2001年12月13日(木) |
ドラゴンクエスト4小説・10年の先にあるもの(中編) |
私にはそのころ、2つ年上の恋人がいた。 それまでも私は私なりに、人並みに人を好きになってきたつもりだったが、彼女との交際はそんな過去をすべて打ち消すほどのものだった。 いつしか私は、彼女の部屋にほぼ毎日のように入り浸っていた。 田舎から持ってきていたファミコンも、彼女のテレビにつながれていた。 彼女は明るく、芯の強い女性だった。 私は彼女を懸命に愛した。 彼女もそうしてくれた。 しかしどこかで彼女は、私からの強い愛情を迷惑に思っているように見えるときがあった。 彼女は、そういう自分を私に見せまいと振舞っている、ようにすら思えた。 私は、それでも彼女を強く愛した。そうすることしか浮かばなかったのだ。
彼女の部屋のテレビ画面に、異形となったピサロが映し出されたとき、彼女はかわいそう、とつぶやいた。 見ると、両目から涙がこぼれていた。 私は、なんて心の優しい女性なんだろう、とそのときは彼女に惚れ直した。 しかし、どこか釈然としないものを感じもした。
そのころの私にとって、ピサロの生き方、死に方は羨望の対象ですらあった。 愛するもののためならばこの身朽ち果てても良し、という彼に共鳴していたのかもしれない。 それを、彼女は哀れみの対象とした。 私は戸惑った。 男が命を賭して愛することを、哀しみの目で女が見るのだとしたら。 このことは私一人の胸の中にしまいこんだ。しまいこんだまま、彼女との別れが来た。
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