無責任賛歌
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2002年04月21日(日) |
えっちな話をしても中身は書きません/アニメ『サイボーグ009』27話 |
感動覚めやらぬ夜明け。 もう一回、『戦国大合戦』(蛇足だけれど、タイトルのルビを見て確認した。これは「だいがっせん」ではなく「だいかっせん」と清音で読む)を見に行こうかとも考えるが、ちょっと興奮を冷ましてからでないと、また涙で画面が見られない、なんて事態になりかねない。 全く、そこまで映画に没入してどうする。
今、「没入」と書いたが、さて、これが果たしていわゆる「ハマる」行為に当たるのかどうか。 やはり前日引用した唐沢俊一さんの日記では、「ハマるという行為は、破綻の部分を見ている方で補完することによって、その作品と自己が同一化する現象を言う」とし、この映画の完成度が逆に作品に「はまらせる」ことを阻害している、と説く。 「ハマる」行為を唐沢さんのいうような行為と捉えていいものかどうかには異論があるのだが、言わんとすることは分からないでもない。
この映画、ともかくツッコミがしにくい。 「パロディ」を拒絶している、と言ってもいい。それがまさしく、「完成度の高さ」ゆえの結果なのではないか。 つまりこんな心理が働くのだ。 「どんなパロディも、この世界観を壊しかねない」。 昨年、『オトナ帝国』の同人誌を企画した山本弘さんに、「今年も作るのですか?」と打電したのだが、答えは「NO」であった。山本さんご自身はまだ『戦国』をご覧にはなっていないということであるが、世評から判断して、「今年は同人誌の参加者は集まらない」と見たのではないか。 実際、私も参加するとなればなんとしてでも原稿を捻り出そうとは思うが、昨年のように一日で一気呵成に五十枚の原稿を書く、なんてエネルギーが出るとは思えない。 仮に廉姫と又兵衛の過去を描くとなると、ほんの五枚の原稿を書こうとしても、長編1本分を書くだけのパワーが必要になるだろう、ということが予測できるからだ。 綿密な時代考証ばかりではない、その世界に生きた人々を、あの映画の世界観に繋がるように描く力量が自分にあるとは、とても思えない。 私にできるツッコミは、せいぜい「幼稚園のみんな、400年以上も昔から先祖代々春日部にいたのかよ。……そんなに住みいいのか春日部」くらいのものだ。……つまんねーなあ。
アニメブームを牽引して来た作品、『宇宙戦艦ヤマト』にしろ、『機動戦士ガンダム』にしろ、『新世紀エヴァンゲリオン』にしろ、作品の完成度、という点で言えばオソマツの一語に尽きる。にもかかわらずそれらの作品に我々がハマったのは、まさしくそれらの作品にあった「破綻」を、我々が心の中で補完していたからだ。 具体的にそれは「パロディ」という形で現われる。 既に『海のトリトン』で、日本初のアニメファンダムは出来上がっていたが、それは『ヤマト』、『ガンダム』で爆発した。 女性を中心としたファン層は、同人誌活動を通じて、作品をイジクリ出した。 そこに「ホモ」という要素を持ちこんで。 『ヤマト』は「戦記・軍隊もの」である。 SFであるかアニメであるか、ということ以前に、東宝や日活の戦記モノ映画の直接の現代版としてヒットした。当時、アニメファンは初めて出会う「戦記モノ」に、「宇宙SFモノ」の皮をかぶせられたために、それと気づかず熱狂していたのだ。 マンガで言えば、そのルーツは、もちろん直接的には松本零士の「戦場ロマンシリーズ」であるのだが、「ホモ」のニオイをより感じさせていたのは、ちばてつやの『紫電改のタカ』である。