無責任賛歌
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2002年04月20日(土) |
スゲーナ・スゴイデス!/『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦』ほか |
初日一番で、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦』を見に行く。 本当はしげと一緒に見に行きたかったのだが、公演が間近いので、土・日は全て練習にアテてている。 かと言って、平日の午後だと、今度は私が映画館に間にあわない。 う〜くそう、天神東宝、『クレしん』は子供連れしか見にこないと決めてかかってやがるな。オタクの立場はどうなるんだよう(そんなもんを考慮する映画館は、池袋文芸座くらいのものだ)。 しげは月曜に見に行くつもりらしい。 「なんなら今日、練習が終わって、劇団のやつ、誰か誘えば? オレ、二回見に行ってもいいから」 「でも、『クレしん』行きたがるの、よしひと姉様くらいしかいないよ。今日は来てないし」 そうなのである。 いやしくも演劇をやってて、自らが表現する立場にありながら、ウチの劇団の連中はホントに映画や芝居を見ないのだ。中には「長いこと座ってたら息が苦しくなるし」とか言いだすやつまでいるし。舞台で座りっぱなしの役が振られたらどうするつもりなんだ。 しかもなんつーかねー、自分に知識ないこと、恥ずかしげもなく堂々と言い放つしねー。 別にな、アカデミックになれなんて言いたいわけじゃないけどよ、「私、算数できないけど数学者になりたいんです」ってのは通らんだろう。つ〜かなれるわけがない。 役者が映画見るの嫌いでどうするんだよ。 そんなやつが演じた芝居なんて、一人よがりのものにしかならんぞ。 今日の練習は、午後3時に終わるそうなので、しげと待ち合わせして劇団のメンツと一緒に見に行くことも考えたのだが、なんかもー、日頃のみんなの言動をしげから聞いてるだけに、チョイと顔を合わせたら、なんか余計な一言を言っちゃいそうだったんで、結局は控えることにしたんである。
天神東宝、開始の三十分前に到着。 窓口で「本日は全て指定席となっております」のアナウンス。なるほど、既に子供連れが黒山の人だかり。 こりゃ混むかなあ、と思ってエレベーターに乗りこんだのだが、みんな五階の『名探偵コナン』行きだった。 『戦国』の三階で降りたのは私一人。 うーむ、前作の評判高かったから、初日から、ちったあいいオトナが泣きに来ちゃいないかと期待してたが、やっぱ全国レベルで見たら局地的なのかなあ。
パンフは買うが読まない。 先入観はできるだけ入れないで見るのはいつもの信条。既に「しんちゃん映画だから」で映画に対する期待は充分である。
……見た。 信じられない。 これが奇跡か。 昨年、あれだけ感動したのに。 昨年、あれだけ笑って、笑って、泣いたのに。 去年よりずっと冷静に見ていた。 眠田直さんが「オタアミ会議室」に「去年を引きずっていない」と書かれていたので、傑作を期待などしていなかった。 なのに超傑作が今年も見られるなど、誰が予測しえただろう。 私は基本的にある程度のネタバレは覚悟で、映画や本の筋は書くようにしている。この物語についても、その凄さを語ろうとすれば筋に触れざるを得ない。
しかし、私は今度の映画に関しては、ストーリーラインすら紹介することは一切しない。 なぜなら、この映画は私がこれまでに見てきたドラマ、映画、アニメ、全ての頂点に立った映画だからだ。 黒澤明の『七人の侍』をも、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』をも、軽く飛び越えている。 ストーリーは全く複雑ではない。 オタク向けの濃いネタもない。 ただただ映画だ。 これが映画だ。 誤解を招くことが多いので、こういう表現をすることはできるだけ控えているのだが、「これを見ずして『映画ファン』を名乗るな」、そう断定していい(この手のモノ言いは誉める時の常套句なんだから、イチイチ文句つける方が神経過敏と言うものである)。
これだけじゃ単に常軌を逸してるだけのように思われそうだから、オカシクなってるのは私だけではないということを証明するために、唐沢俊一さんの裏モノ日記・15日の混乱ぶりを紹介しよう(^o^)。 もちろん、誉めに誉めちぎってはいるのだが、ところどころ照れがあるのだろうか、あえて貶そうとしているところがあって、それで貶しきれずに困っているのだ。 「タイムスリップのあの静かな描き方を見ても監督がSFをやりたいのではなく時代劇をやりたかったのが分かる」とあるが、原監督が時代劇を描こうとした、という見方はまさしくその通りだと思うが、それを「SF的要素が少ない」という説明のしかたで語るのはヘンだ。 あれは紛れもなく、SFとしての表現である。しかも最上級の。 SFはロボットやタイムマシンなどのアイテムに頼って描かれるものではなく、使い古された言いかただが、センス・オブ・ワンダーによって描かれるものだ。それを実践して来たのが、日常SFの名手、藤子・F・不二雄に薫陶を受けたシンエイ動画の面々なのだ。 『ドラえもん』には「タイムマシン」が出てくるじゃないか、と批判する向きもあろう。けれど実は藤子さんにはなんのアイテムも必要とせず、今回の『戦国』と同様、○○の○○のみで、タイムスリップが行われる、という短編があるのだ(ネタバレするのでタイトルは言わない)。 このネタは実は山田風太郎もある時代SF小説で使っている。 SF者としてはちょっと唐沢さん、見方が甘い。 ケレン味がほしかった、と言いたいのをムリヤリSF的見地から語ろうとしてズレちゃったんだろうな。「唐沢さんの混乱」というのはそういう謂いである。
