ケイケイの映画日記
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2013年02月25日(月) 「王になった男」




朝鮮王朝15代王・光海君に、実は影武者がいたとするフィクション。久々に夫と観ましたが、「実話なんやろ?」と誤解する始末(笑)。絢爛たる王朝の様子は描くも、内容は少し薄口。しかし万人向けの娯楽作として、この「軽み」を私は買います。監督はチュ・チャンミン。

暴君として名高い光海君(イ・ビョンホン)。反対勢力の者からの刺客に、常に疑心暗鬼になっていました。側近のホ・ギュン(リュ・スンリョン)に命じて、自分とそっくりの外見を持つ者を探し出し、影武者に仕立てろと銘じます。白羽の矢が止まったのが、腐敗した政治を宴席で風刺していた道化のソハン(ビョンホン二役)。折しも王が病に倒れ、ソハンの影武者生活が始まります。

オープニングで、華麗に当時の様子を再現。お付きの女中たちに身支度をさせせ、「王」になる光海君を流麗に描いています。これ以降も衣装や食卓、調度品など、宮廷内の様子など、上品で絢爛たる李王朝の様式が描かかれており、これは見所の一つ。でも私が一番びっくりしたのは、王は厠が使用できなかった事。何と専用のおまるのような物があって、女中たちの面前で用を足すのです。ひえぇぇぇ!出るものも出ませんって。そういえば「上様」だって、閨には監視役がすぐ横に控えてましたもんね。権力者は大変だ。

冷酷で尊大、しかし威厳のある王に比べて、優しくフレンドリー、しかし庶民的過ぎるソハン。影武者の事を知るのは、宮廷医とホ・ギュンと世話係りのチョ内官のみ。お里の知れるソハンを巧み庇う様子に一味あり。ユーモラスで場内の笑いを誘う場面あり、両側近の人柄を映す描写ありと、面白く観られます。

下賎な身の上のソハンですが、誰にも知られてはいけないと、ホ・ギュンまでもが敬語を使い出すと、段々王としての風格が備わってきます。これはソハンの持っている技量もあるでしょうが、周囲がお膳立てをすれば、その椅子に座った者は、それなりの器になるもんだと感じました。

ビョンホンは典型的な二枚目ではないけれど、アクションにキレがあり、滑舌と声が良く、画像などよりずっとスクリーン映えする人です。今回自慢の体はちょっとだけで、サービス脱ぎもアクションもなかったけれど、瓜二つと言う設定の中、表情と話し方だけで、王とソハンをくっきり描き分け、私はとても上手かったと思います。

権力争い、王妃や毒味係りの少女との顛末など、予定調和にお話は進みますが、退屈はありません。何故かと言うと、「人情」のくすぐり方が上手いから。精力旺盛な王だと言う割には、直接のベッドシーンを省いたのは、幅広い年齢層に観られる作品に仕上げたかったからと感じました。歴史ものでヒットを狙うには、良い作りだと思います。

いつ剣術シーンになるんだろう?と心待ちにしていたので、それが観られたときは、軽くカタルシスがあり。でも個人的には、もう一箇所あれば良かったと思います。

王の「情が映ったか?」のセリフに答えるような、ラストのホ・ギュンの仕草が、一番感動しました。ソハンと心が通い合う瞬間です。王には絶対ないだろう瞬間、権力者の孤独をも感じます。

最近キナ臭い日韓ですが、場内ビョンホンファンと思しきオバさま達が一杯の中、私の横は若いカップルでした。今も昔も、どこの国も政治を司る者は、庶民の感覚とは違います。そこから平和的な着地が見つかればいいなと、ふと思いました。


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