ケイケイの映画日記
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2014年01月26日(日) |
「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」 |
記憶を上書きされた男の謎を追うミステリーのはずが、思いの外アクション映画でした。それは一見文系男子風(立派な中年ですが)西島秀俊が、ほぼスタントなし熱演してくれたお陰。噂に聞いていた肉体美も披露。全編出ずっぱりで、妻を思う新婚の夫を演じるので、彼のファンなら充分楽しめます。言い換えれば、そうでない人には大雑把なミステリーです。私は西島秀俊好きだけど、残念ながら後者の方です。監督はキム・ソンス。
美術系の会社員石神武人(西島秀俊)は、自分の誕生日帰宅した家で、新婚の妻(中村ゆり)の遺体を発見します。動転する彼に、何と死んだはずの妻から電話が。その直後、刑事を名乗る男たちが彼を拉致しようとしますが、寸でのところで脱出した石神は、ひょんな事から知り合った韓国人の女性記者ジウォン(キム・ヒョジン)に救いを求めます。職業柄、石神に興味を持った彼女は、彼と行動を共にし、謎を究明していきます。
前半はテンポが良いし、ジウォンが彼に興味を抱くのもよくわかるし、必死で混濁する自分の記憶から、真実をつかもうとする石神にも、結構手に汗握ります。でもなぁ、テレビに医師として伊武雅刀が映った瞬間、これは真相ショボそうだの予感。悪い予感って当たるのよね。
あちこち散りばめた伏線は、終盤に畳み掛けるように拾っていくので、うまく回収しているようですが、拾いきれていない物もあり。女性記者が都合よく何故石神の居所がわかるのか?ジウォンは記者のはずが、何故警察手帳のような物を見せ、「逮捕出来るのよ」なんて言うの?石神の家を行ったり来たりするのですが、元の住所は半年前から別の住人が住んでいるのに、次に行った時は、やっぱり石神の住居であるのは何故?大学の研究所に、あんなに簡単に深夜侵入出来るもんなのか?この辺、きっと原作は上手く処理している気がします。
石神の二人の妻は、中村ゆりは心情がよく伝わりますが、真木ようこは、あれで「愛している」と言われても。謎の拾い方が強引で辻褄合わせに必死で、情感や憐憫と言った感情をすっ飛ばすのです。お蔭で余韻に浸ったり感傷的になる前に、こちらも必死で記憶を手繰り寄せ、パズルを合わせるのに必死になります。なんか呆気ないんだなぁ。
真相も二段階あって、両方ショボい。いや二番目はショボくないはずなんだけど、時間不足で描き甲斐のあるはずのプロットが、何だか再現フィルムのようなのです。真相はショボくても、そこに至る原因の方は壮大です。でもこれもよくわからん(笑)。いやわからなくてもいいんですよ、こんなもん。だから、もっとハッタリかまして欲しかったかと。
そして最大の謎は、何故韓国人学者の設定を持ってきたのか?です(日韓合作だからと言うのは、なし!)。こんなの日本人学者としても、全然大丈夫なストーリー展開です。明確に韓国人でなければならない理由を描いて欲しかったです。
しかし記憶が混濁し、苦悶し葛藤する石神の様子は、充分感情移入出来ました。それはジウォンの語る、「記憶は失っても、感情は残る」と言う、今まで数々の映画で描かれていた事を、西島秀俊が繊細に表現してくれていたから。素敵な彼のお蔭で、ぶちぶち文句垂れながらも、最後まで観る事が出来ました。キム・ヒョジンは日本語が上手くて感心したけど、華がなくなり地味になりましたね。記者だから地味ではありません。インテリジェンスが欠けていたと思います。雰囲気に好感が持てたのは救い。中村ゆりは、健気な風情が出ていて、好演でした。
面白くなりそうな題材なのに、凡作に終わって少々残念。でも西島秀俊が素敵だったから、まぁいいかぁ。と思える作品。
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