無責任賛歌
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2001年07月13日(金) |
ふ、ふ、ふ、ふ○こせんせぇぇぇぇぇ!/『悪魔が来りて笛を吹く』(横溝正史・野上龍雄・影丸穣也)ほか |
なんだかなあ、最近はしげと休みの時間が合わないので、映画に全然行けなくなってしまった。 今日も仕事から帰って、明日から連休でもあるし(久々に休日出勤ナシ!)、三谷幸喜の『みんなのいえ』が今日までなので、しげを誘おうかと思ったのだけれど、やっぱり仕事。 まあ、アレはDVDが出た時買えばいいや、と思い、とりあえずしげが仕事に行くまで三時間ほど間があるので、「焼肉でも食うか?」と聞くと、即座に「食う!」 ……相変わらずすぐに「エサ」に釣られる。進歩のないやつだ。
麦野の「ウエスト」に行くのも久しぶり。金曜の夜はビールがジョッキで100円ということもあって、混雑が予想されたのだけれど、早い時間に辿りついたので、五分と待たずにすんだ。 しげは赤味の肉だけ食べておけば満足なので、カルビとロースの2人前を頼む。三瀬鶏とホルモンとミノの塩焼きの盛り合わせが安売りだったので、私はそちらを頼む。こっちの方は鶏以外、しげは全く食べない。偏りがあるよなあ。 しげはしょっちゅう、「赤味も食べてる?」と聞いてくるが、実は全く食べてない。焼けるたびに自分がどんどん2人前の焼肉を平らげているくせに、私にどうしてロースを食べるヒマがあろうか(いやない)。 「もうこれ以上食べきれない」と言って、しげは四、五枚、赤身肉を残してくれたが、それだけ食えば満腹にもなるってばよ(^_^;)。 店を出る時には既に玄関先は待ちの客が二、三十人の長蛇の列。タイミング的にはまあよかったというとこかな。 このあと、しげは帰宅して体重計に乗り、「ひいいいい」と悲鳴をあげることになるのだが、そのことは余りにかわいそうだから秘密にしておいてやろう。
焼肉屋の帰りに「ブックセンターホンダ」に寄って、新刊の文庫やマンガを何冊か買う。しげは仕事があるので一足先に帰宅。まあ、本屋に寄ると私は何時間タムロしてるか分らないので、これは仕方がないか。
マンガ、横溝正史原作、影丸穣也(影丸譲也)作画『悪魔が来りて笛を吹く』読む。 影丸穣也が、横溝正史ブームが起こる昭和50年代以前の昭和43年に、『少年マガジン』に『八つ墓村』を連載していたことは有名だが、同じ影丸作画でありながら続編と言うわけではない。 これは昭和54年、斎藤光正監督、西田敏行主演の映画版をコミック化したものなのである。連載は東京スポーツ(福岡だと多分西日本スポーツが系列かな)だったそうで、当時は存在自体知らなかった。従って私が読むのは今回が初見。 そういう経緯で、名探偵金田一耕助の顔が、『八つ墓村』の時の三船敏郎顔ではなく、西田敏行の模写になっている。正直な話、これは、やめてほしかった(^_^;)。 多分、影丸さん、シナリオを渡されただけで、西田敏行以外のキャスティングも知らないまま、ともかくシナリオに忠実に、ということだけを念頭にマンガ化したのではなかろうか。 なぜなら、トリックや犯人が原作と一部違っているのである。 というか、実は原作には作者自身がトリックのミスに気がつき、後で書きなおそうと思いながらどうにも修正できずにほったらかしてしまったものがあって、しかもそれは絶対に映像化が不可能なものなのである(この件については、角川文庫版での解説が詳しい)。 映画は結局、その失敗したトリックを無視して、新たな脚色を加えることで映画としての深みを増すことに成功しているが、マンガはその設定をセリフまで含めてそのまま踏襲している。 だとすれば、脚本を担当した野上龍雄の名前を載せていないのはどう考えても おかしい。実質的な原作者は、この野上氏であるからだ。 解説の有栖川有栖、そういった経緯に一切触れず、「原作に忠実」などと嘘八百を並べ立てている。原作が長過ぎるために、後半、内容をはしょってバタバタと終わらせた前作の『八つ墓村』(何しろ辰也と典子の恋が伏線まで張っときながら描かれない)をも「傑作」と持ち上げるくらいだから、この作家の批評眼や実作の腕も底が知れるというものだ。
