無責任賛歌
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2002年07月21日(日) |
アニソンしか歌えないわけじゃないけど/DVD『千と千尋の神隠し』/『吼えろペン』5巻(島本和彦)ほか |
朝はまた寝過ごして、『ぴたテン』だけチラリと見る。もう『ハリケンジャー』も『龍騎』も『どれみ』もどんな展開になってるかわからんなあ。 買ってきたばかりのDVDをともかく見ようと鑑賞。と言っても今回買ったのは昔見たことがあるものばかり。 DVD『白蛇伝』に『少年猿飛佐助』。 東映動画の第一弾、第二弾であるが、今見返すと、ここまで画面に奥行きがないものかと驚いちゃうね。もう画面がヒキばっかし。当時のスタッフの技術じゃそれが限界だったんだろうけれど。 デジタル技術の何がアニメを革新的にしたかというと、奥から手前への動きを容易にしたってことに尽きる。逆に手描きアニメでありながら「奥行き」の動きを縦横無尽に展開して見せていた『わんぱく王子の大蛇退治』や『太陽の王子ホルスの大冒険』がどれだけ凄かったかってことなんだよなあ。ドラマ的にもこの二作は現代のアニメと比べてみても少しも遜色がない。っつーか、このあたりのアニメを見てなくてアニメファンを名乗るのはモグリというものである。 それはさておき、当時はまだ「声優」というものがほとんど専門化されていなかったから、声アテはもっぱら映画俳優に頼っている。 『白蛇伝』が森繁久彌と宮城まり子の各々十役(!)によることは有名だが、『少年猿飛佐助』も、真田幸村が中村賀津雄(現・嘉葎雄)、夜叉姫が杉山徳子、おけいに松島トモ子、おゆうに桜町弘子、三好清海に岸井明、戸沢白雲斎に薄田研二と超豪華……ってこれがどれだけ豪華なのか分る人ももうほとんどいないんだよなあ。私なんか「岸井明や薄田研二が声優やってる!」って小躍りしちゃうんだけどもね。アニメとして面白いかと言われると、資料的価値の方が高いと言わざるを得ないけれど、まあ『白蛇伝』は森繁と宮城まり子の歌がたっぷり聞けるから(^_^;)。
昼、カラオケ「シダックス」で食事。 アニメの新曲もそろそろ入ってるんじゃないかと思って覗いてみたが、それほど増えていない。 しげと二人だけのときはできるだけ今まで歌ったことがない歌を練習することにしているのだが、しげ、今日はアニメから離れて懐かしのドラマのテーマソングをチョイスしている。「懐かし」とは言っても、なんだかんだ言ってやっぱり私とは十以上もトシが離れているので、『青いうさぎ』なんて私から見ればバリバリの「新曲」を歌ったりしているのである。 私もそれに対抗してドラマ主題歌を歌ってやろうと思ったが、カタログを見ると『なんたって18歳』くらいしか歌えるのがなかった。……古い歌も載せてくれよう、私ゃ『雑居時代』(そよ風のように、生きてゆきたいの♪)とか『パパと呼ばないで』(花はなぜ咲くの、いつか散るのに♪)とか『水もれ甲介』(水もれ、こうすけぇ、水もれ、こうすけぇ♪)とか大好きだったんだよう……ってみんな石立鉄男のドラマじゃん(^_^;)。 結局やっばり特撮、アニソン縛り。それでも久しく歌ってなかった曲をできるだけ選ぶようにする。戦隊ものはあまり熱心に見てなかったのだが、それでも『デンジマン』あたりまでは何とか私もソラで歌える。やっぱり夕方から朝の放送に移ってからは丹念に見られなくなっちゃったからなあ。
