ケイケイの映画日記
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2013年10月18日(金) 「死霊館」




1971年、アメリカで実際に悪魔に取り憑かれた家族を、悪魔研究科の夫妻が悪魔祓いしたお話の実話が元の作品。新鮮味はないながら、オーソドックスなオカルトホラーの作りで、上品に仕上がっています。それにも増して魅力的だったのが、夫婦や家族の絆の描き方。アメリカはホラーを使って、家庭を描くのが本当に上手いです。これもとても気に入りました。監督はジェームズ・ワン。

1971年のアメリカ。ロジャー(ロン・リヴィングストン)とキャロリン(リリ・テイラー)のペイン夫妻は、五人の娘を連れて、湖畔の郊外の一軒家に引っ越します。古びてはいますが、ちょっとした邸宅の新しい我が家に、心躍らせる家族ですが、住み始めた直後から不吉な事が起こり、怯えてしまう子供達。キャロリンは心霊研究家のエド(パトリック・ウィルソン)とロレイン(ヴェラ・ファーミガ)のウォーレン夫妻に、家の調査を頼みます。

序盤は思い過ごしかも?と家族たちに思わせながら、不吉で禍々しい家の様子を映し、心霊現象に向かうまでのテンポが良いです。大家族は都会から湖畔の一軒家に越してきたのでしょう。とても大きな家で、広々とはしていますが、作りは古びており、壁には染みやひび割れだらけ。近隣には家はなく、これは怖いよなぁと思います。夜中トイレには絶対一人で行けなさそう家です。私ならまずは引っ越さないけど、妻から夫へ「無理したでしょう?」との労いの言葉に、この夫婦が大きな家で、如何に伸び伸び子供を育てたかったかと言う思いを感じるのです。

その大願成就の家に悪魔が取り付いているとしたら?これは実話。愛らしい娘地を見たら、どんなに両親は無念だったろうと、生々しく同情してしまいます。この設定、ものすごく小市民の心を掴むのだなぁ。

エドは唯一キリスト教協会から認められた悪魔研究家で、ロレインには透視能力があります。悪魔憑きの現場に妻を連れて行くことは、妻の心身をすり減らし命を削る事。だからエドは自分一人で行くと言いますが、「あなたと私は、このため(人々を悪魔から救うため)結ばれた」と言うロレインは、譲りません。人生や隣人たちに対する真摯な思いを聞くと、彼女が敬虔なキリスト教徒であるのだなと、感じ取ります。素直に尊いと思いました。

ウォーレン夫妻にも一人娘がおり、交友の中で、ペイン夫妻の心からの家族への愛に強く共感し、必ずこの家族を救うと誓うウォーレン夫妻。この夫婦は似ているのです。とにかく両方に頑張って!と、声援を送りたくなります。ケレン味一切無く、親が子供を思う気持ち、夫婦がお互いを必要として愛し合う様子をストレートに観客の訴え、とても清々しい気持ちになりました。だから本当に悪魔が邪悪で憎たらしくなるのよね。

ヴェラ・ファーミガはミステリアスな美貌を持ちながら、温かい女性らしい豊かさを感じさせる人で、この役柄にぴったり。初対面じにペイン家の子供たちに向ける笑顔や、家族写真の楽しさを透視し微笑む姿は、愛に溢れていました。リリ・テイラーは優しく家庭的な反面、「私には家族が全て」と言い切る母親の強さを感じさせて、彼女にも強く共感しました。とにかく遠いはずの設定が、彼女たちのお蔭で、とても身近に自分に置き換えられました。

絶体絶命の時、キャロリンが叫んだ言葉は「ロジャー!助けて!」でした。当たり前かもしれないけど、感動したなぁ。ウォーレン夫妻や警官や助手ではなく、その場で一番無力かも知れない夫を、妻は頼ったわけですね。これこそ夫婦の絆じゃありませんか。この手の場面はアメリカのホラー映画には多く、家族の危険にはお父さんがいるから、大丈夫!と、とてもシンプルに妻子が夫・父親に全幅の信頼を寄せている描写がたくさんあります。「インシディアス」しかり、「ドリームハウス」しかり、私の好きな「モーテル」にも、そういう部分はありました。そういうの、ジャパニーズホラーでは全然観ないな。あるのかな?やっぱ伊右衛門がスタンダードのお国柄だから?その点は残念に思います。

絵画や鬼ごっこ、後ろに映る子供の人影など心霊現象の数々は、オーソドックスながら、私は程ほどには怖かったです。一度キャッ!となった場面もあり。刃物もなく殺人もなく内蔵も出てこない作りは、往年のオカルト映画を思い起こさせ、拡張高さも感じました。子供たちが皆可愛く良い子だったのも、ポイント高し。家族の絆がしっかりしていれば、悪魔もお化けも怖くない!と言うお話。


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