無責任賛歌
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朝方、『仮面ライダーアギト』を録画するので一旦起きるが、夕べの半徹夜が聞いていてすぐにダウンする。 『多分、猫たちにもある愛。』(仮題) 登場人物 女(元女優) 男(詐欺師) 桂 葉子(メイド) 遠藤 晋(映画監督) モトムラ(友梨香の召使) 館野友梨香(正興の娘) 館野正興(映画俳優・女の夫) 男が語り始める。 「……今からみんなに話すことは、ぼくの『犯罪』の顛末だ。犯人がどうしてここにこうしているかって? それはね……」 ある邸宅で女主人がビデオを見ている。街中の猫を撮ったとおぼしき映像。ただ坦々とたくさんの猫の映像が次々と映しだされる。 猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫。 女は喪服である。 そこへメイドの葉子がやってくるが、どこか悲しげな表情。 「正興さんの遺品、何かほしいものある?」 女が優しく葉子に語りかける。 「あの……奥様、私、やっぱりここにいちゃダメなんですか」 屋敷の主人が死に、莫大な財産が女のもとに転がり込んだ。女はもともと映画俳優だった主人の愛人だったが、つい先日籍を入れたばかりだったのだ。 女ももと女優だったが、夫の死後、一人暮らしが気楽だからとメイドの葉子を解雇することにしたのだった。 夫はまた、たくさんの猫を飼っていたが、女はその猫も全部、「処分」してしまっていた。 「迷い猫を飼ってる余裕はなくなったの。でもどこかに猫たちの集まる町はあるわ。そこに行きなさい」 女は萩原朔太郎の『猫町』を譬えに出した。葉子に残された時間は1ヶ月。 途方に暮れる葉子に冒頭の男が忍び寄り、客席に連れ出す(以下、二人の会話は全て客席で行われる)。 「どうだ葉子。決心はついたか?」 「……駄目。私に奥様は殺せない。それにあなた、そのあと私を捨てるでしょ?」 「ばれたか」 あっさり肯定して笑う男。数ヶ月前に男は女を殺して財産を横領する計画を葉子に持ちかけたのだった。しかし男は決して自分の素性は明かさなかった。 「ねえ、教えて、あなたは誰? なぜ奥様を殺そうとするの?」 「ノラ猫に教える名前はない」 女を殺す別の手を考える、と言って男は去る。 男は語る。 「女は猫か。女がいつだって男にだまされたがってるっていうことで言うなら、それはその通りだ。男をトリコにしているつもりで、餌を与えなければ野垂れ死にだ」 女主人が映画監督の遠藤と話をしている。 「いきなりこんな話をするのはなんだが、カムバックする気はないかね?」 猫をモチーフにした女の映画を撮りたいのだと語る監督。 女は丁重にことわる。残念そうに帰る監督。帰りしなに手紙が来ていたと手渡す監督。 葉子が覗きこむとそれは死んだはずの女の夫、正興の筆跡。 驚く葉子を見ながら平然と女は、 「悪戯ね」 と破いて暖炉に捨てる。 葉子の報告を聞いた男は笑みを浮べる。 「あなたのしたことなの?」 「いや、違う。でもこれは利用出来る」 それから屋敷には夫の「影」が現れ始めた。 「あの……今、お電話があったんですけど、男の人の声で、意味のとれない言葉を喋って……」 「……心当たりがあるのね?」 「でもまさか……旦那様の声だなんて……」 「……馬鹿馬鹿しい」 白い服を着た男の影が窓に映る。 「旦那様がそこに……」 その姿が猫に変わる。 「見間違いよ……」 日が経つにつれ、女の顔が蒼白になっていく。 「ねえ、あなた、夕べ奥様に電話かけた?」 「いや?」 「じゃあ、あの猫の声は……」 「ホンモノの幽霊だって? まさか。悪戯ものはほかにもいるさ」 猫の声は少しずつ増えて行く。 女は見えない猫の影に怯える。 「猫の首に鈴をつけるの……」 どこにもいない猫を追いかけて鈴を持って邸内をさ迷う女。 