ケイケイの映画日記
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春の韓国映画祭り最終作。主演のチョン・ウソンは、私が韓国人俳優で唯一萌系に好きな人。ガンちゃんとか、キム・ユンソクとか、この作品にも出ているファン・ジョンミンも大好きなのですが、それは俳優として。オンナですもの、やっぱりスクリーン観て、はぁ〜と目をハートにしたいじゃないですか!そういいながら、ヒット作の「私の頭の中の消しゴム」や「デイジー」など、男前度120%、作品値は限りなくマイナスに近い作品が多く(さっき感想を読み返したら、あまりに罵詈雑言で、あえてリンクは自粛す)、なんだかなぁでしたが、汚れ役とも言える作品で、初めて私的にクリーンヒットなんでから、世の中皮肉なもんすな。監督はキム・ソンス。
末期がんの妻の医療費に苦慮している刑事のドギョン(チョン・ウソン)。妻の腹違いの兄で、汚職まみれのアンナム市長・パク・ソンベの手下として、数々の証拠を抹消していく事に手を染め、医療費を工面しています。もうすぐ刑事を辞職し、市長の傍らで仕事を始めると言う頃、ある事件の揉み消しを嗅ぎつけた刑事を、ドギョンが過って殺してしまった事から、歯車が狂い始めます。
パク・チャヌクの映画かと思いました(笑)。変態度は薄かったので、作家性は違いますが。スクリーンは夥しい流血とバイオレンスの、出血大サービス。 そして、全員が悪。邦画でも「全員悪者」のキャッチコピーの「アウトレイジ」がありますが、あちらは悪者が全員極道もんなので、納得出来ますが、こちらは、刑事・市長・検察と、全員正義の味方の公務員なのですから、あな恐ろしや。しかしこの作品は、社会派として告発しているのではなく、あくまで法を使って人を描いており、それが成功しています。
検察はドギョンの秘密を掴み、ほとんど恫喝のようにして、ソンベの証拠固めをしろと迫ります。二重スパイのようなもんです。引くも地獄、進むも地獄のドギョンの葛藤を映しながら、ソンベのカリスマ性と恐怖、検察の正義の名を語る暴力や出世欲などが、血みどろの地獄絵図のように描かれます。
これがもう、すごく面白い!まずドギョンの本心がどこにあるのか、なかなか掴めません。今考えると、ドギョン自身が定まらなかったのでしょう。それが観客に伝わっていたのですね。ソンベが義兄である事は、信頼関係に影響があるのか?本国では、この辺りがミスリードされた要素であると思います。ドギョンは、妻の病を得るまでも、それなりに悪党だったと思います。それが妻の病気発覚後、贖罪の気持ちが沸いたのでは?その弱味が、ソンベが付け入る隙となったと思います。最後までドギョンが必死で画策した事は、妻より先に死ねない、だったんだろうと、鑑賞後思いました。
こういう思いを抱かせるだけで、ウソンをキャスティングして正解だったと思います(笑)。今回、殴られ蹴られ、顔面血だらけ、鬼の形相を見せるカーチェイス場面など、男前台無しで熱演しており、とっても素敵!世は満足じゃ(笑)。
ジョンミンがウソンに勝る勢いを見せての好演です。この人、引き出しが潤沢にあるんですね。硬骨漢・熱血漢・やくざの純情・家族を一心に思う家長など、何でもござれで好演しており、今回初めて悪役を見ましたが、演説場面でのカリスマ性と、底知れぬ恐怖を伴う威圧感など、圧巻の演技。そうかと思えば、お尻丸出ししたり、プロレスか?と思う座興も瞬時に受け取り、愛嬌もたっぷり。うんうん、この人、何を演じても愛嬌があるところが、ガンちゃんに通じる良さです。日本での公開作を見れば、韓国は今、この人の時代なのかと思います。
その他、愚鈍で善良だった 「コクソン」とは、打って変わって、狡猾で出世のためなら何でもする、クァク・ドウォンの検事も、良かったです。「正義」の御旗の元、やくざと変わらぬこんな人は、どこの国でも入そうです。他はドギョンの後輩刑事を演じたチュ・ジフンも好演でしたが、鬼気迫るウソン、余裕綽々のジョンミンやドウォンに圧倒されて、少々陰が薄くて、可愛そうでした。
筋立ても面白いですが、カーチェイス、ラストの攻防戦など、血みどろで華やかな趣向も凝らされており、娯楽作として一級品として、楽しめる作品でした。
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