久しぶりに『サイボーグ009』を見る。 ここ2、3回見逃してたから、展開がどうなってるかと思ったら、サブタイトルが付いてて「ミュータント戦士編」。原作にそんなのあったっけ? と思って見たら、これがなんと『移民編』。 ……そうかー、なるほど、アニメ化にあたって微妙に妥協点を図った結果がこういうことなのか。 原作はもう、サベツに引っかかるってんで、未来人がミュータント化してるって設定は改変されてしまっている。それをなんとか復活させようとした結果が「ミュータント=エスパー」って設定なわけだね。苦肉の策かもしれないが、締めつけのキツイ中で、これはぜひ評価したい。 ガモ=ウイスキーをここで絡めてきたのも、いいアイデアだね。原作じゃプロローグに登場したっきりだったのをメインに据えたのは、前回のアニメ化の時が最初だけれど、使い方としては今回のほうがずっといい。 ……けれど、この設定だと「時空間漂流民編」にはうまく繋がらないんじゃないかなあ。それともアレは「海底ピラミッド編」と合わせて「天使編」への繋ぎにするつもりなのかなあ。 これからの展開を予測するのも、旧作原作ファンのタノシミなんで、今度のアニメが初めてって人はご勘弁ね。
さて、今日は私にしてはちょっと珍しいテレビ番組を取り上げる。 爆笑問題が司会をしている『決定!これが日本のベスト100』という番組だ。好きなテレビアニメだの懐かしソングだのをともかく「100」集めて、わずか一時間で放送してしまおうというかなりムチャな番組である。 この手の番組は、かつてはたいていスペシャルで2時間ないし3時間の枠を取って、クリップではあってもそれなりの分数を取って紹介していたと思う。それがこの番組は毎週1時間に100本。ゲストのコメントなんかも入るから、だいたい一本あたり10秒から20秒。ほとんどこれでは紹介にすらならない。よくもこんな番組が成立するものだ……というのは我々トシヨリの感覚で、多分、今の視聴者は何分も時間をとっての紹介なんて見たくもないのだ。
今日の特集は「あの人は今」。 いやはや、ヒドイなんてレベルじゃないね(-_-;)。 例えば仮面ライダー2号・一文字隼人役の佐々木剛氏の紹介など、戦闘員との対決アクションと変身ポーズを取らせただけで、インタビューも何もなし。あとは「今も舞台で活躍しています」のナレーションがかぶって終わりである。 一応、この番組は視聴者からのアンケートに基づいて編成されているらしい。ということは「仮面ライダーの人って今どうしてるの?」と気になった人が世間にゃかなりの数、いたということだ。 しかし、引退したり転職している人ならばともかくも、佐々木氏は療養期間があったとは言え、バリバリの現役なのである。ファンならば佐々木氏が今も活躍中であることを知っているし、特にファンでなくても、ちょっとネットや図書館で調べれば、すぐに消息は分ることだ。なのにどうして佐々木氏の名前が挙げられねばならないのか。投票した連中は断じて佐々木氏のファンではない。ただの「冷やかし」である。 そんなアホの投票に追従して、佐々木氏をまるで「忘れられた人」扱いでたいした解説もつけずに紹介することがどれだけ非礼であるか、スタッフには分らなかったのだろうか。わかんなかったんだろうなあ。 「仮面ライダーの人って、今どうしてるのかなあ」 「舞台やってるみたいよ」 「ふーん、そうなんだ」 ここで得られた情報で会話できることと言ったら、せいぜいこの程度じゃないか。世間話のネタにすらならない、とても情報とは言えないものを与えることにどんな意味があるってんだ。 わざわざ会場まで連れて来られたゲストもいるが、「アラジン」は確かにブランクがあったが、どうして「伊藤つかさ」が連れてこられにゃならんのか。