無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2002年06月17日(月) 范文雀はプロレスラー!?/『のーてんき通信 エヴァンゲリオンを造った男たち』(武田康廣)

 仕事が立て込んで来ているので、チョイと気張ってバタバタと片付ける。
 体調がいいときはこの程度の仕事、難なくこなせるのだ。
 迎えの車の中で「オレってやればできるよな」と言ったら、しげが「つまり普段はやってないってことじゃん」と突っ込む。
 やってないんじゃなくて、やりたくてもできないんだよ。仕事遅らせてる事実に変わりはないが。


 しげが「今日はなんだかスシ気分」と言うので、回転すし屋を目指す。
 もっとも、夫婦揃って金欠病なので、いつものボッタクリの「すし大臣」には行かない。一皿100円オンリーの「しーじゃっく」に向かう。3号バイパス沿いには適当な間隔を置いてメシ屋の類が結構あるので、食事には事欠かないのである。これで本屋さえあればなあ、というのが我々夫婦のいつもの述懐。マトモに本を買おうと思えばどうしても博多駅かキャナルか天神まで出ねばならぬのである。
 細野不二彦の『ギャラリー・フェイク』の新刊も浦沢直樹の『アナザーモンスター』も未購入。週末は本屋回りしないとなあ。

 「マリンポリス」と前は言ってた「しーじゃっく」。結構あちこちにあるチェーン店だけど本社はどこなんだろな。ネタはやはり「すし大臣」とは比べものにならないくらい「薄い」。厚さも味も。
 けれどマズイと言うほどではないし、何より安いので庶民は本来こんなもんで充分なのである。「すし大臣」を行き付けの店にするなど、言語道断。と言っても所詮はどっちも回転寿司なんだけどさ。そう言えば普通の寿司屋もすっかりなくなっちゃったねえ。
 ふと気づくと、しげが店内のソフトクリーム販売機をチラチラと物欲しげに見ている。
 その態度で何を望んでいるかは一目瞭然だが、無視するのも何なので、一応「食べたいの?」と聞いてみる。しげ、コクンと頷いたあと「アレ、食べ放題かなあ」とつぶやいて指を舐めている。
 「シズラー」じゃあるまいし、ソフトクリームだけバイキングってわけないじゃん、と思うが、しげがいつまで経っても販売機から目を離さないので、仕方なく従業員のねーちゃんに「あれ、おかわり自由なの?」と聞く。
 ねーちゃん、「あの、1回だけなんですけど」と困ったように答える。ほーら見ろ、店のねーちゃん困らせちゃった。ある意味、私よりもしげの方がよっぽどクレーマーだ。
 でも結局、一回こっきりのソフトクリームも注文。二人で1個を分ける。
 味はまあ、普通のバニラでしたね。それで値段が210円というのはちょっと高いぞ。


 唐沢俊一さんの裏モノ日記を読んでいたら、奥様のソルボンヌK子さんが、酔っ払って「ジュン・サンダー杉山清貴とオメガトライブ」とダジャレを飛ばしているのを読んで、大笑いする。
 いやね、ギャグが面白いからってんじゃなくて、このギャグ、しげもしょっちゅう言ってるからなんだけどね。もっともしげは「ジュン・サンダー杉山」までしか言わないけど。
 「おい、ちょっとこっち来てみな、ソルボンヌさん、オマエと同レベルのギャグ言ってるよ」
 「なに? なんのこと?」
 面倒臭そうにパソコンの画面を覗きこんだしげ、憮然とした顔をする。
 「思いついてもフツーは言わないけどなあ。ソルボンヌさんも酔っ払ってるからこんなしょーもないこと言ってるんだよな。つまりシラフのお前とヨッパライのソルボンヌさんのギャグレベルがどっこいどっこいってなワケで……」
 「オレ、ギャグなんか言ってないよ」
 「……え?」
 「だから、ジュン・サンダー杉山でいいじゃん」
 「……マジか? お前」
 「だって、どこで名前を切ったらいいかわかんないし」
 「自分で勝手に名前くっつけてんだろうが!」
 どうやらしげのアタマのなかでは范文雀とサンダー杉山は同一人物らしい。なんでや(-_-;)。 
 

