無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年03月20日(火) オタクの花道/映画『ギャラクシー・クエスト』/『Q.E.D.』9巻(加藤元浩)ほか

 うわあ、どうしちゃったんだろう、昼寝をして起きたら、午前中何してたか、きれいサッパリ忘れちまってるぞ。
 けけけ、健忘症だろうか。久しぶりの休日で脳のニューロンも緩みきっているのかなあ。……それともまさか、クスリの副作用か。……風邪薬だからね、念のため。
 えーっと、確かホームページ用の原稿を書いてたんだよなあ。でも起きてきた女房に邪魔されて、なかなか書き進めなかったのだ。それで私もふてくされて寝ちまったと……。
 そのあと女房も寝ていたということは、女房のやつ、やっぱりまる一日寝てばかりいやがったんだな。なんとか寝る前の女房との会話を思い出す。
 「『しりティー』どこ?」
 「なんだそりゃ」
 「『しりティ〜〜〜!』
 ……やっと分った。昨日、映画に行ったついでに買った『私立T女子学園』9巻のことだ。
 省略するのは構わんのだが、二度も三度も略語だけ繰り返したって分るものか。「シリシリ」言うから、○○○○、○○○○○ほしいのかと思ったぞ。変態。
 ……そう言いながらそのまますぐに落ちやがったんだよな、こいつ。私の眠気は薬のせいだろうが、こいつの場合は天然だ。最近女房はどんどん寝太りしているが、そのうち八畳敷きまで広がっちゃいそうだ。

 昼飯は何食ったかなあ。そうだ、糖尿病食の酢豚と豚肉とヒジキの和え物とふかひれスープを食ったのだった。
 何だか糖尿の癖にえらく贅沢そうに見えるメニューだが、この日記を見て「よく食ってるねえ、あんた」と皮肉を言ってくるバカがたまにいるのである。当然、量やカロリーは制限されとりますがな。糖尿とは言え、栄養は摂らねばならんのだが、そこを誤解する人間が多くて困るのである。

 ああ、なんとか朧気に午前中のことが思い出されてきたぞ。
 結局今日は、昨日買ったマンガ読んだり、パソコンで日記書いたリしてたんだな。

 マンガの感想は多過ぎるし、ざっとしか読んでないので、明日からチビチビまとめて書いていこう。今日はもっと書かねばならぬことがあるのである。
 ……そうである!
 ついに見たのだ!
 幽霊? UFO? モケーレ・ムペンペ?
 ちがーう! そんなベタなツッコミはいらん!(自分でしてるんじゃねえか)
 福岡に来るか来ないか、危ぶまれていた『ギャラクシー・クエスト』がついに来たのだ!
 今日はちゃんと女房と一緒に行ってきましたよ。第一、「『GQ』来るよ!」とはじめに情報教えてくれたのは女房なのだ。キャナルシティAMCだけの公開というのが業腹だけどな。
 でも実のところ不安だったのである。ヒューゴー賞受賞だの、辛口の批評家も絶賛してるだの、前評判がこれだけ高いと、私のようなヒネクレものなど、「意外とたいしたことないんじゃない?」と拒否反応を起こしてしまうからである。
 前半、確かにちょっと展開が強引だなあ、とは思った。
 ティム・アレン、そんなに簡単に宇宙に出ちゃっていいの? 『サボテンブラザーズ』のスティーブ・マーティンのように、見るからにネジが一つ切れてるキャラクターならともかく、ただのお調子者がいきなり星間戦争に参加しちゃうのはモチベーションが弱いぞ。これはティム・アレンの演技力不足に起因するのだろうなあ。……と初めは思ったのだ。
 でもそれには理由があったのだよなあ。
 後半、ティム・アレンの顔がどんどんウィリアム・シャトナーに似てくるのである。シャトナーファンは怒るかもしれんが、彼は役者としては大根である。『刑事コロンボ』に何度か犯人役で出ているが、特に『ルーサン警部の犯罪』は、本人が「役者」として登場していその大根ぶりを如何なく披露している(今回の映画もこのネタをある程度下敷きにしているとおぼしい)。
 更には『GQ』で描かれたようなキャスト間の確執、これも特に『スタトレ』ファンというほどでもない私の耳にもチラホラと入ってくるほどのウワサである。
 「ウィリアム・シャトナーならホントに宇宙に出ても戦争しまくるぞ」
 推測でものをいうが、きっと『スタトレ』ファンはそう思っているに違いない。あれは多分、リアルな設定なのである。
 しかし、後半からの展開は、オタクにとっては嬉し涙の連続であった。ネタバレを避けて詳しくは書かんが、「癒し」の嫌いな私が「癒された」のだ。これはまさしくオタクへの「福音」であろう。
 ……『エヴァ』じゃん(^_^;)。
 オタクはね、オタクはね、一生懸命ね、社会にね、順応しようとね、努力してるけどね、ホントはね、心のどこかでは思ってるんだよ、例えばね……。
 どこかにホントにゴジラいねえかなって。
 小ネタだけど、ドクター・ラザラスが最後まで「トカゲヘッドに賭けて」、「シェークスピア」を忘れなかったのもよかった(^^)。



