ケイケイの映画日記
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2018年02月14日(水) 「悪女/AKUJO」




続け様に観る映画全て感激してしまい、少しクールダウンしようと選んだこの作品。しかし、また興奮したり涙ぐんでしまうと言う(笑)。韓国では珍しい女性のアクション映画。ヒロインのスクヒを演じるキム・オクビンが、スタント使わず、激しいアクションの90%を演じているのも、驚愕です。監督はチョン・ギョンビル。

新婚の夫ジュンサン(シン・ハギュン)を相手組織に殺され、たった一人で乗り込み皆殺しにしたスクヒ(キム・オクビン)。彼女は幼い頃父親を殺され、マフィアのジュンサンに、殺人マシーンとして育てられたのです。警察に拘留されたスクヒでしたが、警察の上層部に目が留まり、国家が運営する暗殺者養成施設に送り込まれます。初めは反抗していたスクヒでしたが、女性上司のクォン(キム・ソヒョン)から妊娠を告げられ、お腹の子ため、生きようと決意。やがて訓練が終わり、10年間指令を真っ当出来たら、開放される約束を胸に、娘ウネと共に娑婆に出るスクヒ。しかし彼女を待ち受けていたものは、壮絶な裏切りでした。

冒頭、ゲームで敵を倒すが如くのアングルで、バッタバッタ大流血付きで、相手がなぎ倒されます。微かに聞こえる息遣いで、殺し屋は女性とわかる。拳銃・ドス・身体全てを使った技で、大虐殺を終えるスクヒ。ここまで7〜8分。ワンカットではないでしょうが、そう見える長回しで、とにかくすさまじいの一言。

ここから、「レオン」「二キータ」を彷彿させる展開に。ジャン・レノ、チェッキー・カリョ、ジャン・ユーグ・アングラードが演じた役をミックスし、それぞれ上司のクォン、ジュンサン(シン・ハギュン)、ヒョンス(ソンジュン)に振り分けられます。既視感のある展開ながら、なかなか面白く、冷徹さや怒り・喜び・愛情・不安など、揺れ動く登場人物の情感を掘り下げるのが上手く、見応えがあります。

難点は過去の回想の挿入の仕方が悪く、あちこち散らかってしまう事。役者の演技である程度カバーは出来ていました。

アクションは全て斬新で秀逸。上記の殺戮場面も、長細いマンションの廊下の撮り方が上手かったですが、バスの中のアクションも同様です。どうして撮ったのかしら?その他印象深いのは、バイクでの長ドス振り回しながらのチェイス。いやもう、凄かったです。これはスタントだと思ったのですが、オクビンが演じているとか。運命の宿敵を追うのに、フロントガラスを割り、ボンネットにまたがり後ろ手で彼女が運転する場面があるのですが、ここはスクヒの怨念と情念を感じて、すごく好きなシーンです。

父親を殺されると言う悲劇から、幸せな子供時代を奪われたスクヒ。純粋に幸せを求める彼女を、愛は素通りして行きます。裏切りに次ぐ裏切りに、傷心する彼女は、嘆き悲しむのではなく、修羅の道を突き進む方を選ぶのです。愛する人に寄り添い、子供を育み家庭を持ちたいと願うのは、古典的な女性の願望ですが、私は決して否定されるものではないと思います。同性としてスクヒの哀しみに、涙を禁じえませんでした。

オクビンは、久しぶりに観ました。以前は可愛かったのに、すっかり大人になって。元々テコンドーなどの有段者で、身体能力が高く、アクションも志願して、銃や剣さばき等習得したとか。演技・アクションとも渾身で、お見事の一言。今後彼女の出演作には、注目したいです。

シン・ハギュンは、渋くなっていて、びっくりしました。こんなに素敵だったら、そりゃ忘れられないわな(笑)。スクヒの女心を浮き彫りにするには、うって付けのキャストでした。夫役ソンジュンの愛ある脇の甘さ、女上司役ソヒョンの、冷徹さに見え隠れする親心も、良かったです。

構成はアクション6割ドラマ4割くらいかな?五分五分かも?両方が噛み合い、お互いを盛り上げます。これもお薦めです。




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