でも唐沢さんの混乱はこの程度に留まらない。 何しろ、日記にも書かれている通り、今まで「アニメや怪獣映画の主人公が近代的自我を持ってはいけない」、というスタンスで批評して来たのだから、どんなに面白くても、立場上、手放しで誉められないのだ。プロはツライよなあ。 おかげで、唐沢さん、「オトナ」としての一面を見せたしんちゃんの姿に、「もし次回作でまた、何の屈託もこだわりも自分を取り巻く社会に対して持たない子供に戻ってしまったら、それはこの作品に感動した観客をバカにした行為とならないだろうか?」と言わずもがなのことを語っている。 実はこの批評、私が昨年の『オトナ帝国』を見た際に、「オタアミ会議室」に、「そんな風に考える人もいるのではないか?」と指摘したことなのだ。 そのときは眠田直さんが、「しんちゃん何度もオトナになってますけど?」といいツッコミを入れてくれて(問題の回答にはなってないけど)、「野暮言ってんじゃねーよ」って雰囲気になっていたのだ。 そう、今回の唐沢さんの批評、全体的に「野暮」なんである。しかし、「野暮」になるのも無理はない。 唐沢さん自身が語る通り、これほど破綻のない映画と言うのは類を見ない。しかし、「完璧」だの「奇跡」だのという言葉は本来、批評の言葉ではない。完璧な映画などあるはずはないからだ。にもかかわらず、それ以外の言葉が思いつかないほどに、誰もが心を揺さぶられてしまっているのだ。 結果、何を語っても野暮になる。 だからただこう語るしかないのだ。 この映画は、面白い(夢枕獏かい)。
続けて『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』を見る。 あー、でも『しんちゃん』の後に見るもんじゃないな。 それなりに出来がいいような気もするんだが、既に頭は飛んでいる。 だってさっきからまだ涙が止まっていないのだ。 前半がともかくタルい。新型ゲーム機コクーンに入るまでで、映画の半分使ってないか。結果、ゲームとしての見せ場がほんの数ステージしかない。 犯人が最初に死んでるってのも劇場版『パトレイバー』だし(飛び降り自殺まで一緒にするなよ)、切り裂きジャックとシャーロック・ホームズを絡めるってのも、エラリー・クイーン『恐怖の研究』や映画『黒馬車の影』という先駆例がある。 史実と合わない都合の悪いところは「ゲームだから」で逃げてるしなあ。 私は別に「切り裂きジャックを操って、モリアーティ教授がアイリーン・アドラーを殺そうとするのを、ホームズのヒントをもとにコナンたちが救おうとする」ってストーリーに対しては特に腹は立たないんだけど、熱心なシャーロキアンは、『ヤング・シャーロック』並に怒り狂っちゃうんじゃないか。 うーん、でもつまんないって言っても、冷静じゃない状態だったからなあ。まあ、今回の感想は割り引いて見てください。
練習終わったしげと待ち合わせて、ベスト電器でダイヤルアップルータとかゆ〜のを購入。 よくはわからんが、しげ、今あるパソコン2台、これを同時にネットにつなげるようにしたいらしい。 練習から鴉丸嬢もついてきてたので、てっきりしんちゃんでも見たいのかと思ったが、ただ単に着いてきただけらしい。 う〜、一瞬期待したのになあ。しげも「別にアニメだからとか関係なくてしんちゃん面白いよ」と言うのだが、不得要領。絵柄がダメなのかなあ。どっちにしろ、無理強いしてまで見せたいなんて気はサラサラないので、そのままアクロス地下のMKで点心。 ここの中華はあっさりしてていい。鴉丸嬢、久しぶりに中華が食べられたと言って喜ぶ。なんでも其ノ他君とのデートでは、彼が中華嫌いなので、全然食べられないそうだ。 「杏仁豆腐の味が懐かしい」と言うので一口分けてもらったが、なるほど、昔食べたミルクプリンのような味。……杏仁豆腐って、こんなんだったっけ?
3人で三千円食い放題は安い。 鴉丸さんの分は奢りでいいとして、しげの分をもらおうと「千円出しな」と言ったら拒否される。 「なんでだよ、お前、食ったじゃないか」 「でも昨日は私が奢ったし」 「その前は俺、カニおごったろ?」 「あれは奢ってくれるって約束だったんだからノーカンだよ」 「奢りにノーカンもクソもあるかあ!」 隣りで鴉丸さんが笑っているがやはり我々夫婦の会話は人から見たら漫才にしか見えないのだろうか。
鴉丸嬢を家まで送るしげと一足先に別れて、帰宅。 テレビで『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! スペシャル』を見る。 前に半分だけ録画していた去年の『嵐を呼ぶモーレツ! スペシャル』の残りテープに録画したので、この一本は期せずして『オトナ帝国』&『戦国大合戦』のメイキングテープみたいな感じになった。 で、名場面集見て、また泣いてるし(^_^;)。処置なしだよなあ。
帰宅したしげ、嬉々としてルータとやらを設置し始めるが、どこをどうつないでいいか分らずに悪戦苦闘。 こちらもしげが何をどうしたいのかわからないので見ているしかない。そのうち眠くなって寝る。夜中にしげが溜息ついてベッドに潜りこんできたが、「どうだった?」と聞くと「できん」のヒトコト。 ……しげの戦争は明日も続きそうである。
2001年04月20日(金) ただいま治療中/『クラッシャージョウ』(細野不二彦)ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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