『ヤマト』は明らかにその延長線上にある。 実際、基本的に「男だけ」の世界である軍隊をからかうのに、「ホモ」というタームは、ずっと以前から機能していたのだ。 ヤオイ、というパロディの方法は、その送り手たちが既にパロディとしての意識を全く持っていないために、まさしく「山なし意味なし落ちなし」のただのイタズラガキに堕しているが、それでも「作品の補完」という意味においてはかろうじて機能している。 彼女たちが対象として選ぶ作品に、キャラクターや世界観に魅力はあっても、ストーリーの整合性やドラマとしての厚みが全くないものばかりが選ばれている点に注目すべきだろう(そうでないのはごく少ない)。 だから言えるのである。 『戦国』に同人女がハマることはありえない。 「しんちゃんだから」ってこともあるんだろうけどね。しんちゃんのパロディ本が生まれにくいこと自体は歓迎したいが。 昨日、「オタク向けの濃いネタはない」、と書いたが、一つだけ、ぼーちゃんが「裏切りご免」とセリフを言うシーンがあった。唐沢さんも書いていたが、これ、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』で、藤田進扮する田所兵衛 が放つ一番気持ちのいいセリフである。 黒澤映画を「オタク」映画扱いするのは、私の感覚からすると非常に黒澤監督に対して申し訳ない気分になるのだが、多分、映画館に足を運んだお父さんお母さんたちのうちで、あのギャグに気付いた人は1割にも満たないだろうから、ちょっとだけ付け加えておく。 唐沢さんが「しんちゃんのセリフ」と日記に書いているのは記憶違いである。やっぱ混乱してるな、唐沢さん。
『戦国』のパンフレットを読んで、屋良勇作さんのメッセージなどにまた涙するが、ネタバレになるのでこれも書かない。 毎回、クレしん映画のパンフレットは子供のお客さんが読めないような大人向けの文章があちこちに載っているが、これは子供を無視しているわけでなく、大人が子供に解説してあげるための一助として書かれているである。 もちろん、お子サマに読めるように絵物語風にしているページもあって、昔話の絵本などはたいていこういう「ツクリ」になっているものなんである。 クレしんのパンフのスタッフにも、子供文化のプロがいるってことなんだよな。凝ってるというか、やっぱスゴイわ、しんちゃん映画。
昼、東京のこうたろう君に電話。 某オフ会の打ち合わせという名目のもとに、『アッパレ戦国』の感想を言い合う。 ネタバレするので、具体的には一つも書けないが、ともかく、ディテールの細かさに二人とも仰天しているし、やっぱり最後は「泣いたなあ」で終わるのである。 まあ、あーゆーので泣けるトシになったってことなんだろう。
アニメ『サイボーグ009』27話「ギルモア・ノート」。 2クールを終わって、場つなぎの総集編。 けれど、映像化されていなかった「プロローグ」の構成に則った前半は工夫があって面白い。 これまでのフィルムを再編集しているが、部分的に、既にリテイクされているシーンもあるので、スタッフも熱意を失っているわけではないのが分かってちょっとホッとする。 ……ディノニクス編はちゃんとまるまる一本作りなおしてくれよ。頼むからさあ。 来週からはどうやら『コスモ・チャイルド編』らしい。 作品発表順からすると随分途中をすっ飛ばした感じだが、これ、つまりラスト・エピソードを『地下帝国ヨミ編』にするためかな? ……じゃあ、『天使編』はやるの? やらないの?
