無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年02月21日(水) 買い物ブギ/『ブギーポップは笑わない』第1巻(緒方剛志)ほか

 朝から雲行きが怪しい。天気予報では昼から雨。
 体調も一向によくなる気配もなく、咳もクシャミも一度出始めると止まらない。この状態で雨に濡れるのは自殺行為だと思って職場へはタクシーで行こうと思い、サイフの中を見る。
 するとどうしたことでしょう。まほうにでもかかってしまったのか、おさいふには「せんえんさつ」がいちまいしかありません。これはいったいどうしたことでしょう。きっと、いやらしいことにおかねをつかいこんでしまったのにちがいありません。よいこのみんなは、こんなだらしないおとなになってはいけませんよ。
 「おーい、女房(こんなふうに呼んだりゃしないが)、せんえん貸しちくれい」
 「なんで」
 「具合が悪いんでたくしーに乗って行きたい」
 「つまり、私はアンタのたくしー代のために、昼飯を何も食わずにガマンしてなきゃいけないってわけだね?」
 「そんなこと言ったって、とても自転車漕ぐエネルギーはないよ」
 「いつ返すん」
 「今晩には銀行に行くよ」
 女房はしぶしぶ、ムスメを女郎屋に売る時の親父のようにせつない顔で、せんえんを私に差し出すのであった。札の一枚一枚に名前をつけていたとしても、こいつなら有り得ると納得しちゃいそうだ。

 帰りはバスと地下鉄を乗り継ぎ。昼飯を食い損なっていたので、「ローソン」でかきあげニギリを買って食う。コンビニの三角ニギリも種類が増えたが、かきあげなんていかにも食いにくそうなものまで海苔に巻いて食べさせようってのは、お握り会社(ってそんなもんあるのか)の商魂を感じさせることではある。

 帰宅すると間もなく女房起きてくる。今までも昼寝ばかりしてるやつだったが、今や私が出かけるころに寝入って、帰宅する頃に目覚めるのが日常になってしまった。完全に私と生活が逆だなあ。

 女房がバイトに出かけるまで時間があるので、銀行を回って買い物。
 のどはまだ痛いが、しばらく外に出ていなかったので、いろいろと買いたいものが溜まっているのだ。まずは馴染みの某本屋に寄る。
 女房、今市子の『百鬼夜行抄』の新刊を探すがない。多分売りきれたのだ。東京での発売日が20日だから、九州くんだりじゃあ、まだ入荷すらされてないんじゃないかと思われる向きもあるかもしれないが、この本屋は、博多駅や天神の大手本屋ですら一日二日遅れて入荷なのが当たり前なのに、キッチリ発売日、時には発売日より早く本が出ているのである。
 なにしろ福岡じゃ少年ジャンプはどこでも火曜日発売なのに、この店だけは月曜から店頭に並んでいる。昔から何か特別なルートでもあるんじゃないかと疑っているのだが、未だにちゃんと聞いたことがない。でも聞かない方がいいかなという気もしている。こういう秘密めいたことには触れないでいた方がいい、というのも一つの知恵だと思うからである。
 『百鬼』は休日になったら博多駅や天神を回って探してみよう。『サイボーグじいちゃんG』の2巻もまだ手に入れてないし。

 通り道に新しく出来た、来週オープンする予定のカラオケ店、外観がレンガのお城風で、ちょっと見た感じがラブホテル。オープン記念で1時間タダだそうだが、何となく入るのが気恥ずかしい気がするのは私の自意識過剰だろうか。
 でも以前何かの工場だったような場所なので面積は広い。近所にセガカラ入れてるカラオケ屋がないので、あるといいなあ。

 文房具屋を回って、カシオのネームランドのラベルテープを買う。ビデオテープのラベルが作れるというものだが、凝り性(別名偏執狂)の私はラベルの背に題名だけでなく映画のスタッフ・キャスト、製作年からあらすじに至るまで書きこむので、一本作るのにえらく手間がかかるのである。私は自分のことをさして濃いオタクだとは思っていないのだが(面倒臭がりだし)、ちまちまラベルを作ったりしていると、ああ、やっぱりもしかして……と思ったりもするのである。

 そのあとダイエーで食料を買いこんで帰宅。時間は六時半で、女房はもう仕事に行かねばならない時間。
 「帰りは何時?」と聞くと、
 「いつもとおんなじ」と答える。
 いつもも何も、私ゃまだ何時から何時まで働くのかすら聞いてないぞ。隠して何か意味があるのか。こういう無意味な秘密主義のある女は、ミステリではたいてい真っ先に殺されるのである。つまり「殺しても痛痒を感じぬやつ」と一般的にみなされているということだ。
 世の女性諸君にも、ご自戒頂きたい。女房はもう手遅れだけど。

