無責任賛歌
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2002年12月28日(土) |
カラオケホテルの夜/『ショック・サイエンスR』1・2巻(あすかあきお) |
アメリカン・ニューシネマの傑作とされる『明日に向って撃て!』の映画監督ジョージ・ロイ・ヒルが昨27日、パーキンソン病の合併症のため死去。享年80。 「アメリカン・ニューシネマ」とひとくくりにされちゃいるが、旧来の脳天気エンタテインメントに完全に背を向けていたスタンリー・キューブリックやアーサー・ペン、マイク・ニコルズ、デニス・ホッパー、ピーター・フォンダ、マーティン・スコセッシと言ったニューシネマの旗手たちと違って、ジョージ・ロイ・ヒルは「ニューシネマの皮をかぶった普通のエンタテインメント」を作ろうとしてたんじゃないか、という気がしてならない。 ご承知のとおり、ブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)は映画のラスト、銃撃戦を直前にストップモーションとなり、生死はわからず、というエンディングを迎えるのだが、もちろん「実在」のこの二人は壮烈な死を遂げるのである。 似たようなタイトルだが内容の全く異なるアーサー・ペン監督作『俺たちに明日はない』では、ボニー&クライドの死をこれでもかというほどに描写した手法に比べれば、『明日に向って撃て!』のラストはいかにも「甘い」。リアルになる寸前でファンタジーで終わらせていると言ってもいい。しかしだからこそ、このエンディングは無数の「模倣」を生んだ。最近では映画版『仮面ライダー龍輝ファイナル』までなんの工夫もなくこのエンディングをマネしていたので、いやはや、オリジナルの罪の深いことであるよ、と嘆息したものである。 バート・バカラック作曲の主題歌「雨にぬれても」の軽妙な曲調を考え合わせてみても、『明日に向かって撃て』の描こうとした世界が当時の「ニューシネマ」が指向していたリアル路線の系列に入れてよいものか、という疑念を私は昔からぬぐい切れていない。もちろんいささか幼稚な「反権力」の姿勢、という点での共通はあるのだが。 それでもヒル監督の「反権力」思想は、作品中で声高に叫び演説するようなウルサイものでもなく、怠惰な犯罪者を主役にするような重さやねちっこさもない。『明日に……』の姉妹編とも言える『スティング』がもう全く純粋なコン・ゲーム・エンタテインメントとして成立していることを考えてみてもそれはわかる。 そうたくさんの作品を残してはいないが、ヒル監督に駄作はなかった。 「安心して」見ることのできる監督であるという点では結構稀有名人であったのではなかったかと思う。
午前中だけ仕事。 昼過ぎに帰って、チョイと昼寝。
最近、しげがクサイ。 いや、比喩とかそんなんではなく本当に臭いのである。 いったいどれくらい風呂に入ってないものか、近寄るとツンと饐えた匂いが鼻腔を刺激するのだ。 私も妻の悪口は散々書いてきているが、そこまで真実を書いてしまうのは、あまりにヒドイのではないか、いくら夫婦だからってプライバシーというものがあろう、と不快に思われるかもしれないが、そのしげ本人が、自分の腕をコスって、「ほーら、こんなに垢が♪」と私の顔面に突きつけようとするのだ。 夫婦だからって、やっていいことと悪いことがあるやろ。てゆーかよ、普通の夫婦は自分の垢を相方にこすり付けたりゃぁせんわい。
いや、垢の話は前フリである。 どんなに汚い場所でも食料さえあれば棲息していけるオモライ君なみの生命力を持つしげですら、さすがにカラダがちょっと痒くなってきたらしい(ちょっと程度かよ)。 いきなり「フロに行きたい!」と言い出したのである。 「フロって、……入りゃいいじゃん」 「狭い風呂はイヤと! 広くてのびのび〜ってできるとこがいいと!」 「なら、温泉センターにでも行くか?」 「一緒に入れんやん!」 「誰と?」 「あんたと!」 「なんでおまえと一緒に入らなきゃなんないんだよ!」 「背中コスってもらえんやん!」 「背中くらい自分でコスレや!」 「自分だと手がとどかんとよ!」 それは太りすぎてるせいである。 「じゃあ何か? 混浴の温泉にでも行きたいのか? そんなんこの近くにはなかろ?」 「あると! いいとこ見付けたから今から行こ!」 「今から!?」 ほとんど強引である。まあゆったりできるのは私も賛成なので、しげに連れられて一晩お風呂屋さんにお泊まりに行くことにする。
とは言え、どこに行くのか全く知らされていない。どうやらしげはこの日のためにネットでいい泊まり場を探していたようで、車は迷わずスルリと表通りに出ると、南下をし始めた。方向としては、市外か山に向かう格好になる。
