ケイケイの映画日記
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衝撃でした。あまり話題になっていませんが、超問題作です。ちょっと宣伝できないかな。廃用身とは、脳梗塞などの後遺症で、リハビリをしても回復が見込めなくなった新体位の部位の事を指します。私も初めて知りました。初老の身の上としては、「プラン75」より、もっと身近に恐怖を感じて、考え込んでしまいました。監督は吉田光希。
漆原(染谷将太)が院長を務める異人坂クリニック。高齢者のデイケアも併設しています。漆原は回復の見込みのない身体の部位を切断する画期的な医療行為を発案。手術を行った患者が前向きに人生を捉え始めた事が広まり、雑誌編集者の矢倉(北村有起哉)が、漆原と患者二方に取材を始めます。Aプランと名付けられ、希望者が増える中、矢倉は漆原に本を書くように提案。しかし程なくAプランを中傷する記事が、別の雑誌で掲載され、ある事件が勃発します。
私もクリニックの受付時代、高齢者の患者さんが足が痛い、腰が痛い。痛い箇所を切ってしまいたい程だ、との訴えは良く聞きました。そしてリハビリは気休め、その時だけましなだけ、とも。漆原は、身体の一部を切断する事で、体重が減り、他の箇所への荷重が減る事を伝えます。そして介護をする方も、体重が減る事により負担が減る。これが主な切断理由です。
提案はすれども、「よく考えて」と、私は無理を言わさぬ様子ではなかったと思います。身体の欠損は痛ましいですが、どんどん経過が良くなる多数の患者の術後。介護する方も楽になり、良い事ずくめです。矢倉ならずも、私もこれは画期的な治療法なのかと、思いそうになりました。
しかし途中から、これは切断したことにより、脳がハイの状態になっているのかと、思い始めます。自分自身で、洗脳していたのかも知れません。もう一度夫と会話がしたい妻が、Aプランを漆原に希望しますが、願いはかなわず、漆原を詰ります。そんな時、患者の岩上(六平直政)がセンセーショナルな事件を起こします。
漆原の盲点は、介護する側の辛さが、一様だと思い込んでいた事。実際は、それまでの家族の関係性が介護にも大きく左右され、家族ごとの辛さがあります。そして、介護される側とする側では、力関係があること。それが頭から抜けていたのでしょう。それは確かに尊大とは言えるでしょう。患者の気持ちは抜きで、医学的な長所にしか、目がいかなかったのですから。でも世間で言われるサイコパスでは、決してなかったと思います。
しかし、小学校の同級生の発言から、漆原は自分の行為を元々サイコパスだったからだと思い込む。医療従事者の負担を減らしたいことも、Aプランの発案でした。当初は喜んでいた従事者も、掌を返す。こんなものだな。
矢倉の母も父の介護を受けており、施設に入所前です。再々訪れているのでしょう、父を想う善き息子です。でも彼も、慮るのは父ばかりで、母の事は頭を霞める程度。目の前の繰り広げられる光景は、介護される人の、圧倒的な弱者ぶりです。岩上の事件も、多分現役時代は妻子を顧みず、モラハラ気味であったろう岩上も、現在は弱者です。
身体の切断という突飛な医療行為を見せたのは、その事を浮き彫りにしたかったのだと思いました。精神のおかしくなった漆原は、自分の頭が「廃用身」であると言う。そんな訳はありません。廃用身など、「無い」という事でしょうか。
ラスト、様々なものを背負う家族たちの姿が映されます。それは罪なのか、安息なのか、絆なのか。親は四人とも見送った私ですが、もし夫を介護する日が来たら、善き言葉を背負うようになりたいと思います。
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