無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年02月10日(土) 「html」って、はいぱあ・てくのろじい・まきしまむ・ろぽ……じゃないよな/映画『狗神』ほか

 連休初日の朝ともなると、布団から頭を出すのも億劫なものである。
 ウダウダとしつつ、波津彬子『雨柳堂夢咄』3巻を読む。前巻から登場した贋作師・篁青二郎、準レギュラー化した途端、実質上の主役となっている。役柄は思ったとおり、コンドルのジョー。というか、ニヒルな山岡士郎ってとこか。で、やっぱり女たらし(^_^;)。こういう過去にトラウマがあって、やや自暴自棄なところもあるキャラって、少女漫画の定番みたいなものだけど、それだけに新味を出すのは却って難しい。もう一つプラスアルファがほしいところだな。

 シネ・リーブルで『顔』のリバイバル上映を1000円で興行しているので女房を誘うが、あまり興味がない模様。以前はちょっと見たいようなことを口にしていたのに、賞を取ったので逆に興味が失せたのだろうか。確かに、カンヌやベネチアでグランプリを取るような作品でも、一つ宣伝の仕方を間違えば、全くヒットしないのが日本の興行の恐ろしさである。大阪では大ヒットと伝えられる『顔』だが、福岡じゃ単館上映だったしなあ。
 仕方なく『顔』は諦めて、前売券を買っておいた『狗神』を夕方から見にいくことにする。

 朝っぱらから女房に電話。何事かと思ったら、「リンガーハット」から、バイトの面接に合格したとの連絡である。いつの間にかそんなことしとったのか。
 「ウチから5分のとこだから、遅刻してもすぐ行けるし」
 「夜9時からの勤務でどうやって遅刻するんだよ」
 「でもホントはコンビニに行きたかったんだ。食べ物屋って嫌いだし」
 「だったら面接受けなきゃいいじゃないかよ」
 「だって夜の方が時給がいいんだもん!」
 ……金の亡者が。
 でも却ってその時間帯のほうが夫婦のすれ違いもなくていいかもしれんな。

 『トッポ・ジージョ』『サイボーグクロちゃん』の再放送をのんびり見たあと、いよいよ女房からホームページの作り方を教わる。
 個人ホームページを立ち上げたい、と考えていたのは、P.P.Produceのホームページを開設して以来のことだったが、どうせ作るなら『都筑道夫ひとり雑誌』くらいの規模のものを作らねば意味はない、と思いつつ、そんなこと言ってたら、いつまで経ったって完成するわけないじゃないか、と、半ば諦めていたのだ。
 しかしよんどころない事情でもとのホームページから日記をこうやって独立させた以上、これだけを読んでいただくというのも何だか申し訳ない。コンテンツはおいおい増やすとして、できるだけ早いうちにホームページを立ち上げねば、という気になってきたのだ。
 女房の使っていた『HTML入門』をパラパラとめくる。
 既にこの「えいち・てぃー・えむ・える」という言葉が、私に挑戦状を叩きつけているようなものだ。「えいち」なんて「はいぱあ」の頭文字だぞ。私の頭では「はいぱあ」などという単語が使われるのはSFの世界以外には有り得ない。何が「HEAD」だ「BODY」だ。お前は『嵐を呼ぶ男』か。……もちろん、こんなアホなツッコミを入れたところで、私の理解が深まるわけでもなんでもないのである。
 「イラストは載っけられんの?」
 「できるけど重くなるよ」
 「それは開きにくくなるってこと? 何で?」
 「色が多いと遅くなるんだよ」
 「単色ならいいわけ? 例えば白黒とか」
 「白黒は二色」
 「グラデーションは? 薄墨は黒って認識しないの?」
 「黒と白の間には灰色があるでしょ。全部違う色なの」
 「じゃあ赤とか青とか使えないんだ」
 「使えるよ。赤・青・黒なんか簡単。色の種類が決まってるのは早いの」
 パソコン名人(そんな称号あるのか)が聞いたら何てアホな会話、と思うんだろうなあ。果たして本当に開設できるのであろうか。
 それにしても、いつもはうるさがりの女房が、今回に限って私の繰り出すアホな質問に対して、全く嫌がりもせず受け答えしている。むしろ喜んでいるくらいだ。日頃、私が無愛想で、女房に向かって積極的に語りかけたりしないために、私のほうから「ねえねえ」と声をかけてくるのが嬉しくてたまらないらしい。他愛無いもんだなあ。
 数時間かけて何とか基本概念らしきものは把握したつもりだが、実際に作成する段階になったら、女房に助けを求めることになるんだろうな。ともかくこの休日の間に、タイトルやら記事やら、思いつけるだけ考えないとなあ。

