ケイケイの映画日記
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2024年06月02日(日) |
「青春デンデケデケデケ」 |
全くの初見。素直にとても面白かったです。初期から中期の時の大林宜彦は、相性が良かったんだなぁと思い出しました。私にとってロック=ハードロックなので、そっちが題材だと思っていたら、ロックンロールなんですね。聞き覚えのある名曲がたくさん出てきて、今やロックンロールの数々も、古典になってきたんだなと、感慨深いです。
1960年代中頃の四国・香川県の観音寺市。ロックンロールに熱い思いを傾ける、四人の高校生たちの三年間を描いています。
林泰文が衝撃を受けるベンチャーズですが、私が子供の頃は渚ゆう子がカバーした、「京都の恋」が大ヒットしていて、作曲がベンチャーズでした。それで私もベンチャーズを認識。テレビやラジオで定期的に流れるベンチャーズの曲は、まだ小学生だった私も、充分カッコいいと感じました。この辺り、ほんと感性。多感な時に「カッコいい・・・」と衝撃を受ける音楽で、好きなカテゴリー決まるよね。私の場合は、グランドファンクレイルロードの「アメリカンバンド」でした。
当然ですが、演じる四人がとても可愛い。浅野忠信が出ていたのは知らなかったので、あまりの紅顔の美少年っぷりにびっくり。四人の中では、お寺の息子で、親の手伝いでお経も上げるし財テクもするし、恋の指南はするしの、大森嘉之の存在感が出色。人徳も人望もある生臭坊主になりそうでした。林泰文の平凡な素直さも良かったし、永堀剛敏のワンテンポ遅れた、人の良いおっとりした様子も、とても可愛い。それぞれキャラが立っています。
彼らが何の不安もなく、熱い青春を傾けてバンド活動出来るのは、それぞれの家庭に事情があっても、彼らを子供として弟として、守っていたからです。改めて、養育される環境の大切さを痛感しました。水島かおりと尾美としのりは、自分の好きなものより、当時の長女・長男としての、役割を真っ当するため、自分の好きなものを引っ込めたんだよね。それを当然としている事に、少しほろ苦く思います。
構成がとても良く、笑ったり泣いたり、とても素直に心が付いて行き、自分の青春時代も思い出させてくれます。
大人では、岸辺一徳の彼らの教師が印象的です。この時代には戦争に行った先生もいるんだと改めて感じ入ります。道ならぬ片想いを秘めていたのは、既婚者ですが、戦争が挟んだため、本当の恋愛の経験がなかったのかも?と感じました。彼らの上の兄弟ともども、家に縛られ、自由がなかった時代なのだとも思います。今の世の中の自由な価値観は、そうした人たちの想いが積み上がり、アップデートしてきたのでしょうね。
アルバイトで思わぬ世の中の洗礼を受けたのも、彼らがこれから世に出る心の準備ですね。家族の応援している風景との対比が、物語っていました。三年間の宴の終了に、四人が作った絆を映して、四人の新たな旅立ちを祝福しているように感じ、思わずホロホロ涙が出ました。
子供が子供らしく、その時代を真っ当させる事に、大人は責任を持たねばと、改めて痛感した作品です。
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