金田一耕助のマンガ化は数多いが、原作のムードをマンガに写し出すのはそう簡単なことではない。様式的なマンガは、ともすれば金田一を美形に描いたり、勝手に人情味や哀愁を付け加えたりと、書き手のイメージが表に出過ぎる嫌いがあるからである。 さりげない演技を表現できるマンガ家さんというのは案外少ない。個人的には浦沢直樹や福山庸治が金田一モノをマンガ化してくれたら面白いんじゃないかと思ってるんだがどうだろうか。
マンガ、横山光輝『鬼火』。 短編集だが、初期作品で、アイデア的にも単純な『ひも』『風夜叉』や、原作を特定できないけれど、確か誰かの小説で同じネタを読んだことのある『鬼火』(どうも『阿Q正伝』っぽいなあ。と言うか横山作品はパクリが多過ぎるのだけれど)を除くと、『闇の土鬼』の原型となった『暗殺道場』が一番面白い。 と言っても、これも実は元ネタは都筑道夫の『なめくじに聞いてみろ』。一瞬そうと気づきにくいのは現代小説を時代モノに翻案してるからだね。 でも、暗殺術をし込まれた弟子たちを、師匠の遺言で最後の跡継ぎが次々と殺して行く、という筋立ては全く同じ。つまり横山光輝のマンガ『闇の土鬼』と、岡本喜八の映画『殺人狂時代』とは、同じ原作から派生した双子なのであります(^o^)。
思うんだけれど、横山光輝研究家、一度徹底的に横山光輝の元ネタ探しをやってみたらどうか。つい口が悪く「パクリ」と言ってしまったが、横山さんの「換骨奪胎」ぶりは、決して「盗作」などと簡単に言えるものではないのだ。 実際、『暗殺道場』『闇の土鬼』にしてみても、都筑道夫がもともと「忍者小説」のファンであって、現代を舞台にした忍者小説としてのスパイ小説『三重露出』や『なめくじ』を書いていることを考えてみると、横山さんの忍者モノとしての翻案は、パロディを元の鞘に収めたものと解釈することもできるからである。 まあ、『七人の侍』が『荒野の七人』になるようなものかな。 『アトランティス』が『ふしぎの海のナディア』の、とか、『ライオンキング』が『ジャングル大帝』の、とか、ヘタなパクリはすぐにバレてしまうけれど、横山作品は結構そこのところがウマイと思うのだ。 『鉄人28号』の元ネタが『フランケンシュタイン』だなんて、本人が言わなきゃ気がつかないよ(^_^;)。
マンガ、いしいひさいち『ののちゃん』10巻。 何巻か買い忘れてるような気もするが『ののちゃん』もついに10巻。 でもタイトルを『となりのやまだ君』から『ののちゃん』に変えたからって、ののちゃん本人の出番はそう増えてないところがいしいひさいちのヒネクレてるとこ。さすが大坂人(^^)。 今回これはぜひとも取り上げねばならないのは(って、ご大層な)、例のナベツネ騒動の顛末がカットされもせずに収録されている点だ。 一目瞭然で暗黙の了解になってるから、誰も書いてないが、連載タイトルの変更は、以前、朝日新聞社から直接単行本を出していた時には、出版社の意向というか自主規制で、未収録作品がボロボロ出ていたせいだ。 その点、双葉社から単行本を出す以上、アサヒの意向もヨミウリの意向も関係ない。 あの「ワンマンマンは誰かのパロディなの?」「そうだ。きっとキミも誰かのパロディだ。その誰かも誰かのパロディかもしれん。でも、そう考えりゃどいつもこいつもたいしたことないから気楽だろ?」 という、いしいさんにしてはいささか野暮ったい(しかし仕方のない)解説もしっかりカットされずに掲載されている。 