「もうひと押しだな」 葉子は男にもうやめるよう懇願するが、男は聞き入れない。男は女が夫を殺して財産を横領したのだと言う。信じようとしない葉子。 「……ねえ、でも、あんなにたくさんの猫、どうしたの?」 「録音さ。実際につれてきたわけじゃない」 「でも……私も見たのよ。庭に一面、ビッシリと、たくさんの猫」 女はうわ言を言うようになる。 「恨んでるのよ、あのひと。私を許さないって……」 ふと、男の「女が夫を殺した」という言葉を思い出す葉子。 「……奥様が、旦那様を殺したんですか?」 頷く女。 女は自分を愛人として住まわせておきながら家にいつかない夫を恨んでいたと言う。葉子は自首するよう女に勧めるが、女は首を横に振る。 「この家を離れるのはいや……。あの人の家だもの……」 男は語る。 「女はじきに参るはずだった。女は遺言で財産を葉子に残す。あとは僕の自由になる。そのはずだったんだ」 葉子は男にもう協力しない、と宣言する。 憤る男。 二人がもめているところへ偶然現れる女。 「あなた……あなたなのね!」 とっさに夫の振りをする男。 女は涙を流しながら男に抱きつく。 「愛してるわ……あなた!」 常軌を逸したらしい女には、男が夫に見えるらしい。男はなんとか女をなだめてこの場を去ろうとする。 自分を放っておいたことを恨み、懐からナイフを取り出す女。てっきり自分を殺そうとするのだとびびる男。ところが女はナイフを自分の胸に突き刺す。 しかし血は流れない。それは撮影用の小道具だった。 「そう……ここは天国なのね……だから、あたし、あなたと一緒にいられるのね。ずっと、ずっと……いつまでも……」 ようやく眠りにつく女。 男も女が哀れに思えてくるが、でも殺さなきゃならないとあくまで言い張る。 「なぜそこまで殺したいの? あなたは奥様の何?」 口篭り、立ち去る男。 男は語る。 「全く、どうなっちまったんだか……。 僕はへんだ。おかしくなっちまった……」 ある日、召使を連れた一人の少女がたずねてきて、女に出て行くように命じる。 「誰、あなた……」 「館野友梨香。館野正興の娘よ」 夫が死ぬ間際に女を籍に入れたのは、少女の保護監督者を必要としたからだった。この1ヶ月の女の行状で、監督者としての能力に欠けると裁判所に判断されたのだという。 愕然とする女。 少女は葉子に言う。 「あなたは残っていいわ。この女を追い出すのによくやってくれたようだから」 明日までに立ち去るよう女に言い残して、笑いながら去る少女。 あとに残された女と葉子。 女、ゆっくりと酒を飲み、なぜかほっとしたような表情。 「お辛くないんですか……思い出の家を手放しちゃうのに……」 「辛くなんかないわ。思い出なんかなかったもの。あんなに好きだったのに、あの人との思い出なんか何もなかったのよ。……だから、幽霊だっていい、あの人との思い出がほしかった」 「え、それじゃあ、あの幽霊さわぎは……」 「殆ど私。……あとはあなたたちよね?」 夫を殺したと言うのもウソ。男に抱きついた時も正常だった。全ては女の演技だったのだ。 しかし、庭にいた一面の猫。あれは二人のどちらでもなかった。 「どういうことでしょう?」 「悪戯ものがほかにもいたんでしょ。でももし……あれが夫だったら……」 夢見るように瞳を潤ませ、女優にカムバックすることを決意して、女は去る。 葉子に近寄る男。 男は女を殺す気がなくなったと話す。 「もともと殺す気なんてなかったんじゃないの? あなたもご主人の隠し子じゃないの?」 「たいした想像力だな。どうしてそう思った?」 「あの女の子と、クセが似てるのよ。ほら、その鼻に指をやるクセ」 「……僕はただの詐欺師さ」 幸せに、と言い残し、男は葉子のもとを去る。 男は語る。 「こうして僕の計画は失敗に終わった。 え? 女の名前はなんて言うのか分らないって? 