 緒方剛志『ブギーポップは笑わない』1巻。
 上遠野浩平『ブギーポップ』シリーズ第一作の、小説のイラストレーター自身による、ほぼ忠実なマンガ化である。「ほぼ」と言ったのは、表現媒体が違うゆえの簡略化、構成の変更を差すので、設定そのものに変更が加えられたわけではない。ただ、丹念に見ていくと、既にエコーズと出会ったばかりのブギーポップのマントの中に宇宙が見えていたり(^_^;)、緒方さんの趣味の設定は随所に出てくる。
 緒方さんのイラストの雰囲気は好きなんだが、マンガが本職というわけでもなさそうなので、どうもコマ割りがぎこちない。小説のセリフをマンガに移し替える作業が困難なのは解るが、コマごとのセリフの配分がうまくないので読みづらいのである。しかもキャラクターの描き分けがヘタ……(-_-;)。
 でもまあ、今回マンガ版を読んだことで、ブギーポップのキャラクターの中で一番好きなのが末真和子だと言うことに気づいたのは収穫だったか(^o^)。
 「『八つ墓村』のモデルになった事件は?」
 「津山三十人殺し」
 ……これをサッと答えられる女の子っていいよな。よく解らん人は松本清張の『ミステリーの系譜』を読もう。日本の土俗を知る上でもこれは貴重な事件なのであります。
 小説の新刊第十作も既に出ている由。題して『ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド』。こりゃなんとしても休日までにカラダ治して買いにいかにゃあ。

 で、他の買って読んだ本の感想は明日書くよん。




 椎名高志『MISTER ジパング』3巻。
 椎名さんのマンガ自体は嫌いではないのだが、キャラクターの作りこみ方が前作の『GS美神』の延長線上にあるものでしかなく、これじゃ戦国ものにした意味があまりないなあ、と思っていたが、どうやら今巻あたりからタイムパラドックスものに仕立て直すようで、少し面白くなってきた。
 でもこの人は基本的に短編作家だと思うので、『椎名百貨店』のような形式のものも月刊あたりで描いていってほしいと思うのである。

 天樹征丸・さとうふみや『金田一少年の事件簿Case7 金田一少年の決死行(上・下)』。
 第一期完結か。二期は要らんが。完結編のワリにストーリー、プロット、トリック全て陳腐。
 一応礼儀としてトリックその他は明かさんが、乱歩の少年ものの拙劣なパクリである。読んでて「まさか……で、……で、こんな展開になって、……が真犯人で、更に……するんじゃあるまいな」と思っていたら全て的中。で、これは良心的なミステリ作家なら、まず恥ずかしくてやれないネタである。
 この作品が現在のミステリブームの一翼を担ったことは事実なので、あまり悪口を言いたくはないのだが、マガジン編集部に、あるいは講談社内に。まともなミステリファンはいなかったのか。せめて「良心的な作品を作る」くらいの配慮を促す人間がいてくれたらここまでひどい作品にならずにすんだと思うんだが。

 女房が突然殺虫剤を天井に向かって吹きつけ始める。
 「なんだ、ゴキブリか?」
 虫らしきものは見えるが、目が悪いのでゴキブリかどうかはわからない。虫嫌いの女房は鬼のように殺虫剤を散布している。たちまち部屋が甘い匂いで満たされる。……人間の方が死ぬぞ(-_-;)。
 虫はしばらく天井の隅をカサカサ這っていたが、やがてポトッと落ちた。ちょうどパソコンの裏あたりだ。女房、虫がどこにいるか覗き込もうとするが暗くてよく見えないらしい。
 「そのうちどこかから出てくるだろ」
 そう言い放って私はのんびりパソコンに向かう。
 その途端、
 「ひいいいいいいいいい!!」
 思わず私も悲鳴をあげる。もちろん、女房の悲鳴に驚いてである。
 ……だから、その「楳図かずお悲鳴」は止めてくれってば。
 ちょうど女房が座った椅子の足元で小さなゴキブリ(間近でよく見ると2センチもない)が足をピクピクさせて死にかけていたのだ。私がティッシュでつぶして捨てたが、こんなもんの何が怖いのだ。
 こういう女房の弱虫ぷりっこはどうにも虫が好かない。……あ、シャレちゃった。



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