無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年06月08日(金) 子供の命は地球より軽い/映画『ハンニバル』

 わあ、またとんでもない事件が起こってやがる。
 大阪教育大教育学部付属池田小学校(手塚治虫の母校だそうな)にイカレた男が包丁持って乱入、23人を殺傷し、内、8人の児童を死に至らしめた。
 昼間、仕事してた時には全くそのニュース、聞かなかった。
 ウチの職場にゃテレビがないから当たり前なんだが、リアルタイムでワイドショー見てた人なんかは興奮したろうなあ。

 帰宅するとしげは留守。
 ああ、どこか買い物にでも出てるのかとフンフンと風呂に入る。
 玄関でガチャガチャと音がするので、おう、てっきりしげが帰ったかと、そのまま出てきたら。
 しげがドアを薄く開けて、シャイニングのように顔を覗かせて。

 「……人がいます」

 慌てて服を着に脱衣場に逆戻り。
 穂希嬢が遊びに来てたのであった。
 「8人も死んだんですか? 昼は4人って言ってたのに」
 穂希嬢、リアルタイムで見てたクチらしい。
 しげや穂希嬢が事件に無関心なのはしようがないんだが、私には今回の事件、どうにも気になって仕方がない。
 犯人は「何もかもイヤになった。死刑にしてほしい」とか動機についてはマトモっぽいことを言ってるらしいけど、さて、精神病院の入院歴もあり、今までの職場でも様々なトラブルを起こしてきた男の言葉にどれだけ真実味があるものだろうか。
 この手の事件が起きるたびに、両親は口を合わせて「病人は隔離しとけ!」
と叫んでたもんだったから、かれこれ30年以上もこの国は精神障碍者に対して何の対策も取ってこなかったってことになる。
 その「放置しといてもなんとかなるやろ、わしんとこの代でこないな厄介な事件、扱うてられまっか」という姿勢が腹立たしいのだ。

 で、鬱憤ばらしにFCOMEDYの「お笑い“裏”モノ探偵団」会議室に書きこみ。「オタアミ」にはよく書き込んでたけど、「“裏”モノ」には久しぶりだなあ。
 それじゃいつもの如く、Niftyを見られない人のために、以下にご紹介しときます。



>  これを契機に、この小学校では、しばらくは、警備員が導入されたり、集団登
> 校したりするんだろうな。無駄な対策だと思うけど。
>  たとえ無駄であっても何らかの対策を取らねば済まないのだから、組織とは面
> 倒くさいものだ。

 学校の場合、組織だから、というより、マスコミとPTAが怖いから、でしょう。
 で、もっと馬鹿馬鹿しいのは、形だけの対策しか取ってないのに、「そんなんで児童の安全が守れるか!」と誰も追及しないこと。
 子供の安全なんて学校もマスコミも本気で考えちゃいないのですね。

 まあ、本気でその「安全警備」とやらを考えるなら、大学紛争の頃のようなバカ高い塀を作るとか、正門に声紋認識機能付きのセキュリティシステムを取りつけるとか、学校のシステム自体を廃止して自宅でインターネット学習できるようにするとかしか方法がないんでしょうが、そんな予算がどこかから湧いて出るわけでもなし、第一、教師やPTAが犯人だったら何の対策にもなりゃしない。
 結局、今回もコメンテーターが「患者の長期隔離を」と主張してるのが人権に関わる問題はあれど妥当なとこかな、とも思うんですが、じゃあ、その施設をどこに作るかとなると、必ずと言っていいほど地域で反対運動が起こるんですよね。
 「そんな危険な施設をウチの町に作るな!」って。
 だから患者を飽和状態にして溢れさせてるのは自分たちなのに、危険性を云々するのは間違いだって―の。
 まずは学校の側に病院を建てましょう(^^)。



 抑えた表現してるなあ。
 「教師なんて無能な連中の集団になにができる」なんて言ってないし(^o^)。

 穂希嬢、ゲームソフトを借りて帰る。
 書き忘れてたが、今朝の体重は85.2キロであった。

 夜、しげを誘ってキャナルシティへ。スターバックスで新発売の「マンゴシトラス」を食べたあと(ああ、これでまた体重が元通りに……)、AMCで『ハンニバル』を見る。

 シリーズ3作目、と言っても、第1作の『刑事グラハム 凍りついた殺意』(ビデオタイトルは『レッド・ドラゴン レクター博士の沈黙』というミもフタもないもの)なんて、誰も知らないよな。
 レクター博士役はブライアン・コックス。痩せた、細長い顔で、アンソニー・ホプキンスのレクターのイメージが定着した今となっては、ただのバチモンにしか見えない。
 それを思うと、今回のジュリアン・ムーアのクラリス・スターリング、前作『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスターに負けず劣らずの熱演だ。「ジョディじゃなきゃやっぱダメ」ってファンはいるだろうが、少なくとも「どっちがいいか?」論争に発展するくらいのものにはなっている。
 ストーリーは前作までにあったミステリー的要素はほぼ消えて、レクター博士とそのかつての被害者メイスン・ヴァージャーとの対決に終始している。
 犯罪者とは言えレクター博士、こういう対決ものの図式の中では敵のほうが明らかに「悪」として行動するから、どうしたってヒーローになっちまう。クラリスとの関係は『春琴抄』以上の愛を描いたと言えなくもないし。
 でも本当にダークなキャラクターを際立たせるためには、やはりクラリスがレクターを追いかける関係をもっと前面に出したほうがよかったかも、とは思うのだ。ラスト近く、ヴァージャーに捉えられたレクターをクラリスが助け出すんだけど、この「助けられる」ことを期待してレクターめ、ワザととっつかまった嫌いがある。
 でもそうやって「女に甘える」ってえと、キャラとしては弱くなっちゃうんだなあ。結局自力じゃ逃げられないってことだし。
 でもその辺は瑕瑾だ。
 全体としては十分満足できる出来だったと言える。……ちょっとテンポがタルくて眠くなるけど(^_^;)。
 
 あともう一つ、特筆すべきは、このヴァージャー役がゲイリー・オールドマンだったってこと。おいおい、そんなん、事前情報にもなかったぞ。
 レクターとのかつての関係の中で顔の皮を剥ぎ取られた、という設定だけど、そのメイクが生々しくて、ラストのスタッフロール見るまでゲイリーだとは気付きもしなかった。もうこのゲイリーの狂気の演技が見られただけでもこの映画、損はない。
 残酷描写の一つと判断されたか、パンフじゃ一部のインタビューを除いてゲイリーの名前もスチールも一切カットされてるけど、せめてキャスト紹介の解説くらいはするべきじゃないのかなあ。

 帰宅した途端、しげが「お茶がない!」と騒ぎ出す。
 自分で冷蔵庫を探そうともしないで私を責めるのでまた口ゲンカ。で、結局またヒス起こしてごめんなさいとしげが謝って終わり。
 おかげで夜の散歩に行き損ねた。下らんことで喚きたてるそのクセ、ホントにどうにかしてほしいもんだ。
 草臥れてそのまま落ちるように眠る。



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