オミズの花道
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『 タオルを投げろ! 』
2005年03月24日(木)


モラルは無いが仁義は通す水上です。
おはようございます。


さて、先日の日記で『せっかくお店に来てくれるって言ったのに、向こうが折れてくれてるのに、何故水上は怒っているのか?何故自らゴングを打ち鳴らすのか?』そう思った方もおられるでしょう。

・・・・私にしてみれば、折れてなどいらんのです。

断って他所に行っていた方が、まだオッサンも救いようがあります。
そこで突っぱねていてくれれば『惜しい事をした』といつか私も思うかも知れません。

私の目の届く範囲で不様な行動をお客様が取るのはホステスとして許せないのです。
いやいやただ単に視界に入るなって感じ。あああ上手く言えません。だう。


長年この商売をしておりますとお客様にもパターンがある事に気が付きます。

こういう風に取っ掛りで『口座を変えろ』とか発言するお客様の場合、私がまず思う事は『ああ、このお客様とは長い付き合いは出来ないな。』と思う事です。

自分はどういう流れでこの店に来たか、誰に連れて来てもらったか、その人の顔を潰さない為にどう飲めばいいか、それを考えられない人は『縁』を大切に出来ない人であり、縁を大事にしない人とは所詮長いお付き合いが出来ないからです。


ホステスがお客様を値踏みする瞬間は、身なりや言動では無く、こういう立ち居振る舞いが見えた時に多いでしょう。

そういう意味で井上さんは私の中で使い捨て、のお客様でした。

こちら側がそう言ってしまうのは傲慢かも知れませんが、あちらはそれを覚悟の上でこういう発言や行動をなさっているのでしょうから、私が善意を持って彼に心を広く持つ必要なんてこれっぽっちも無い筈です。


かと言ってこのご時世、そうそう好き嫌いも出来ませんから、そういうお客様でもある程度の我慢はし、もてなしはキッチリと致します。

けれどもこの不景気をカサに、ラインを超える事を『当たり前』だとするならば、超える方もこちらに噛み付かれるのを覚悟の上でなさって欲しいものです。

ましてやその理由が女の子を口説き落としたい為のええ格好しいだとは、真っ当に対処するだけ馬鹿馬鹿しくなる。
落ちなきゃ来ないぞ、とか、口説かれなきゃどうだとか、経費使って言う事じゃございませんね。

女性社長が接待でホストクラブを使い、自分とヤラなきゃもう来ないぞ、ってホスト君に言ってるようなものでしょう?
そういう女性を男性諸氏はどう思いますかね?

ちょっと脱線してしまいましたが。


そういうイヤな行動をカマしてくるお客様に対しては、水上の場合、目には目をです。(行動がハムラビ法典)
汚かろうが他力本願であろうが、禁じ手封じ手でヘコまさないと気が済みませんな。


さて、当日。
人数は少々減ったものの、井上さんは9時くらいにご来店なさいました。
入り口でお迎えしたときは、いきり立って鼻の穴が膨らんでいるくらいお元気だったのですが、席に付こうとするなり、あるお顔を見つけてギックリ。

そう、新幹線で通って下さる社長が、どでんと奥の上座席に座っているのです。
この方、井上さんの会社の社長と長年の友人であり、この日井上さんが連れてきたメンバー殆どと顔馴染み。
皆様大学が同じで何名様かは同期。しかも同じ業界。
社長のお連れ様は業界でも名だたる、井上さんの会社の上得意ばかり。

社長のお顔を見つけて、井上さんのお連れ様皆様は乾杯もそこそこに、社長とお連れ様に挨拶しに行かれます。
彼等にとってこんなチャンスは滅多に無いですからね。



私がいらっしゃいませ、と井上さんに挨拶しに行くとやはり憮然とした顔。
そりゃ面白くないでしょうなあ。うくく。


井上・『お前、わざとやな?』

水上・『あら、偶然ですよ。社長はあんなに遠いところに住んでおられるのに。
    私如きが来てって行っても来て頂ける訳無いじゃないですか。
    今日はたまたま上海からの帰りなんです。
    和食を付き合ってくれと仰るので、滑り込みで料亭に行って来ました。
    美味しかったわあ♪』


井上・『お前、あの社長の女やろ。』

水上・『(出た出た。頭の悪いカマし方やのう、と思いつつ。)
    違いますよ〜どちらかと言うと私は社長の奥様の隠密と言いますかね、
    うちのお父さんが悪い事せんように見張っといてね。
    ・・・・と奥様に言われてまして。
    お蔭様で、うちならお墨付きなのでバンバン飲んで戴いております。』


と、ここで社長がシャンパンを抜き、井上さんの席に出すように言って来た。
この方は節約家で有名で、普段はこういう事はなさらないのだが、いざという席にはこういう風に惜しみなく散財する。
昔からの金持ちならではのお金の使い方だ。


(↓以下太文字が水上の嫌味)

水上・『社長はねえ、お見事なくらい飲み方の綺麗な方なんですよ。
    こうやって皆様にお会いできたお祝いのシャンパンを抜いて、
    誰あろう私に華を持たせてくれるんです。
    (華っちゅうのはこういう風に持たせるんじゃ、オヤジ。)
    