からかわれたり馬鹿にされたりってのは、ある意味それだけ個性的だってことだ。直接的に被害を被ったわけでもないのにオタオタするなんて大会社の会長ともあろうものがケツの穴が小さいことだと思ってたが、これはある意味ナベツネに対するいしいさんの決別宣言だろう。 今、新聞連載にワンマンマンがまだ登場しているのかどうか知らないが、いたとしても多分、以前ほどの毒はなくなっているのではないか。でもそれは、いしいさんがナベツネに遠慮しているからではなくて、芸ナシオヤジを話題にしてやる親切心がいしいさんの心の中から薄らいだせいじゃないかと思うのである。 でも、この私の想像と全く逆に、更にワンマンマンが活躍してたら、いしいさんはスゴイと思う。何しろ今や存在自体影が薄くなっているタブチやヒロオカやヤスダを、未だにキャラクターとして使い続けているのだよ。一端愛したキャラはとことんまで愛し続ける人なのだ、いしいさんという人は。 ナベツネ、少しは頭を冷やして人のココロってものを知れよな、バカヤローが。
さて、今号の『ニュータイプ』と『アニメージュ』。 ガキ向けのアニメ誌をなぜいつまでも買うんだと白い目で見られることもあるけれど、確かにねえ、「アニメージュグランプリ」なんて、お子様の組織票で受賞する年も多かったりで興醒めだけど、個々の記事には、どうしてどうして、見逃せないものも多いのですよ。
『ニュータイプ』連載の鈴木伸一さん(『オバQ』の小池さんだぁ〜!)の『アニメ街・ラーメン横丁』、今回は「トキワ荘を育てた編集者」ということで、手塚治虫文化賞を受賞した丸山昭さんを取り上げている。 いわゆる「手塚番」のお一人で、石森章太郎、赤塚不二夫ほか諸氏を育てた名編集者なのだが、浅学にして私は丸山さんのお名前を存じ上げなかった。 『トキワ荘実録』というご著書もあるということであるのに、マンガファンとしては情けない話だ。こういうウラカタの人にまでスポットを当てよう、と言う気持ちが、この2誌にはあるのである。
『アニメージュ』の方も、今回は多分マニアも余り知らないのではないかと思われる、あの『名探偵ホームズ』についての大暴露。 当時脚本を担当していた片淵須直氏、「いや、実は、宮崎駿さんのフィルムにならなかった絵コンテがあるんですよ」……え!? それも『バスカーヴィルの魔犬』と『白銀号事件』! ……学生時代、ホームズを犬でやると聞いて、「じゃあ『バスカーヴィル』はどうするんだよ! モノホンの犬が出るやんか!」と突っ込んでたものだったけど、それに宮崎さんが挑戦していた! そうか、この2作がアニメ化されなかったのは宮崎コンテが存在していたからだったのか! み、見たいぞ! フィルムになってなくてもいい、絵コンテのままでいいよ、公開してくれ、出版してくれ!
……私が未だにこの2誌を買い続けている理由が少しはお分りいただけただろうか?
しげが帰るまで仮眠。と言っても四、五時間は寝るけど。 細かいシチュエーションは忘れちゃったけどさ、それでもここ数年で一番印象深い夢見ちゃったよ。 あああ、あの、あの、藤子・F・不二雄先生に会ってしまったのよ! 有名人に夢の中で出会うことなんて、今まで一度もなかったのに。 ニコヤカに微笑む藤子先生を見るなり、私は思わず聞いていました。 「せ、せんせい! 『チンプイ』の、『チンプイ』の最終回はどうなったんですか!」 先生、ちょっと困ったように苦笑なされて、 「それがねえ、実はなにも考えてなかったんだよ」 ……あの先生、本物かも知れない(^_^;)。
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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