ケイケイの映画日記
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2014年10月12日(日) 「フランシス・ハ」




転職してはや一か月弱(てか、そんなもんか?もう三か月くらい経った気分)。今度の職場は土日祝休みで平日は午後3時半まで。転職する時、まず私が条件にするのは、職種よりも収入と休みの日。何故なら映画を観たいから!今回は平日5日間午後3時までの仕事を探していましたが、時間だけちょびっと妥協しました。そんなに違いはなかろうと思っていたのが、これが大誤算。4時台の上映作品は、あんまりないのです(3時半はバンバンある)。

週半ばにタイムテーブルが出る度、しおしおしていたところ、この作品がシネマートで5:15からと出た!。上映は90分足らずだし、心斎橋だし家には7時半までに着けるだろうと、前日に二日分の夕食の用意をして、いざ当日。時間があるから、仕事帰りに難波から歩いて、ウィンドーショッピングしながら、シネマートでチケット買うと、まだ4:20。やる事ないので、本を読みながら隣のマクドで時間潰して(すぐ下のスタバより安いので)。そう、主婦としての貴重な夕方の時間を潰して!これで映画がダメならどうするんだ、ヲレ?的気分満タンで臨んだ「フランシス・ハ」は、いっぱい笑って最後に泣いて、今年の私のベスト10に入りそうなくらい素敵な作品でした。監督はノア・バームバック。脚本は主演のグレタ・ガーヴィクの共同です。現在二人はお付き合いしているんだとか。

27歳のモダン・ダンサーを志してるフランシス(グレタ・ガーヴィク)。恋人はいるけれど、今は大学からの親友でルームメイトのソフィ(ミッキー・サムナー)と過ごす日々が断然楽しい毎日です。恋人から同棲を望まれるも、ソフィとの暮らしを選んだフランシスは、彼とは別れます。しかしソフィは、憧れの地に部屋が空いたのを機に、フランシスとの同居を解消。同年代が次々落ち着いていく中、取り残されてしまったフランシスですが。

冒頭、楽しげにふざけ合うフランシスとソフィーの様子に、学生時代を過ぎてこんな事をするのは男子の特権だと思っていたので、女子でもあるんだ、へぇ〜と新しい発見をしました。でもこの宴が続くと思っていたのは、フランシスだけで、ソフィーは次を見据えていたんですね。

編集者と言う手堅い仕事を得ているソフィーとは対照的に、夢だけはいっぱいあるけど、実情は根無し草的なフランシスは、一人では家賃を払っていけず転居。ここからがまぁ、こいつバッカじゃないの?的選択を次々していくフランシスに、おぃ、ちょっと待て!と、人生の先輩として助言したくなる私。でも見続けていくと、このみっともなくて、ドジで不器用なフランシスが大好きになっていく。それは彼女に、自分を見ているような気になっていくからでした。

二人で見ていたつもりの夢が、実は自分だけだったり、頑張ってきた事が報われなかったり、周囲から知らず知らずに取り残されていく孤独感。その時の悲しかった気持ちを思い出し、それでも夢を追いかけたいフランシスを応援したくなるのです。そして何が偉いって、男に逃げない!劇中老け顔とか、非モテ女子と揶揄されるフランシスですが、実際はクラシックな顔立ちの美女。あぁそれなのに、いいムードのなると自分からぶち壊す。もうちょっと器用にすり抜ければいいものの、次はもうないな的断り方。ユーモラスに男性への媚のなさを表現していると思いました。

しかし親友ソフィーに対しては、一転して女の嫉妬や意地が満開(笑)。この辺とてもリアルに感じて、わかるなぁと一層フランシスが大好きに。彼女的にはソフィーに裏切られた気分なのでしょうけど、それは違う。フランシスは「私たちは熟年のレズビアンのようなもんね」と、自分たちを表現します。セックス抜きの愛情で結ばれていると言う事でしょう。

でも愛は愛でも、友情は友愛、男性とは恋愛。彼女たちは同性に恋するレズビアンではないはず。友情とは、人生を共に歩むのではなく、それは恋愛相手。親友は別々の道を歩みながら、別の場所で支え合い心の拠り所にしていくもの。だと私は思います。その違いをソフィーは理解していて、フランシスは混同していた。一流の編集者になる夢を捨てて、恋人を支える事を選んだソフィーも、ダンサーの夢を追いかけ続けるフランシスも、27歳の女性として、私は両方ありだと思います。

行き当たりばったり無計画で、手を差し伸べる人にも、夢の為には嘘ついて丁重にお断りするフランシス。時間もお金も無駄使いじゃん、とハラハラします。でもどっこい生きている。無鉄砲なのに何とか衣食住を得ていく姿は、逞しささえ感じ、自分の人生を逃げずに向かっていく彼女に、元気を貰えます。

紆余曲折を経て、彼女が選んだ道を見せてくれる終盤では涙が止まりませんでした。孤独を感じる時はあっても、孤独ではないフランシス。思えば傷心を癒してくれる親兄弟がいて、彼女を心配してくれる恩師、友人たち、そしてソフィー。若い人には人生上手くいかなくて、どうしようもなく孤独な時は、この作品を思い出して欲しいです。

多分ね、大人になったんじゃなくて、成長したんだと思うのです。そう思いたい。だってフランシスが大人になったら、面白くないもん(笑)。私もこの歳になっても、自分が大人かと問われれば自信がありません。多分また夕食二日分作って映画観るだろうし(笑)。バッカだなぁ・・と思うけど、私はそんな自分がちょっぴり好きです。世界中のフランシスも、自分を好きでいて欲しい。最後に明かされる「フランシス・ハ」のタイトルの意味に、まだまだ発展途上の彼女の未来が、前途洋洋である事を祈らずにはいられませんでした。27歳は若いんだよ。デヴィッド・ボウイの「モダン・ラブ」の流れる中、馳走するフランシスと一緒に駆け出したくなる作品です。


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