あふりかくじらノート
あふりかくじら



 旅すること。

言えなかったけれど、というよりも言うべきではなかったし、言ったところで何も意味はないとわかっていて言わなかったけれど、わたしは正直言ってひねくれているんだろうか。
ともかく、ちょっとしたひと言で、ほんとうは深く傷ついたんだよ。

おっしゃるとおり、わたしは「すぐいなくなる」よ。
だから、皆の携帯番号すら知らないよ。そしていらないよ。

ああそう、じゃいいわ、って思ったんだ、ほんとうは。
わたしはすべてを切り捨てるから勝手にすればいいじゃないと思った。わたしはここに「所属してはいない」から。そして、わたしなどいなかったということで平穏に暮らせばいいじゃない、って。そして携帯で電話をかけあえばいいじゃない。

自分に優しさを向けてくれる人すら、わたしは憎らしくさえ思う。
この生活を捨てて、去ってしまいたい。
今の人間関係は、仲良くしているように見える人たちですら、わたしには苦しくて仕方がない。すべてを切り捨てたいと、冷酷な自分が何度も襲う。

早く去りたい。
お願いだからもう、優しくしないでほしい。
何もわかっていないのなら、その優しさはわたしをただ単に苦しめるだけだから。みんな、いいひとなのだから。だからわたしとは関係のないところで生きていってくれればいい。


今日は、『屋根の上のバイオリン弾き』のミュージカルを見ながら、泣いていたんだよ。ひとりのリビングで、寒い部屋を小さなヒーターで暖めながら、泣いていたんだよ。わからないかな。
もう、フジコ・ヘミングしかわたしの心は受け入れられないから。



旅をすることは、読書をすることと同じようにプライベートなもの。
そのことがどれだけ大切なことか。
誰かと一緒にする旅は、根本的に意味が違うんだよ。それは、そのひととの時間のためにする旅なのであって、わたしが感じている「場所」への感覚とはまったく違ったものなんだよ。

旅する目的も愉しみも違う人間が、わたしのプライベートな旅をシェアできるはずがない。でも、そのことをまったくわかっていない人間に、うまく説明なんてできない。だからごまかしている。だから、どうか余計なことをして自分の価値観でわたしの旅を乱さないでほしい。

どうしても侵されたくない領域がある。
それが、旅することなのだから。


だから、ブラワヨへはひとりで行くんだよ。
行きたい場所があるから。


「場所」なんだ。「人」ではないんだよ。


やっぱりわたしは、いつだってどこにも「属する」ことができないのだなぁ。必ず、こういう風になってしまう。そして、周りの優しさに傷つく。



こんなわがままなことばかり書いて、今日はもう無責任に眠る。
明日には、この頭が狂ってしまいそうなくらいの気持ちが晴れていればいいなと願う。


今日は許してね。

2007年06月20日(水)
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