ケイケイの映画日記
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2026年05月17日(日) 「ひつじ探偵団」




素晴らしい!古くは「ベイブ」、最近では「パディントン」等、動物が人間の言葉を話し、擬人化されて活躍するお話が大好きです。この作品も、お子様向けのファミリー映画の様相ですが、中身は本格的ミステリーの中に、人生哲学が込められている秀作です。監督はカイル・バルダ。

イギリスの片田舎で、羊飼いをしているジョージ(ヒュー・ジャックマン)。偏屈ですが、羊たちには優しい飼い主で、羊たち相手に、毎日寝る前にミステリー小説の読み聞かせをしています。しかし、そのジョージが、ある日死体となって発見されます。大ショックの羊たちは、ジョージから受け継いだミステリー小説のセオリーに従って、愛するご主人を殺した犯人を捜します。

「ベイブ」の頃は、子豚ちゃんたちがすぐ大きくなってしまい、数匹の子豚を使って、ベイブ役を凌いだと聞きました。お陰様で今はCGも格段に進歩。羊たちの描き分けも解り易く、個性もしっかり頭に入ります。

あれこれ羊たちが推理していく中、羊たちの人間模様ならぬ、羊模様が描かれますが、それがとても考えさせられる。羊たちは、嫌な事は、すぐに忘れられる力が備わっています。「忘れる」事は、人間では加齢を伴う場合、私は神の恩寵だと思っている。だって哀しい事・恥ずかしい事・悔しい事、全部覚えていたら、辛くて生きていけないでしょう?でも若いうちはどうかな?これからの長い人生に、何でも忘れてしまっては、学ぶ事が出来ません。

羊は死なないと思っていた事もしかり。子供羊が、「死ぬだなんて。だったら何で生まれてきたの?何のために生きているの?」と、哲学者のような事を仰る。本当だね。何のために生まれて来たかは解らないけど、私は生まれたからには「幸せ」になりたいと思って、今まで生きてきたよ。そしてそれなりの手応えを感じる今は、他者にお役に立ちたいと思っています。

聡明なリリーは、いつも抜群の推理力で、難関のミステリー小説の犯人を探し当てます。羊イチ賢いと、仲間内で称される彼女ですが、それは井の中の蛙だっただけ。それを教えるのが、はぐれ者羊のセバスチャン。

群れを嫌い、一匹羊の彼には「冬生まれの羊」という、忌み嫌われる出生がありました。仲間からも人間からも阻害されるセバスチャンを、分け隔てなく愛したジョージ。どんなに放浪しても、彼がジョージの元に戻ってくるのは、ジョージに確かな信頼と愛情を感じていたからです。

冬生まれの子羊がもう一匹。他の子供羊たちが、偏見を持たず「遊ぼう!」と誘うのに、それを引き裂く大人羊たち。結局最後まで「冬生まれの羊」の何が忌み嫌われるのか、描かれませんでした。それは「理由が無い」からでしょう。羊は春に生まれるのが多いので、偶々冬に生まれた、その珍しさから嫌われていただけです。人間社会に照らし合わせても、有る事だなぁと感じりました。

セバスチャンと三月生まれの子羊が、それぞれ別のシーンで、高台から仲間の群れを見下ろします。それぞれに寄り添うリリーは、同じ言葉を二匹にかけます。「いい眺めね。でもちょっと寂しい」。セバスチャンのシーンで、私は「孤高」という言葉が浮かびました。佇まいの気高さが、そう感じさせました。

しかし三月生まれの子羊の同じシーンを観て、セバスチャンは成りたくて孤高になった訳ではないのだと、ハッとしました。自分を守るため、ジョージに報いるため、孤高にならざる負えなかったのでしょうね。二度目の「いい眺めね、でもちょっと寂しい」の、リリーの言葉は、この子をセバスチャンにしてはいけない、そんな決意を感じました。

謎解きはコメディタッチで、楽しいです。人間は素地より素養が大事なんだと、つくづく思いました。元羊飼いだった教会の神父さんの「懺悔」は、許してあげたくなります。リリーは何故かジョージの奥さんのような雰囲気を、醸し出していましたが、ホテルの女主人ベス(ホン・チヤウ)の言葉で、さもありなん。いやいやCGと人間で、この状況を想起させる演出に脱帽です。

警官のティム(ニコラス・ブラウン)が、犬塚弘にちょっと似ていて、彼が好きだった私はちょっと嬉しい。が!アホでもう!でも途中から羊たちに助けられ、どんどん事件を解明していく様子に、ホッとしました。大ラスの謎解きは、中々秀逸ですよ。

お子たちより、大人にド薦めです。大阪はヒットしているようで、吹替含めてまだ三回上映なので、どうぞお見逃しなく。私は吹替で観たので、配信になったら、字幕で観るのを楽しみにしています。






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