    男の飲み方、と申しましょうかね・・・・口説きは口説き、酒は酒です。
    社長も男ですから最初は私に色気をお持ちだったかも知れませんが、
    最初のお付き合いから今の今まで、
    それを盾にとることは一度も御座いませんでしたね。』

私がそう言い終わるか終わらないかのうちに、社長が通りがかり私と井上さんに声をかけてきた。
井上さんは立ち上がり、社長に握手を求めへコヘコしている。
私に二重三重の嫌味を言われた後だ。さぞかしムカムカしているだろう。



井上・『社長、今度また飲みに行きましょう、席を設けますので。』

社長・『ああ、ありがとう。だけど新地ならここにして下さいね。
    もう僕はこの子(水上のことです。)の所じゃないと寛げなくてねぇ。』

井上・『はあ・・・・。そうですか・・・・。(大人気ないオヤジだ。)』


社長が離れるとオヤジはブツブツ言い出す。
『この間電話したときは新地では飲まない、と言っていたのに。』と。

そうなのだ。
姑息にもこのオヤジは水上が本当にこの社長の贔屓なのかどうか確かめる為に、来店してすぐ社長に電話していた。

社長は馬鹿では無いし人を雇うのが仕事なのだから、私の性格も井上さんの性格も重々把握されている。
つまり、当事者の私や井上さんよりもこの社長の方が、私達二人の性格が合わない事を読んでおられたのだろう、井上さんの電話を受けてすぐ、社長は私に電話をくれた(笑)。


社長の『大丈夫ですか?』の問いに、『大丈夫ですよ〜私も大人ですから。』と答えておいたが、社長とはもう長い付き合いだから何となく解っていたのだろう。
何かあったらすぐ電話しなさいよ、と言われ、その時は何も言わずに電話を切った。

遠まわしに人の足元を掬おうとするオッサンのやり方にムカムカしながら。


水上・『社長くらいの方になると祇園や銀座や新地の何処で飲んでいるとか、
    そういう無用心さは持たないようにされてるんでしょうね。

    男性は元から自分の行動範囲を把握されるのは嫌でしょうし、
    飲み屋での事なんて、
    男の世界から言わすと取るに足らない事ですしね。
    たかが飲み屋、と昔から申しますでしょう。

一呼吸置いて更に私は続ける。

『ですけどねえ、同じように昔からされど飲み屋と申しまして。

 特に北新地は“新地村”と言われるほど狭い世界ですから、
 自然とあちこちの企業の殿方の噂は聞こえて来ますねぇ。
 繋げて行くと業界が繋がったり奇妙な事は日常茶飯事です。
 
 自分でも時にホステスという仕事が恐ろしくなる時があります。
 男性を貶めようとすればいつでも出来てしまいますからね。
 自分の良心で日々それを押さえてるだけですわ。
 
 貶める為に流した物、その噂の真実がどうであれ、
 男の世界では足を引っ張る為の立派な材料に、
 仕立て上げられますでしょう?
 
 そういうお話って、皆様結構お好きですしねえ。
 怖いですねぇ♪(←思いっきり無邪気に言ってみる)』
    

井上さんは『はあ・・・・。』とため息をついて、張り無い声で一言こう言った。

『怖いなあ、なおちゃん・・・・ワシの変な話は流さんとってな?』



カンカンカンカン!
タオルが投げられたと共に、爽快に鳴り響くゴング!!



オマエ→なおちゃんに呼び名まで変わったぞ!
もう完全にギブであ〜る!



すかさず、水上は答える。

『まあまあ、何をおっしゃいますやら。
 井上様のような素晴らしいお客様に、そんな事と〜っても出来ませんわ。
 そんな発想、ノミの頭ほども御座いません。(まだ言うか、このオンナは。)』


井上さんは、帰り際に現金で何十万もの札束で支払いを済ませながら、私に何かと話しかける。
今度は社長と一緒に来るね、と・・・・無理に作り笑いしながら。



あれから一ヶ月。
今では彼も大人しく来て、大人しく帰る。
と〜っても紳士的に好意的に飲んで下さっている。
女の子にも無理な口説きは無いし、嫌味も言わない。回数も減らない。


勿論、水上はまだまだ彼を信用していない。

ゆえにあと5年は現金払いで通す。
ううん、きっと最後まで現金払いで通す。
執行猶予など与えません。実刑実刑。


あ、確か社長から聞いたけれど、井上さんは今年か来年で定年だったな。
5年も必要ないか。つまんな〜い。

・・・・それでも現金払い。
ず〜っとずぅ〜〜〜〜っと現金払い。


相手がタオルをリングに投げても、ギブアップしても、ドクターストップがかかっても、担架で運ばれても、

タオルをキチンと畳んでお持ち帰りして、洗濯して綺麗にして、リングの掃除をして観客席を片付け、会場のライトを落すまでは許さない。




ああ、私のお客様になるって可哀想・・・・。





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