 昼過ぎ、自転車で天神東宝まで『弟切草』『狗神』の二本立てを見に行く。
 途中、a.m.p.m.に寄って、お握りとから揚げを買って行く。本当はマクドナルドに寄ろうかと思っていたのだが、女房が「そっちの道は人が込むから」とわざわざ遠回りさせたのだ。……天神で込まない道なんてねーよ。どこも変わらんのに遠回りするほどのことがあるかい。
 もともと女房は天神が嫌いである。ともかく人が多いというのが嫌いな原因らしい。私も新天町や警固付近の雑然とした雰囲気はどうにも好きになれんのだが、博多に比べてそれだけ天神が繁盛してるということである。やっかみと受け取られかねないので文句はあまり言わんほうがいいかな。
 しかし天神自体は繁盛していても、天神東宝はどうなんだろう。ここでしか『狗神』はやってないから仕方ないのだが、いつ来ても客はあまり多くない。ともかく椅子と音響が悪いのである。スピーカーなんか真正面に1個しか置いてないんじゃないかという気がしてくるし(よく聞くとかろうじてサラウンドらしいのだが)、AMCやユナイトとは雲泥の差である。もっとも、博多にはそれ以下の福岡東映というのがあるが。
 天神東宝にしろ福岡東映にしろ、改装して大した年月が経っているわけではない。それどころか天神東宝に至ってはAMCより後発なのである。にもかかわらず、この環境の悪さはどうしたわけだ。オープン当時、テレビの取材を受けたことがあるが、悪口言いまくって、当然一切画面には映らなかった。でも、そういう欠点に会場側もようやく気がついたのだろう、今度ようやく椅子を全面リニューアルするそうである。
 次に見にくるのは『回路』か『クレヨンしんちゃん』か。その時にはゆったりした椅子に身をゆだね、心地よいまどろみを味わいたいものだ……って寝ちゃ映画が見られんてば。

 さて、肝心の『弟切草』と『狗神』なんだが、これ、両方とも感想言うにはネタバラシせにゃならんのだよなあ。本格モノではないにしろ、ミステリーとしてのどんでん返しがないわけではないので、そこに触れるわけにはいかない。
 だから結論だけ言えば、『弟切草』は無理があるし、ちょっとおフザケが過ぎた感じ。『狗神』は結構感心した、というところか。最近話題になった某映画のネタと同様のトリックなんだが、『狗神』の方が遥かにうまい演出。もともとこのネタ、よくあるパターンなんで、そのパターンの話だと気づかせない工夫が必要なのだ。今回、その迷彩のし方、映像ならではのもので、なかなかうまい。
 ……何のこと書いてるんだかまるでわからんよなあ(^_^;)。しょうがない、ストーリー以外の感想だけ書いておこう。
 『弟切草』、女性陣が意外な熱演(と言ったら失礼か)。奥菜恵も松尾れい子も、表情がちゃんと作れている。minoruって、昔『犬神家の一族』に出てたころは内田稔って言ってたよなあ。何でわざわざ芸名をローマ字にしたかなあ。しかし今回も変な芝居してたなあ。この人はセリフを喋らせると全くダメな人なので、一言も言わない役だったのは正解。
 『狗神』、前作『死国』よりも遥かに映画としての完成度は高い。人間の情念がリアルに活写されているのである。部分的にやりすぎの演出もないではないが、森や山を単なる背景としてではなく、人間を包みこむ風土として映像にしている点がすばらしい。天海祐希、渡部篤郎の演技も堂に入ったもので、安心して見ていられる。脇役で『カネゴンの繭』の浜田寅彦さんが出ていたのが懐かしかった。もうこんなおじいちゃんになっちゃったんだなあ。

 帰りに「ベスト電器」の「LIMB」に寄って、DVD『シティボーイズライブ・ウルトラシオシオハイミナール」を求める。以前に買っていたのだが、友達にプレゼントしたので、買い直しなのである。でも実はカードのポイントが溜まっていたので値段はタダ。店員さんとはもうすっかり顔馴染、目が合った途端に挨拶されてしまう。
 「これ、初回発売分ですか? 多分、初回分にはビデオプレゼントの応募券が入ってると思うんですけど」
 「あ、大丈夫ですよ、こういうのはそうそう再販されませんから」
 ……そりゃそうかもしれんが、ファンの前でそんなこと言うなよう。

 食料その他を買い物して帰宅。女房は睡魔に勝てずたちまち布団で高いびき。
 一人で録画しておいた『幻のペンフレンド2001』第6回を見、続けてWOWOW『バットマン』『バットマンリターンズ』見る。
 やはりバットマンシリーズはこの1、2作に尽きる。ティム・バートンとマイケル・キートンが組んだときに醸し出すこのダークなムードが、原人顔ヴァル・キルマーと、ナンパ男ジョージ・クルーニーには逆立ちしたって出せない。

 さて、明日は久々にP.P.Produceの練習に顔を出す予定である。台本の打ち合わせ等もあるので、考えておいたもののシノプシスくらいは作らないといけない。半徹夜になりそうだが、休日はそれもまたよし。……日記ばかり書いてないで、それを先にしないとねえ。



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