ひと晩泊まりで温泉、ということになると、どうしても読む本が必要になる。 ところがこの道すがらはどういうわけか、新刊書店がほとんどないのである。一軒でもあれば決行ペイするんじゃないかと思うけれどそうでもないのかなあ。 しかたなく、「BOOK OFF」に寄って、古本を物色。 目当ては『大使閣下の料理人』だったのだが、結構フロアの広い店なのにバラで6巻・7巻があるだけで揃いがない。こちらは諦めて、珍しい本はないかと思って探してみると、あすかあきおの『ショック・サイエンスR(リターン)』1・2巻(アスペクトコミックス)が(^o^)。 いやまあ、とりあえず読みました。読みましたけど、これについては感想書く元気はないので、あすかあきお氏の著書のトンデモ性については、と学会の本でも読んでください。ただ、実際に読んでみると、全てのネタがトンデモってわけでもなかったけど。「人魚のミイラが作りモノ」ってマトモな主張もあった。もっともアレくらいバレバレなものまで「ホンモノ」と主張してたら、それこそ誰からも相手にされなくなっちゃうだろうけどね。 あと、DVD『うる星やつら2』があったので、これも定価の三割引きくらいでゲット。いや、買おうかどうしようか迷ってたのよ、これ。
夕食を「庄屋」で取る。ここも居酒屋メニューがあって、ついつい二品三品と注文してしまって、カロリー的にはよくないのだが、できるだけ山菜のミソ炒めみたいなのを頼んでカロリーオーバーしないように気をつける。 アルミホイルの上に葉を敷いて、その上で鶏肉や山菜などを乗せ、コンロで焼くのである。これが香ばしくて実に美味い。分量も適量で、チェーン店のわりにあまりありきたりでないメニューが多いのが嬉しい。
さて、我々は一路どこかを目指していたのだが(どこだよ)、「このへんだよ」としげの言うあたりに近づいても、温泉センターらしい場所は一向に見当たらない。 時間はもう10時を回っていて、私の視力ではもうネオンサイン以外何も見えず、ナビすることは到底不可能である。 「住所はこのへんなんだけど……」としげが言うので、いったん車を停めて、懐中電灯で地図を見る。 「おい、その住所だと、道路を降りて細道を山の中に入ることになるけどいいのか?」 随分奥まったところに風呂屋があるもんだ、とは思ったが、しげが間違いない、と言うので、見えない目で「そのへんに横道はないか?」と言ったのだが、しげ、見事に道を見つけられずに通りすぎる。 「なんで通りすぎるんだよ!」 「気づいたときには通りすぎてたんだよ!」 言い訳にも何にもなりゃしない。Uターンしたのはいいものの、「こっちのほうが近道かも」と、しげ、いきなり左折する。 「おい、地図上だとソっちは行き止まりだぞ!」と言ったがもう遅い。 あとの過程はあまりにくだくだしくなるので省くが、目的地に着いたのは1時間後、11時過ぎであった。しげは私をラビリンスに連れていこうと図ったのか。
結局どこへ連れてかれたのか、と見上げてみると、ホテル風の建物の上に、妙なネオンが輝いている。ホテル式の風呂屋とはまた豪勢なことである。明かりが花火のように広がっては消えているが、看板らしいものは見当たらない。私の目が悪いので見落としてただけかもしれないが。 駐車場に車を置いて外に出たものの、建物の入口がまたどこだかよくわからない。建物を経巡って、階段の奥に黒ガラスのドアがあるのを見つけた。道にも面してないし、なんでこんな入口っぽくないところに玄関を作ってるのだ。 中に入るとロビーである。夜が遅いせいか誰もいない。誰もいないどころかフロントもいない。てゆーか、フロント自体が閉まっている。閉店中か。 しげが「そこの光ってる部屋の番号を押すんだよ」と言うので、ふと壁を見ると、どでかい電光版が設置してあって、ズラリと部屋番号が並んでいる。しかし光っている番号は一つもない。その下を見ると、電光版と同じボタンと、受話器が並んでいる。 どうやら風呂に入るには、この受話器で申しこまなければならないらしい。それにしても随分用心深いセキュリティを施している風呂屋である。
「あの、すみません。電光版に光がついてないんですが」 受話器を取って話しかけると、若い女性の落ち付いた声が聞こえてきた。 「部屋が空くまであと30分ほどお待ちいただきますが、よろしいですか?」 敬語が正確である。巷でマトモな敬語を聞く機会がほとんどなくなっていたので、なんだか嬉しくなる。ええ、いいですよ、30分でも40分でも待ちましょうとも。 ところが、受話器を置いた途端、どこから現われたのか、ロングヘアの若い女性が、「あの、今、電話なさったのはそちらですか?」と聞いて近寄って来た。ちょっと驚いたが、本当にどこから現われたのかわからなかったのである。どうやらこの風呂屋の従業員らしいが、秘密の従業員部屋でもあるのだろうか。 「はい、そうですが」 「ほかにはどなたもロビーにはいらっしゃいませんでしたか?」 「ええ、私たちだけです」 「ちょうど、部屋が空きましたので、そちらに行かれてください」 そう告げるやいなや、次の瞬間にその女性はまたいずこかへ消えていた。九の一か。電光版を見上げると、一室だけ光が点いている。 「あの、ボタンを押せばいいんですか?」 どこへともなく声をかけたら、どこからともなく「押してください」の声。なんだが阿片窟にでも入りこむような雰囲気である。阿片窟に行ったことはないのだが。