女優に名前はないさ。詐欺師に本当の名前がないようにね。 それでも聞きたけりゃ教えてやるよ。彼女の名前はね……」 男の口から猫の鳴き声が漏れる。 (幕) ……女房にいわせリゃ「もったいぶってて事件がない」のだと。こないだまで「事件が起こるのはいやだ」といってたくせにな。 なんだかんだ言いながら、みんな以前にやった『徘徊する異人達』や『ディオゲネスの樽』の路線の方が好きなのだなあ。 もう、ウチは不条理劇一本で行くようにしていいのではないか。 映画に行くのを中止したので、帰りに回転寿司屋に寄って寿司を食う。 なぜか桜もちが流れていたので、こんなの20年以上食ってないなあと思って食べてみたら、中は全部アンコだった。 いや、だからこの手のものって食べつけてないから味の予測がつかないのよ。 食感は美味しかったが、こんなに甘いものだとはなあ。ああ、またこれでカロリー消費の計算をミスっちまった……。 去年の7月に録画しておいた月曜ドラマスペシャル『垂里冴子のお見合い事件帖』見る。 原作は山口雅也の『垂里冴子のお見合いと推理』。原作ののほほんとしたキャラクターを若村麻由美が好演しているが、脚本が雑なところがいくつかあって(うまいところもあるのだが)、その推理が冴えているという印象が今一つ感じられないのが難。うじきつよし演じる刑事の見合い話ノエピソードなんか、特に必然性がない上に尻切れトンボだったりするし。 でも私は隠れ若村麻由美ファンなので、まあまあ満足度高し。いや、実際この人、無名塾で鍛えられてるから表情や仕草を作るの抜群にうまいのよ。『らんま1/2』のカスミ姉さんを実写で演じさせたらこんな感じかな。 冴子の父親役の石田太郎さんが、カリオストロ伯爵の声で(今ならコロンボの声か)重厚に推理を語るところなんかはオタクには必見。こういう2時間ドラマって、声優さんが結構オイシイ役で出ること多いので(石田さんは声優専門じゃないけど)、チェックしていくとなかなか面白いのだ。 マンガ、小畑健『CYBORGじいちゃんG 21世紀版』2号(「巻」じゃないのだった。凝ってるなあ)、読む。 平成元年の連載ってことはもう12年前か。若い読者は完全に初見なんだろうな。ウチのメンバーも若いやつぁ『ランプランプ』からしか知らんし(と言いつつ、私もこないだまで存在自体忘れていたが)。 今読み返してもコマ割りがキツイ。ともかく読みにくいので、読み終わるのに一週間以上かかっちまった。このコマ割りのキツさは、師匠のにわのまこと譲りなんだろう。今は完全に脱却してるけど、『ヒカル』の初期までちょっと残ってた。 確かにね、後の『ヒカルの碁』の片鱗はあるよ。新人でこれだけデッサンがしっかりしてるのは立派だ。けど、絵の技術はあってもマンガ的な画力という点で言えば決して面白いとは言えないのだ。キャラクターの表情がパターン化されすぎていて魅力に欠ける。 ストーリー自体も、どのエピソードのアイデアもありきたりで、ジャンプマンガの悪い面があっちこっちに出てる。サイボーグ出すなら、やっぱりSF感覚は要るのよ。 岡田斗司夫さんが以前「BSマンガ夜話」で「ジャンプは懸命に『ドラえもん』のようなマンガを送り出そうとしては失敗している」と語ってたけど、その代表的失敗例が『まじかるタルルートくん』だとして、この『じいちゃん』もその中に含めることが出来るだろう。読者が憧れるセンス・オブ・ワンダーが決定的に欠けているのだ。 後半、やたらとじいちゃんばあちゃんのヤングバージョンが出るのが、いかにもテコ入れっぽくて痛々しい。 小ヒットで終わっちゃったのは仕方ないとしても、今の小畑さんの画力、構成力でリメイクしたら面白くなるんじゃないかな。 さてまた明日から仕事だ。もう遅いけど早寝しよう(^^)。
☆劇団メンバー日記リンク☆ 藤原敬之(ふじわら・けいし) |