」。
 それは昔から変わらぬ現実だったと思うのだが。「物語」の中に生きてるのは今のオトナたちのほうだよねえ。


 アニメ『金色のガッシュベル!!』第14話「おてんばティオとアイドル恵」。
 話はもうアレなんだけど、声優さん誰かなと思って見てみたら、恵の声、前田愛でやんの。急に声優づいてきたなあ。まだまだ「前田愛だ」と言われなければそうと気がつかないくらい目立たないのだけれど、成長期なせいか、ちょっと太ってきているから、顔出しをしばらく避けるというのも手かもしれない。

 アニメ『鉄腕アトム』第14話『ミクロの大冒険』。
 フーラー博士の登場、ミニアトムの活躍、という点は原作「コウモリ伯爵(原題/ミイラ伯爵)」からの拝借だが、ストーリー自体は全くの別モノ。吸血鬼ペダン博士は登場しないし、フーラー博士は「ミニミニ博士」と名前を変更されている。“Fooler”じゃ、グローバルスタンダードにそぐわなかったんですかね。
 ウランの体内に入るという話は、非アトム作品の『吸血魔団』を原作としている。手塚ファンならよく知ってる事実であるが、この原作は旧モノクロシリーズの『鉄腕アトム』で『細菌部隊』としてアレンジされ、アメリカでも放映された。これをパクッて映画にしたのが『ミクロの決死圏』。だから今回のアニメ化は「原作を取り返した」格好になる。
 もしもアメリカの半可通なSFファンがこの回を見て「『ミクロの決死圏』のパクリだ!」とか言い出したら、「どっちが」と言い返せて面白いのだが。 


 そろそろ買ったまま見てないDVDを見ねばなるまいと、『プリンセスチュチュ 雛の章』を最終回まで一気に見る。半日がかりだ。
 おおお、あれがああしてこうなったか。
 ついに復活する大鴉。
 心のカケラを取り戻したと思われていた王子・みゅうとだったが、そのカケラはクレールの手によって、大鴉の血に浸されていた。
 大鴉の化身と化していくみゅうと。ドロッセルマイヤーの書いた「物語」のために、決して王子を守ることができない騎士と、決してその恋が報われることのないプリンセスの運命を与えられているふぁきあとあひる。
 運命を変える手段を懸命に模索する二人の前に現れた少年、あおとあは意外な秘密をふぁきあに告げ、運命の歯車を変えさせまいと、かつてドロッセルマイヤーの腕を切り落とした「図書の者たち」が暗躍し始める。
 そして自らの出自を知らされたるうは、「プリンセス」になることができないおのが運命に絶望する。
 第一部『卵の章』にも増してシリアスなストーリー展開なのだけれど、決して印象は暗くない。それはもう、愛の求道者・猫先生の捨て身のギャグ(^o^)によるところも大きいけれど、近頃のアニメには珍しく「運命に立ち向かう」キャラクターたちを本気で描いてるからだろう。
 そして全編を彩るクラシック曲の数々。『展覧会の絵』『真夏の夜の夢』『動物の謝肉祭』などなど……。もちろん、最終回、ラストを飾る曲は『白鳥の湖』。「感動」というのはこういう作品に与えてこそふさわしい評価だ。
 果たしてあひるは王子を救うことができるのか? 見るのを楽しみにしてる友人がいるので、ラストは書かないけど、最近の宮崎駿アニメよりよっぽど泣ける(つか、宮崎アニメで泣いたことはないんだが)。もう滂沱よ(ToT)。
 これはこの話で終わるとしても、ドロッセルマイヤー・シリーズとして続けることは可能だな。何年か後に「またそれは別のお話」として続けてくれると嬉しいんだけど。


 マンガ、矢上裕『Go West!』1巻(メディアワークス/電撃コミックス・578円)。
 「オタクならこういうのは当然読んでるでしょう」と言われることも多いのだが、すみません、私まだ『エルフを狩るモノたち』、読んだことないんです。アニメはチラッと見たことあるんだけど。だから全てのアニメ、特撮、ドラマ、映画、小説、マンガを読むことなんて不可能だってば。
 でも、以前から矢上さんに興味はあったので、「1巻」ということもあって購入。こういう衝動買いに近いものは当たり外れが大きいのだが、その結果はと言うと……いやあ、久々の大ヒット。
 ここは西部、と言っても、現実の開拓時代とはちょっと違った、パラレルワールド風の世界。
 行方不明の両親を求めて、裸一貫、新大陸へと渡った18歳の元気少女・ナオミ。まずは西へ進むために必要な道具や、「馬」を探し始める。彼女が偶然出会ったのがガメラ(出るんだよ、なぜか)……じゃなくて、西に向かって一直線にしか進まない暴れ馬・レッド・バレット。誰も乗せないはずのレッドはなぜかナオミを気に入ってしまい、むりやり背中に乗せて一路西を目指す。
 しかしまだまだナオミには足りないものがある。それは身を守ってくれる用心棒。荒くれだらけの西部では、いかにナオミに度胸があっても一人ではとても生きていけない。一直線に突っ走るレッドが辿り付いた街には、二人の男がいた。怪しいアフロヘヤーのお尋ね者の黒人と、彼を狙う賞金稼ぎの白人ガンマン。ところが二人はナオミを見た途端に涙を流して叫んだ……。
 ……と、ここから先はぜひマンガを読んで確かめてもらいたいので隠しておこう。いやあ、この手のムリヤリギャグは私は大好きだ。絵も上手いけど、コマワリが抜群で、ギャグの「間」を作っているのだね。これはもうオススメの一冊なんである。

2002年07月13日(土) 病院への長い道/『エンジェル・ハート』4巻(北条司)ほか
2001年07月13日(金) ふ、ふ、ふ、ふ○こせんせぇぇぇぇぇ!/『悪魔が来りて笛を吹く』(横溝正史・野上龍雄・影丸穣也)ほか



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