階段らしいものはロビーのどこにもない。エレベーターが3基ほど。 ちょうど右端のエレベーターのドアが開いて、中年の男性と、若い女性のカップルが降りてきた。この人たちもお風呂でさっぱりしてきたのだろうか。 入れ代わるようにエレベーターの中に入りこむ。
部屋は4階。中に入ると自動ロックで鍵が閉まる。 なるほど、完全個室の風呂屋ということか。入口の側に精算機があって、部屋を出る時にはここに料金を入れるらしい。フロントで精算とかしないのだなあ。人件費の節約のためなんだろうか。
部屋の中はシックで落ち付いた雰囲気である。 出入口のすぐ側に風呂場があったので早速覗いてみる。ゆったりしたい、がしげの希望であったが、そのわりには底が浅い風呂である。幅はあるから二人で入るのに不便はなさそうだが。 サウナ部屋まであったが、二人で泊まる部屋に、ここまで風呂の設備が付いているというのは確かにすごい。せっかく来たのだから、まずはやはり風呂の準備。水道の蛇口が丸形でなく扁平。従って出るお湯も扁平である。これだけでもなんとなくリッチな気分になるのだから庶民は単純なものだ。
お湯が溜まるまで、部屋の様子を見る。 広さは二、三十畳くらいだろうか、二人用の部屋にしては随分と広々している。 ダブルベッドに、枕元には何やら調整機っぽいモノがいろいろ。正面のガラス戸は壁一面に大きく、夜景が一望できるが、向かいは整地中で光もなく、殺風景である。 やたらでかいテレビがあったが、なんとカラオケができる。なるほど、ちょっとした温泉センターだ。しげが探し出しただけのことはあるな。 早速、『愛國戦隊大日本』(^o^)を歌っていると、しげが風呂場から顔を覗かせて、「見て見て! ここのお湯、溜まったら自動的に止まるよ!」とはしゃいでいる。ここまでスゴイと、1泊いくらぐらいするんだろうかとちょっと財布の方が心配になってきた。
湯の温度を調節して二人で入浴。……こらそこ、口笛吹くな。夫婦なんだからこれくらい普通だ。 浴槽の横にボタンが二つあったので、一つ押してみると、突然ボコボコッと音がして水泡が全身を包む。ジャグジーのボタンだったのだ。もう一つのボタンを押すと、急に天井の照明が落ち、浴槽の中にライトが照らされる。 しげ、「おおーっ!」と歓声を上げるが、たかが風呂にこんなに凝るというのはいったいどういうコンセプトなのか。 しげ、興奮して浴槽の中にシャンプーをドバドバ入れる。途端にジャグジーで攪拌された湯舟が泡風呂になる。しげ、「あはあはあは」と笑いながら泡を吹いたり手で掬ったり私に投げ付けたりして遊ぶが、ホントに好きなんだよなあ、こういうの。 ともかく今回は「しげの垢を落とす」が目的なので、テッテ的に洗う。こすってもこすってもなかなかボディソープが泡立たない。全くどれだけ垢を溜めてたんだ、こいつ。 なんとかしげを洗い上げた時には、すっかりくたくたになってしまった。 風呂好きのしげは堪能するまで入浴し続けるつもりらしいが、私はそこまで付き合えない。しげを残して、先に上がる。
飲み物は予めコンビニで買い込んで持ちこんでいた。 冷蔵庫はあったが、取り出せば当然高いカネを取られるのであろう。覗いてみると、確かにいかにも高そうな酒類やら栄養ドリンクがズラリと仕舞われている。これ1本で何百円も取られるんだろうなあ。持ちこみして正解であった。あー、お茶が美味い。 テレビを点けたがもう深夜でスケベな番組しかやってない。 巨乳のねーちゃんが朝寝坊してる彼氏のナニをナニでナニして起こしてあげるというしょーもないもの。こういうスケベな番組はできるだけ男をカットしてほしいんだがなあ。ねーちゃんは結構かわいいのだが、男優の方がもう、肌の荒れた上島竜兵みたいなんである。 カラオケに切り替えて、カタログを見る。 しかしアニソンが異常に少ない。ほんの3ページほどしかない。仕方なく『思い出の渚』だの『さらば涙と言おう』だの、往年の青春ソングを中心に1時間ほど熱唱。『アラビアの夜』『夜来香』にも挑戦してみたが、キーがうまく合わない。いろいろ歌ったことのない曲にも挑戦して悪戦苦闘していたら、さすがに睡魔に襲われて来た。しげが上がってきたころにはもう私はダウン。 しげは私が寝たあともブルーハーツなんかを歌ってたらしいが、それも全て夢の彼方である。
2001年12月28日(金) ラーメン・ファイト!/DVD『御先祖様万々歳!』ほか 2000年12月28日(木) 初めてタグ使ってみました
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