ケイケイの映画日記
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寒さ厳しい毎日、皆さん如何お過ごしでしょうか?ご多分にもれず、我が家も夫と三男が感染性胃腸炎となり、今頃なら5本は消化しているはずが、ぬわんと今月これが1本目!優先順位下位作品なれど、忙しい時は合間をぬって、気楽にちゃちゃっと観られる作品が最適な訳です。で、この作品です。昔懐かしい雰囲気に彩られたトムちんの俺様映画ですが、トムちんも50代に突入した折、そこはかとなく老いが漂い、それもまた味わい深く感じる作品と仕上がっています。監督はクリストファー・マッカリー。あの「ユージュアル・サスペクツ」の脚本家です。
ピッツバーグ郊外の川沿い。ある日六発の銃弾が打ち込まれ、5人の罪のない善良な人々が無差別に殺害されます。犯人として捉えられたのは、元米軍スナイパーのジェームズ・バー。証拠も揃い、簡単に事件は落着かと思いきや、バーはジャック・クリーチャー(トム・クルーズ)なる人物を呼べと警察に要求します。ジャックは元エリート軍人でしたが、今は退役。どこからともなく現れては、事件を解決していく「アウトロー」。バーの弁護士ヘレン(ロザムンド・バイク)と協力し、真相を追います。
家なし、職なし、携帯なし。保険の登録番号もなし。この謎の設定、ふた昔前なら「スタイリッシュ」なんでしょうけど、今や絶滅種のヒーロー像で、「ミッション・インポッシブル」シリーズでトムちんのファンになった方々には違和感バリバリでしょうが、映画を見続けてウン十年の者からしたら、絶妙に郷愁を誘うのよね。それを同世代として、今も現役バリバリで頑張るトムちんが演じる訳で、もう中高年には、それだけでも勝ったも同然の設定です。
若いチンピラ相手に無茶苦茶強いトムちん、辣腕弁護士より上を行く頭脳明晰なトムちん、交渉事には応じず常に上から目線のトムちん、上半身裸でフェロモンを振りまきながら、パートナーの美女(ヘレン)には手を出さない(でも冒頭で娼婦は買っている)男の美学を見せるトムちん。と、正に王道俺様映画。トムちんが立派なのは、アクションは自分でやっている事です。カーアクションも素手の勝負、銃撃戦もお茶の子さいさい。これが及第点で鑑賞に耐えうる仕上がりになっています。
懐かしさはムードだけではなくキャスティングにも。オーラスでトムちんと相棒になるのは、何とロバート・デュバル!もう80越えていると思いますが、老人ならではのパワーとユーモアがたっぷりで、とても楽しめます。監督として有名なベルナール・ヘルツォークも悪役で出演です。特異な風貌が、いかがわしく重量感はあるのですが、如何せん役の設定がちとしょぼい。せっかくの起用ですが、生かせているとは思えませんでした。
その他、最近は黒人俳優もハンサムで垢抜けている人ばかりですが、刑事役のデヴィッド・オイェロウォは、シドニー・ポワチエ型のアフリカン感満載で作品の雰囲気にあっていたし、検事役のロバート・ジェンキンスとヘレンが親子と言うのも、ちょっとした仕掛けに生かせています。
筋は正直平凡で、だいたい先は読めますし、悪役はもっと凶悪さを出して欲しかったし、ヘレン親子の葛藤など、多分秀逸であろう原作の、ダイジェスト版的な脚本のように感じました。しかし、アクション以外にも、トムが追われた車から離れ、バスに乗り込むシーンの粋なプロット、上記に書いたデュバルの扱いなど、ニタニタ出来る演出が随所にあり、観ている間飽きません。
平日昼間に観たので、多分観客は10人くらいだと思いきや、その5倍くらいいて、びっくり!この分野はハイクオリティより、観て損は無かったと言う、中の上感が大事なんだと痛感しました。
老けたなぁ〜と、ちょっと心配になったトムちんですが、後半どんどん若返るので大丈夫。それよか、ロザムンド・バイク初登場シーン、あまりにそっけない風情で、その劣化ぶりに仰天しましたが、途中から胸の谷間を強調したり、いつもの美貌を取り戻しホッとしました。これ役柄を途中で手直ししたのかしら?こう言う感じで、のんびり楽しめる作品です。普通ならB級サスペンスとなるはずが、トムが主人公を演じるお蔭で、それなりの風格を感じるのですから、やっぱりトムちんは偉い!
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