ケイケイの映画日記
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久々のマイケル・ナイト・シャマランの作品。別に見限っていたわけじゃなく、他の見たい作品と重なるのが続き、パスしていました(←それを見限ると言う)。今回ジェームズ・マカヴォイが多重人格を演じると言うので、観ることに。ある意味笑えるシーンもあるだろうからと、結構邪な期待を抱いて観に行きましたが、これがあなた、案外まとも(笑)。ツッコミも相変わらずあるんですが、それでも伏線めいた台詞は拾ってあるし、切ない場面もあり、結構面白く観ました。
ケイシー(アニヤ・テイラー=ジョイ)、クレア、マルシアの三人の女子高生は、クレアの誕生日パーティーの帰り、見ず知らずの男ケビン(ジェームズ・マカヴォイ)に、拉致監禁されてしまう。密室に監禁された三人は、やがてケビンが様々な人格を持つ多重人格者だと気づきます。三人は何とかこの状況から抜け出そうと必死ですが、上手くいきません。ケビンの主治医フレッチャー(ベティ・バックリー)は、ケビンの異常に気づき、何とか状況を聞きだそうとします。そうこうしている内に、ケビンは、新たな人格を作り始めていました。
まずはマカヴォイの芸達者ぶりをご覧あれ。多重人格者として主に出てくるのは、4〜5人くらい。女性あり、9歳の男子ありで、これがメイクも衣装も替えずに演じ、ちゃんと演じ分けられている事に、まず感心。ただし設定では23人だそうで、古代の人物もちょろっと出てきますが、まぁ余計だったかな?シンプルにこの5人くらいの設定にしといた方が、納得し易い気がします。
監禁場所が薄暗く、コンクリート打ちっぱなしで、少し外に出ても薄汚れた地下室で、不安感を煽ります。マカヴォイもスキンヘッドで不気味で得体が知れず、不安感倍増。女の子たちの脱出劇もサスペンス的味付けが上手く、ドキッとする場面の繰り返しで、これも上々です。
でも最後でまた脱力するんだろうなぁと思っていましたが、これが意外とそうでもない。フレッチャー医師が、「別の人格が出る時は、体も変調し、血糖値が上がる。超能力者の原型は、多重人格」的な解説をするので、妄執的な思い込みと言うか、一種の火事場の馬鹿的な作用で、これも有りかと、私は納得出来ました。
如何にもアメリカンな明るい二人と違い、ケイシーだけが悲観的で暗い影がある。この子の辛い過去を挿入して、ケビンの重い精神疾患とをリンクさせる手法も、切ないです。
理由はわかっても、精神疾患に至るまでや、拉致の動機の掘り下げが甘く、素通りするのが残念。これでは重い精神病患者は、やっぱりずっと入院させなきゃと、思われるのを危惧してしまいます。
ちゃんと通院していたはずなのに、何故こんなに重篤になるまで、わからなかったのかも、疑問。ケイシーはフレッチャーの残した伝家の宝刀を抜きますが、何でフレッチャー自身は抜かなかったのか?そこも疑問。ただフレッチャーは良き医師で、自分の責任として何とか真相を突き詰めようとする誠実さは、好印象でした。
潤んだ瞳に強い意志を滲ませたアニヤが、強い印象を残します。顔立ちは、人気モデルのケンダル・ジェンナーに似ていて、番茶も出花的愛嬌は一切なく、終始冷静でクレバーなケイシーを好演しています。ラスト近くの、婦人警官に対しての一層強い眼差しに、ケイシーのこれからの人生が好転される希望を感じました。
オーラスにシャマランと深い縁のある大物の登場あり。上手くいけば、続編作りたいのかな?凡作っちゃ凡作ですが、好感が持てる箇所が随所にあり、私は好きな作品です。
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