 で、続きである。
 もちろん今日のこの機会に『ギャラクシークエスト』のパンフだのグッズだのを買ってやろうと思っていたのだが、給料日前で泣く泣く諦めたのであった(T_T)。
 近いうちに改めて映画を見に来ねばな。
 映画を見終わって、会場を出ようとしたら、女房が「エロさん来てるよ」と指を差す。
 なるほど、足早に会場を出ようと急がれている姿はそれらしい(私は視力が弱いので人の識別はもっぱら仕草に頼っている)。ロビーで待ち構えて(通せんぼするみたいだな)二言三言挨拶するが、「あのファンが○○○ところがいいですねえ」と、やはり感動されていたようでほっとする。
 お急ぎのようだったのであまり長話も出来なかったが、かと言って、どこかに流れていくには手持ちの金が三百円しかないのであった。……いや、前日また本買いこんじゃってたせいでね(^_^;)。
 エロさん、お誘いできずにすみませんでした。
 
 「それにしても、おまえ、よくエロさん来てるって分ったな」
 「エロさんの仕事、明日休みでしょ? ネットの日記を見てても映画観に行くの火曜の夜が多いし、多分来てると思って。それにエロさん、途中で席を移動したでしょ? そのとき、いつも着てる服が見えたから」
 「……よく、そんな、人の仕事の休みの日まで覚えてるもんだな」
 「……どこの店がいつ休みかとか、気になるものなの!」
 女房はてっきり浮世離れしたやつだと思い込んでいたのだが、結構、生活臭いやつだったようだ。
 それにしてもホームズとまではいかないにしても、立派な探偵の才能である。これでどうして女房にミステリーが書けんのかが不思議なのだ。

 マンガ、加藤元浩『Q.E.D.』9巻。
 本格ミステリのゲーム性を追及し、必ずしも殺人事件に拘っていない点、また、探偵があくまで狂言回しで事件の傍観者に過ぎない点などがこのシリーズの好ましいところである。
 今巻の2編は今まででも出色の出来。相変わらず線が硬質で、人間の微妙な表情を描けていない欠点はあるが、プロット、トリックともに『金田一少年』よりはずっとレベルが高い。
 「ケーニヒスベルクの橋」を渡る方法があるとは知らなかったなあ。今まで私が読んだクイズの本にはたいてい「オイラーが渡れないことを証明した」としか書いてなかったぞ。「理系ミステリ」に見せかけていながら、それが実は「心理トリック」をしかける伏線になっているあたり、相当な実力である。
 生意気なだけだなあと思っていたヒロインの水原可奈も、最近はだんだんかわいく見えてきた。出来れば10巻、20巻と続いて欲しいんだが。

 あだち充『いつも美空』3巻。
 3巻目になるというのに、作者がまだどういうことがやりたいのか分らない。ソフトボールマンガになるのか、演劇少女ものになるのか、超能力SF(^o^)になるのか。全然方向性が見えんぞ。
 ……と言うか、作者も迷走してるんじゃないかな。
 キャラクターの幅が狭い人だから、シチュエーションを一本ビシッとしたものにしないとシマラナイんだがな。でも展開が妙に川原泉の『笑う大天使(ミカエル)』に似てるんだがな〜。まさかああなってこうなってみたいな展開になるんじゃないだろうな〜。ちょっと心配だな〜。

 夏目義徳『トガリ』2巻。
 「現世での108日間で108の『罪』を集めてくること」という「シバリ」がまだ物語に緊張感をもたらすには至っていない。内容的には1巻の拡大再生産で、もう少し新しい展開が出てきてもいいように思う。

 蛭田達也『新コータローまかりとおる! 柔道編』27巻(完結)。
 長かった『コータロー』シリーズもついに終わり……じゃないんだよな。まだコータローの両親出て来てないし、次からは『最終章』だそうな。通巻するとやっぱり百巻越えるんだよな。……でもそれだけ続いていてもマンガのレベルが落ちてないからすごいもんだ。
 今回のオチもなかなか粋である。コータローが面白いのは、ギャグなようでいて意外と本格的な格闘マンガであるからってことや、キャラクターの魅力など色々挙げられようが、ひとえにコータローが「粋」だからだ。
 ……でもここまでキャラ増やしたら、最終章、収拾つかなくならんかなあ。

 CSでぼんやり長谷川一夫の『源氏物語』見ていたら、音楽がまたまた伊福部昭で、馬の早駆けのシーンに『怪獣大戦争』マーチがかかっていた。……伊福部音楽は神格化されつつあるが、あの人、こういういい加減な仕事も数多くしているのである。ちょっとどうかと思うけどねえ。
 



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