別に『金八』と『鞍馬天狗』のあと消えたわけでなくて、ずっと俳優続けてたぞ。そんな詳しいことを知ってるのはオマエだけだと文句つけるやつがいるかもしれないが、しょっちゅう土ワイや舞台に出てた人が「忘れられた」レベルであるわけがない。無知な連中が投票してるだけの話なのである。 こうなると、こういう番組を作ってること自体「犯罪」じゃないかという気がしてくるね。 あとさあ、桜庭あつことか横山弁護士の消息知りたがってやつがいたみたいだけどよ、そんなもん知ってどうするんだよ。それこそ世間話のネタにすらできんだろうが。 「ねえねえ、横山弁護士って、今、年金暮らしなんだって!」 「……それで?」 虚しくないのか。 鹿児島で隠棲してる野呂圭介さんが、スタッフに向かって「よく見つけたねえ」と笑っていたけど、こんなアホな芸能界に野呂さんはもういたくなかったんじゃないかね。ドッキリカメラの人としか野呂さんのことを見ることができない人間ばかりが大きなツラしてる今の芸能界じゃ、そりゃ居場所はなかろうよ。
DVD『千と千尋の神隠し』をフランス語バージョンで見る。 『もののけ姫』のDVDは英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、広東語、ポルトガル語と多彩だったが、『千と千尋』はフランス語のみ。 ディズニーと提携している以上、英語版だって作られてるはずなのに、どうして収録しなかったのかなあ、発売までに間に合わなかったってことはないと思うんだけれど(“Spirited away”=「連れ去られ」のタイトルで公開されてるはずである)。 『もののけ』のときは、外国語はどうにも純日本な作品世界と合ってないような気がしていたのだけれど、『千と千尋』とフランス語はそれほど違和感がない。 けれど、『もののけ』のときもそうだったのだが、外国語版のキャストが全く字幕に出ないので誰が声をアテているのか皆目分らないのはなんとかしてもらえないものか。外国人キャストに対してもあまりに失礼である。 それはそれとして、静謐なイメージの日本語版千尋=柊瑠美と、やや甘えん坊的な声のフランス語版千尋=「誰や」との比較をしながら見るのはなかなか面白い。柊さんは恐怖を感じながらも自分の心を見失わないでいる感じだけれど、フランス娘は(こんな書き方しなきゃならないからキャストちゃんと書いとけってんだ)ひたすら怖がって回りになんとかしてもらいたいって感じだ。あくまで感じだけど。こういう役の捉え方の違いに、「異界」に対する日本とフランスのイメージの違いが現れてると考えるのは考え過ぎかな。 フランス語タイトルは“Le Voyage de Chihiro”=「千尋の旅」。 ご承知の方も多いと思うが、フランス語では“h”を発音しない。従って「チヒロ」は「チィロ」と発音されてるんだけれど、なんかペットみたいでおかしいような可愛らしいような。「ハク」は当然「アク」になりますな。どっちかというと「ク」にアクセントがあって「アクー」って感じ。本名は「ニギハヤミコハクヌシ」じゃなくてなぜか「アクアク」になってた。なんだかポリネシアかどこかの神様みたいね。 ほとんどのキャラが日本語の名前通りだけれど、「カオナシ」だけはフランス語に翻訳してあって“Sans Visage”、英語なら“No Face”。まんまですな。フランス語版でもカオナシは原音のまま喋ってるんだけれど、この声優誰だ。テロップに表記がないからわかんないんだけど、ハク役の入野自由の二役か?
