無責任賛歌
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2002年06月21日(金) |
やっぱりカネがあると肉/映画『ウォーターボーイズ』/映画『アイ・アム・サム』 |
待ちに待った給料日。 これでようやく極貧生活から脱出である。もっとも、二、三日あとにはまた、その日のメシにも事欠く生活に戻っちゃってるだろうけれど。……って、数日でン十万も使い果たすつもりか。 実の親が、この不況のせいで日銭稼ぐのにも汲々としているというのに、何をバカ学生のような生活をしてるというのか。 あー、なんかアレですね、私が日記に書きちらしてることをですね、いかにも重い経験に基づいた立派なモノイイのように捉えてる人がたまにいるみたいなんですけど、私ゃ昔っから全然変化のない、生活無能力者の性格破綻者なんですから。人生舐めてかかってるおおバカものなので、あんまり本気に取っちゃいかんですよ。
今日は7時からの映画に間に合うように、1時間だけ仕事を早引け。 有休もこんなふうにチビチビ使っていきゃ、そんなに減ることはないんだけれど、たまに二、三日、連続してぶっ倒れるからなあ。本当は今日も半日ぐらい休みを取って、余裕を持って出かけたかったんだけれど、あとあとのことを考えると、そうもいかない。多分と言うか、毎年確実に夏場には倒れているので、そのためにも今はあまり休まずに頑張っとかなきゃいけないのである。 給料が出たら「すしでも食いにいこっかー」とスーパーミルクちゃんみたいなことをしげは言っていたのだが、改めて「すしにするか?」と聞くと「肉!」とヒトコトで即答する。 ……レパートリーというかバリエーションというものがないのか、この女には。ということで、「肉のさかい」で早めの夕食。 けれど、確かに肉系の店に行くのはしばらくぶりである。 この店はいつも割引の金券を500円分呉れるのだが、前に貰った分は4月で期限切れになっていた。つーことは2ヶ月近くこの店に肉食いには着てなかったってことか。 しげはどうせ赤身肉しか食わないだろうと思っていたが、珍しくそれ以外にも冷麺を注文。不味いモノは食いたくない主義のくせに、たまにちょっと珍しいものがメニューあると、後先考えずに食べたくなる悪いクセもしげにはある。こういう店の冷麺って、絶対辛いと思うんだけどなあ。しげに食いきれるのかと思ったら、やっぱり、「麺は美味しいけど辛い」と食い残しというより、ほとんど手付かずの冷麺を押し付けられた。 昼飯を抜いてて正解だったなあ。私はダッカルビ定食を注文していたのだが、腹が空いていなければちょっと食べきれないところだった。
外に出て車に近づくと、しげが急に目を輝かせて、「見て見て!」と私の袖を引っ張る。何ごとかと思えば、車のボンネットにうっすらとネコの足跡が付いているのである。 「かわいいねかわいいねかわいいね」としげはしゃいでるがつまりはヨゴレじゃん。ヨゴレでもネコならいいのか。
ワーナーマイカルシネマズ大野城に6時半に到着。 時間的にはちょうどいい感じ。有休取らずに来れたんだったらもっとよかったんだけどね。8時間労働ったって、昼休みも職場に拘束されてるんだから、こいつも時間の中にカウントするのが本当じゃないのか。だから「9時から5時まで」ってアメリカじゃ言ってるんだし。8時から4時までにしてくれりゃ、映画ももう少し行きやすくなるんだよ。景気快復を本気で考えるなら、そういう措置も取ったらどうなんだ、小林信彦も昔そんなこと言ってたぞ、と内心愚痴りながらリバイバルの映画『ウォーターボーイズ』を見る。 ……去年、見逃してたのが惜しかったなあ。西田尚美をスターダムに押し上げた(^^)『ひみつの花園』の矢口史靖(「やぐち・しのぶ」と読むのだ)監督だと気付いてたら、絶対見に行ってたのだが。 コメディはとにもかくにも基本アイデアで勝負が決まるところがあるので、「男子のシンクロナイズドスイミング」というのは、それだけで半分は成功したようなもの。期待は弥増してしまうが、期待外れに終わらないどころか、実に爽やかな青春映画にもなっていたことに驚く。かと言って、「これが青春だ!」みたいな気恥ずかしい作りにもなってはいないのでご心配なく。ヒトコトで言えば、これ「バカっていいじゃん」映画なのだ。 若い役者さんたちには基本的にコメディ演技はできない。だから一所懸命になればなるほどバカに見える「若さゆえの過ち(^^)」を、そのまんま映画にしたのだ。
今や部員は三年生がたった一人、潰れかかった唯野高校水泳部に新しい顧問がやってきた。それがまた真鍋かおり似の(って本人だけど)美人教師。釣られて、入部希望者が殺到したはいいものの、先生の専門はなんとシンクロナイズドスイミング。あっという間に部員は五人に減ってしまうが、今更やめるにやめられない事情のある五人は、一大決意をして文化祭でシンクロを披露することを決意する。ところが直後に先生は妊娠して産休に入ってしまった。 コーチもいないどころか、カナズチばかりの水泳部の明日はどっちだ?!
