ケイケイの映画日記
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2017年11月23日(木) |
「ローガン・ラッキー」 |
映画からは引退を表明していた、スティーブン・ソダーバーグの復帰作。陽気なクライム作品くらいに思って見に行ったら、意外や私には結構な社会派作品に感じました。のんびりお間抜けな登場人物たちに見え隠れする、アメリカの地方都市の縮図を見た思いです。
足が不自由な事で仕事を失ったジミー・ローガン(チャニング・テイタム)。それが元で、仕事も家庭も失っています。しかし彼にはある企みが。それがはバージニア州で一大イベントであるカーレース場のサーキットの金庫から、現金を強奪すると言うもの。戦争で片腕を失ったバーテンダーの弟クライド(アダム・ドライバー)と、美容師でカーマニアの妹メリー(ライリー・キーオ)も巻き込みますが、この計画に不可欠な人物が。それは現在服役中の名うての爆破屋のジョー(ダニエル・クレイグ)。仕事の間だけ脱獄させて、終われば刑務所に返す算段です。さて、この作戦は成功するのか?
予告編は、本編をかなり脚色した構成でしたが、クスクス笑えるのは確か。のんび〜り、とぼけた雰囲気でお話は進みます。先祖代々から不運に苦しむローガン家。クライドはその呪縛に捕らわれていますが、その様子が、気の毒なんだけど、また笑いを誘います。
しかし、あんまり賢そうじゃない彼らなんですが、綿密に練られた計画は、案外まとも。サーキット場へ侵入してからの展開は、コメディタッチですが、ハラハラとさせられ、楽しめます。
しかし、ユーモアに包まれた薄紙をはがしていくと、アメリカの地方都市の、閉塞感や哀しみが見える。真面目に働いていたジミーが解雇になったのは、足が悪いため社会保険料が上がるから。会社的口減らしです。兄弟の昔話を聞くと、昔からお金には縁がなかったようで、高校のとき花形のフットボール選手であったジミーが、一家の不運を一発逆転させるはずが、足の怪我で、それもおじゃん。クライドが派兵を志願したのも、一家の閉塞感を打破しようとしたため。美人で働き者のメリーとて、かつての兄の嫁(ケイティ・ホームズ)の、裕福そうな現夫から、セクハラまがいの誘いを受ける。決してビッチな子じゃないのに。貧困の連鎖は、日本だけじゃないようです。
ジョーもバカ丸出しの弟二人がいますが、この儲け話に、弟たちも一口かませろと言う。お金を渡したいのです。ジョーも決して賢そうには見えなかったのに、いざ爆弾作りの段になると、いやいや凄くクレバー。ジミーしてもジョーにしても、この賢い頭を真っ当に使う場所がないのですね。正確に言うと、与えられないのでしょう。街自体が洗練とは程遠く、取り残されている感じで、きっと街全体が貧しいのでしょう。
ちっさな時のダコタ・ファニングを、思い切りお茶目にしたような、ジミーの娘が可愛い。普段は母と暮らしていますが、大好きな父との面会を楽しみにしています。その娘が、父が大好きな歌だからと、子供のミスコン大会で「カントリー・ロード」を歌うのです。私は号泣。この泥臭く教養のない街で、一生懸命もがく父を、幼い娘が肯定し、応援しているように感じたから。
この後で、え〜!それはもったいない!と言う展開が待っていますが、まぁあの「カントリー・ロード」の後じゃなぁと、納得していましたが、そこからまた、爽快なドンデン返しがあるので、お楽しみに。私はヒラリー・スワンク演じる捜査官が、話しのわかる人である事を、祈っています。
貧しさって、悪い事ばかりなんだろうか?ジミーやジョーたちの兄弟仲の良さは、貧しさから、片寄せあって生きてきたからなんじゃないかな?我が家も決して裕福ではなく、狭い家で顔を突き合わせて暮らしてきましたが、息子三人大人になっても仲がよく、三人のライングループもあるらしい。私の育て方の良さもありましょうが(笑)、「貧困」はダメだけど、「ビンボー」は家族の結束を生むのかも?と思いました。
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