 俳優、室田日出男が15日、肺がんのため死去。享年64。
 まだ64だったのか。ここしばらくの老け込み方がひどくて、見た目は80歳くらいに見えていたのだが、やはり病気だったんだろうなあ。
 室田さんについては「ワリを食ってる人」という印象が常にあった。
 役者として演技力はあるし、幅の広い人だったとも思う。なのにその実力を生かす役に恵まれてはいなかった。ピラニア軍団の中では、川谷拓三はドラマで主役を張るほどに「出世」したが、本来、室田さんがそのあとに続くべきではなかったか。悪役・脇役に留まらない存在感が確実にあったからだ。
 なのに、映画での使われ方は主役の「引き立て役」以上の役が与えられない。代表作のように言われている『仁義なき戦い』シリーズをまともに通して見たことがないので、何とも言えないが、ほかの『白昼の死角』『影武者』『マルサの女』と言った作品も、室田さんが何の役で出ていたのか、すぐには思い出せないのだ。
 今、思い出せるのは『魔界転生』の宝蔵院胤舜。魔界衆の一人だと言うのに、何ら見せ場を作る所がなくやられていた。あんな役なら出す必要もないだろう、というくらいの軽い扱いである。
 『悪霊島』などはもっとひどい。室田さんが演じた磯川警部は、原作では「磯川警部自身の事件」と言ってもいいくらい、重要な役割を担っている。なのに映画ではただの刑事役に格下げされて全く見せ場がなかった。
 重要な役でも、室田さんが演じるとなると、役が小さくされてしまう。アクが強過ぎて監督たちに嫌われてるんじゃないか、と邪推したくなるくらいである。室田さん自身はそのことをどう考えていたのだろうか。


 武田康廣『のーてんき通信 エヴァンゲリオンを造った男たち』(ワニブックス・1470円)。
 今でも覚えているのは、ガイナックスが『王立宇宙軍』を製作している最中に、宮崎駿が「アレは若い人たちがバンダイを騙して作ってるんです」とかなんとか『アニメージュ』にコメントを寄せていたことだ。宮崎さんはほかにも「まさかアニメーターでメカや爆発は描けても人間が描けないやつがいるとは思わなかった」とか、庵野秀明さんを想定して揶揄したりしている。
 宮崎さんの韜晦癖を知っている人には、これが遠回しな援護射撃であることはわかるだろう。「DAICON」オープニングアニメなどで、その実力はオタクにこそ浸透していたものの、世間的には、全く無名の新人たちがいきなり8億の巨費を投じて長編アニメを作ったのである。ヒットする保証はどこにもない。しかし、成功しなければ、彼らに未来はない。
 当時、『アニメージュ』は『王立宇宙軍』に破格のページを割いていた。人気アニメーターの新作や声優がらみならばともかく、このようなことは異例だったが、恐らくそこにも宮崎駿の「押し」があったのだろう。
 『王立』は、当時のアニメファンに、なんとしても見ておかなければならない作品だと刷り込まれることになった。そして、『王立』で盛名を馳せたガイナックスは、その後も『トップをねらえ!』、『ふしぎの海のナディア』、『新世紀エヴァンゲリオン』というヒット作、超ヒット作を生み出して行くことになる。

 著者の武田康廣氏は、ガイナックスの取締役で、ガイナックスの前身、ダイコンフィルムで『快傑のーてんき』を演じたその人でもある。
 アニメ創世記ならばともかく、一介のアマチュアグループがプロダクションを作り、世界的にも最高レベルのアニメを連発することになるとは、まさに奇跡。その裏事情が読めるとなれば、矢も楯もたまらず飛びついてしまうのはアニメオタクならば当然だろう。
 モノ造りに順風満帆ということはない。
 人は常に離合集散を繰り返す。それはアマだろうとプロだろうと、モノ造りに集った者たちの運命なのである。今やガイナックスの顔となった庵野秀明、山賀博之、赤井孝美の各氏も、常にガイナックスの中心にいたわけではない。自ら恃む者たちが集まれば、イニシアチブを誰がとるかという命題から目を背けるわけには行かないのである。
 結果、多くの人々がガイナックスから去った。追い出された人も大勢いる。元ガイナックス社長の岡田斗司夫さんもその一人だ。「何もしない社長を社長として頂くわけにはいかない」、武田氏の主張は確かに正論だが、正論なだけにそこにはかえって「逃げ」の姿勢が見られる。負い目のある人間は、攻撃的に出ることが往々にしてある。さりげなく自分のことはオブラートに包んだように書かれているが、武田氏も相当各方面から「何もしない」ことで憎まれていたのではないか。例の脱税事件において、同じく取締役の澤村武伺氏に「任せきり」で、「経営に対する無関心」を生んだことが事件の原因、と殊勝に聞こえるようなことを書いているが、反省しているようでいて、責任を澤村氏に押しつけた恰好になっている。こういう「優しげな逃げ腰」の文章は、読んでいてあまり気持ちのいいものではない。
 しかし、誰が悪者か、なんてことを追及したところでそれはしかたがないことだ。確かに、どんなに丹念に読んでいっても、武田氏がガイナックスにおいてどれだけ重要なのかさっぱり分らない。要らないんじゃないか、このヒト、とも思う。おかげで、批評のしようがないのだが、そういう「何の仕事をしているのか分らないヒト」も組織には必要なのだ。人と人との緩衝地帯として。

 それにしても、『おたくのビデオ』も脚本は岡田斗司夫さんになってるけど、実は山賀博之さんだったとはねえ。岡田さん、もしかしたら自分では一本も脚本書いてないのかも。

2001年06月17日(日) 父の日延期(^_^;)/映画『高校教師』



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