真鍋かおりの代わりのコーチがイルカ調教師の竹中直人というのも相当、人を食っているが、小出しのギャグが重層的に積み重ねあげられてストーリーが構成されているのがいい。柄本明がゲイバーのママ役ってのはハマリ過ぎててかえって笑えないが。 恋愛ネタが絡むのはまあこの手の青春ものの定番だから仕方がないが、それほど物語の流れを阻害しない程度なのでこれもよし。っつーかそれもちゃんとギャグになってるし。ヒロインの平山綾もかわいいことはかわいいが、個人的にはメガネっ子三人娘のまん中の秋定“「あぐり」の少女時代”里穂がイチオシだ。自分たちを少しでもかわいく見せようと、メガネを取って、目を顰めながらウォーターボーイズたちを誘うシーンはメガネっ子萌えの心臓を打ちぬくことは必至。思わず私も映画に向かって心の中で応援しちゃったもんね、「違うぞ里穂ちゃん! メガネ取らなくったって君は可愛い! かわいいんだああああ!」。 アホですか? アホですね。 でも、やっぱりバカっていいよ。「なんでシンクロ?」って疑問、アタマのいいやつはどうしても考えちゃうだろうけれど、これを去年見ていたら、絶対邦画のベスト3くらいには押してたろう。去年はホントに日本映画豊作の年だったんだなあ。 ちなみに、水泳部員の一人に、『ウルトラマンコスモス』の主演、杉浦太陽がチョイ役で出ていたぞ。でもどこに出てたか全然わかんないから、この映画までオクラ入りになることはあるまいて(^o^)。
続けて映画『アイ・アム・サム』をハシゴ。 予告編を見たときには、知恵遅れのパパと賢い女の子との愛情生活を描いた感動モノかと思ってたら、ちょっと違ってた。確かにそういう要素はあるけれど、基本的にはこれ、全編が裁判ものだったのだ。 つまり「知恵遅れのパパに子供の養育を任せていいのか?」ってことが児童相談所の訴えで裁判になったところからドラマは始まるのね。 物語自体はそれを結局は「愛情」の問題にスライドさせていくので、予定調和でいささかつまらないのだけれど、それよりも見ている間ずっと気になってたのは、こういう映画が成立してしまうってのは、やっぱり訴訟社会であるアメリカのお国柄だからってことなのかってこと。 「親が知恵遅れでも子供を任せていいのか」って問題自体についての答えは簡単だろう。「程度による」。違うか? で、映画のサムの様子を見る限り、任せてはいけないレベルとは思えない。サム自身は安月給ながらもスターバックスでちゃんと給仕の仕事をこなしているし、子育てに悩みあぐんだら、近所の人に助けを求める知恵も持っている。もしもこれが日本の場合だったら、と想定してみたが、この国もだんだんと訴訟社会となりつつあるから簡単に断言することはできないが、この程度のことなら、まず問題にすらならないのではないか?(つーか、日本の場合、もともと知恵遅れの人が結婚できるかどうかという問題の方が大きいんだけど)。 この映画が「甘い」のは、そういう問題について真剣に考えるなら考えるで、学力のみでサムを親として不適格とする検察側の主張に対して、弁護側が、通り一遍の愛情論でなく、現実に知恵遅れやヒキコモリの人たちがよってたかって娘のルーシーを育てていけたのはなぜか、という点をキチンと検証・主張していないところだ。 『白雪姫』中の「七人の小人」をモデルにしたと思しい、知恵遅れの仲間たちは裁判でサムに有利な証言をすることができない。しかし彼らは一人一人がどこかで日常生活に支障をきたす部分を持っていも、それを補いあうことでルーシーを立派に育ててきたのだ。それは「愛情」のひとことで括れるような単純なものではなく、もっと複雑な要素がそこにはあるはずだ。 弁護士役のミシェル・ファイファーが無能にしか見えないのは、彼女自身がヒステリーに悩まされているからではない。彼らの中に愛情を越えてもなお人間としての尊厳を訴えることのできる「何か」を全く見出せていない点に理由がある。 それはつまり、この映画の制作者たちが「妥協」した結果なのである。脚本の「放棄」だと言ってもいい。おかげで、物語はいわゆるありきたりというよりは逆に現実から目を背けた「『白痴』=純真無垢な心の持ち主」みたいな偽善的な方向にしか進んでいかなくなってしまった。そこのツメが甘かったのが、この映画のなんとも惜しいところだった。
しかし、「演技」というレベルにおいては、この映画、世界でも最高のレベルに達していると言っていいだろう。 サム役のショーン・ペンももちろんだが、何より信じられないほど豊かな演技を披露してくれたのは、ルーシーを演じた7歳の少女、ダコタ・ファニングちゃんだ。自分が父親よりも賢くなってしまう孤独感、けれどそれゆえに父親から何を受け継いで行けばいいかを学んでいく様子を、ほんのわずかな表情の動きで表現していく。……私ゃ、かつてのマコーレー・カルキンもハーレイ・ジョエル・オスメントくんもべつに「てんさい」とは思わなかったけれど、ダコタちゃんは天才だと言いたくなっちゃったね。結構穴のある設定なのにそれが気にならないのは、彼女の演技によるところが大きい。見て損はしないですよ、この映画。
しげの評価は2本ともまあまあ。『ウォーターボーイズ』にしげが感情移入しないのは分らないでもない。あまり「男の子」に対して幻想持ってないものな、しげは。若い男のバカってのはあまり笑って許せないだろうし。 いつもの如く、帰り道の車の中で、しげは「どこかへいこうか?」とか言い出す。 「温泉にでも行くか?」と答えたら、しげ、なんだかクスクス笑っている。またどうせバカなことを考えてるんだろう、と思ったが、聞いてやらないのも悪いかと、一応聞いてみる。 「何がおかしい?」 「……ラブホと伊香保は似てるね」 ……聞くんじゃなかった(-_-;)。
2001年06月21日(木) つーきも、おぼーろに、しらーああうおの、/舞台『黙阿弥オペラ』(井上ひさし)
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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