練習が終わったしげ、いつものごとく「肉」コール。 ……こうもしょっちゅう、肉、肉、肉、肉、言われ続けてると、ホントにケダモノを飼ってる気になってくるなあ。 「焼肉のさかい」で、辛味噌冷奴、二人で分ける。 別に仲がいいわけではなくて、一人で食べるには量が多いからだ。 食ってる最中に、鴉丸嬢からしげの携帯に電話。 鴉丸嬢と其ノ他君、芝居の小道具を買ったはいいが、陶器が混じってるので、壊れないようしげの車で運んでほしいとのこと。 なんだかヘンな依頼だ。まず「壊れないように車で運ぶ」ということの意味がよく解らない。別に歩いたって、コワさないように運べるものじゃないのか。めんどくさくて重いから車で運んでほしいだけじゃないのか? だったらそう言えば別に構わないのに、どうして、偽った理由を口にしなけりゃならないのか。 まあ、ウチの劇団の連中はたいてい言葉が不自由なので、何が言いたいのか分らない場合が多い。見え透いたウソもよくつく。 今更、この程度のことで詰問したってしかたがないので、食事が終わったら、博多駅で待ち合わせることにする。
「筑紫口」で待ち合わせ、と約束したのに、我々が筑紫口に到着して当たりを見回しても、鴉丸嬢と其ノ他君の姿が見えない。 連絡を取ると、「今、博多口にいる〜」。 「……筑紫口だって言ったろ?」 「間違えたのー」 数分待って、ようやく二人が姿を現す。 「……何やってたんだ? 看板、見なかったのか?」 鴉丸嬢、宙を泳ぐような目つきで、「見てたけど、大勢(其ノ他君のこと)が博多口に歩き出しちゃったからー」 ……だから、言ってる意味わかんねーよう(-_-;)。 方向を間違えたら止めればいいんだし、そのまま付いてったのはなぜだよ。 だから、二人とも看板を確認しなかったってだけのことだろう。あるいは「どっちだったか忘れた」ってことじゃないのか。 なんでそれだけのことを誤魔化して、無意味なウソをつくのか。 自分の失敗をそのまま素直に言えばいいのに、意味不明な言い訳してたら、信頼なくすぞ。もうないが。
車中では下ネタ話の連続。 だいたいこの手の下ネタ話で中心になるのは、いつも鴉丸嬢である。 本人はフランクなつもりでぺらペら喋ってるつもりなのか、それとも隠しごとがキライなのか、自分の個性のつもりで言ってるのかどうか知らないが、ともかくそのせいで「軽い女」に見られがちなのは損以外の何モノでもない。 私も下ネタは嫌いじゃないが(とゆーよりメチャ好きだが)、「そんなん話してどうする」的な芸のないスケベネタは、聞いてて白けるだけだ。 今日もなんかいろいろ言い出しそうだったので、もうこちらから「それがどうした」的な態度をとった。 具体的なことはさすがに話の中身が濃くって書けないが、いつもは周囲を引かせる鴉丸嬢が、私の軽いエロばなしに引く引く。 ……結局、鴉丸嬢のスケベネタなんて、たいしたことないんだよな。私の軽い話ですら「いやああああ!」と泣いていたのに、これがぴんでんさんの猛烈話だったらどうなるのだ。鴉丸嬢、引きつけ起こして死ぬぞ。 これに懲りてエロ女のフリするの止めればいいと思うんだがなあ。無理だろうなあ。其ノ他君、しっかり捕まえとかないと、そのうち○○○に、○○○○○ちゃうぞ。
今度の芝居、自分で脚本書いといて言うのもなんなんだが、全く興味が無かった。なんたって、役者不足は否めない。 しかし、今日、しげの話を聞いて、驚いた。 「あのさ、今日は嬉しいことがあったとよ」 「なに?」 「昨日と今日と鈴邑さんが来てね、オレの芝居がよくなったって」 「へえ?」 それは確かにビックリだ。 鈴邑君は、ウチの劇団で唯一演出ができる人間だ。その彼から誉められたということは、少なくとも「見れる」ものにはなった、ということだ。 「オレ、前は役が作ってなかったけど、こないだ作ったから」 ……おい。普通、演技ってのは「役」を作ってやるもんだよ。それなしで演技したって、ハシにもボウにもかからんのは当たり前だろう。 けど、これでちったあ興味が湧いて来たな。 あと半月ってとこだが、さて、仕上げはどうなりますことやら。
2001年04月21日(土) 帰り道涙道/映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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