ああ、あと予約特典の「ハクのおにぎりフィギュア」は不恰好でした(-_-;)。 宮崎監督が実際にオニギリ握ってる写真がついてるんだけど、これをありがたがるやつ、いるのかね。糸井重里(こいつがこのオマケの発案者だよ)がまた「オニギリは、働くこと、食べられることの価値のシンボルです。それはひいては『生きること』の価値をたたえることにもつながっています」とかいい加減なこと書いてやがるけれど、「オニギリという食べ物は世界で一番いやらしい」といくたまきは言ってるぞ(by『パイが好き』)(^o^)。
マンガ、島本和彦『COMIC BOMBER 吼えろペン』5巻(小学館/サンデーGXコミックス・560円)。 おお、16年ぶりに日の目を見た『燃えるV』最終回! ……もう誰も知らんな、『燃えるV』。 『炎の転校生』に続いて島本和彦が昭和61年に『少年サンデー』で連載してた“作者自称”テニスマンガなんですけどねえ、いやもう、これが『ほのてん』のノリのまんまで描かれてたものだから、もう全然マトモなテニスマンガじゃなかったのよ。『エースをねらえ!』のファンが読んだら激怒するんじゃないかってくらいのもので(『エース』がマトモなテニスマンガか、という意見については、まあそれはその、アレですから)。 何しろ主人公の狭間武偉、初登場時は全くテニスを知らないただのケンカ野郎。それがなんかイキオイでテニス界に乱入して最終回では全仏全英全米全豪の4大タイトル全てに優勝するというムリヤリ展開である。テニスマンガなのになぜか必殺技とか出てくるモノ凄さ。「垂直(バーチカル)ボンバー」はともかく、「スパイダーガッデム」(ボールをたくさん投げる)なんて、実際の試合に使えねーじゃん……と思ってたら、高速スピードで手を動かして可能にしてやんの。ムチャっつーか、既にテニスじゃない(^_^;)。 人気がなくて1年で連載終了しちゃったんだけども、私は好きだった。……でも作者にとっては封印したかったマンガらしい(このあと島本さんは『とつげきウルフ』の連載もコケて『サンデー』から離れる)。 作中、島本……ああ、いやいや、炎尾燃がアシスタントたちに向かって叫ぶ。 「おれはその時、ボクシングマンガを描きたかったのだよ、実は!」 「同じ時期に同じ雑誌でほかのマンガ家がボクシングマンガを連載していたとしたら!?」 「だから、おれはテニスを通じてボクシングを描くしかなかった!! しかたがなかったんだ!!」 ……血の叫びである(^_^;)。当時サンデーのボクシングマンガって言ったら、六田登の『陽気なカモメ』あたりかなあ。作風違うから気にすることなかったと思うけど、これがオトナの事情というヤツなんでしょうね。でもテニスマンガじゃなくても、ちゃんと島本さんしてるから恥ずかしがることないと思うんだけどなあ。 恐ろしいことにこの『燃えるV』(作中では『ウインブル首領(ドン)』)を読んでテニスプレーヤーを目指した愛田風美(モデルは杉山愛か?)から電話が炎尾プロにかかってくる。「先生が私の『生みの親』なんですよ!」 そんなこと言われても……と誰しも思うであろう。それがよっぽどメジャーな作品ならね〜、苦笑するくらいですむだろうけれど、なんたってもとが『燃え……ウインブル首領』じゃあねえ(^_^;)。愛田も愛田だ、それじゃまるで『GOGO!レッドソックス』読んで野球選手目指したり、『キックオフ』読んでサッカー選手を目指すようなものではないのか。 結局、なりゆきで打ち切りにあった連載の「真」の完結編を描くハメになった、炎尾、なんと「主人公が実は女だった!」と設定を変えて愛田に差し出すが……。 「なんか結末を見たら、べつにどうでもよくなっちゃった! あんなマンガ!! 今、私は大人になったんだわ! ありがとう炎尾先生!! ありがとうございました、結果的に!!」 ……ああ、痛そう(хх。)。ホント、自分の身を切りながらギャグ作ってるよなあ、島本さん。自虐ギャグってのはもう少しチクチクくるものだけれど、島本さんの場合は自爆しまくってるからなあ。ほかにもこの巻、過去のマンガの滑ったネタを全て「妖精さん」のせいにしてたり、ここまで自分を切り売りするかってネタが続出。少し煮詰まってきてないか、島本さん。 しげはこういう作者が自分自身をあえて貶めるギャグがホントに好きで、椎名高志の『GS美神』でも、「まさかもう一度アニメ化!?」「それはない、それはないんだよ……」「ああっ、血の涙!」ってギャグを見て大口あけて笑ってた。人間として最低なヤツだということがよく分るなあ。 気がついてみたら、『吼えろペン』ももう5巻。『サンデーGX』の中では一番厚く熱い連載になっているけれど、もしかしたらこれが『ほのてん』を越えた島本さんの代表作になるかもしれない。つーか、既に巻末の広告では「島本和彦21世紀の代表作!!」とアオリがついているぞ。いいのかホントに。
2001年07月21日(土) やたら長長文になっちゃいました。すみません/『裏モノ見聞録』(唐沢俊一)ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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