ケイケイの映画日記
目次|過去|未来
2011年01月04日(火) |
「黒薔薇昇天」(神代辰巳レトロスペクティブ) |
皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。
本年初映画です。念願の「ロマポ」&「動く谷ナオミさま」(画像はたくさん観ている)を拝見出来て、春から縁起がいいったら、ありゃしない。実は生まれて初めて日活ロマンポルノを劇場で観る事に、嬉し恥ずかしの私なのでしたが、昨日夫とこんな会話が。
夫「あんた、明日なんの映画観るんや?」 私「日活ロマンポルノ」
夫「・・・。普通の女の人は、一人でそんなもん観にいかんやろ?」(あんたの嫁は、映画に関しては普通の女ではない) 私「知らんか?キネ旬とかで、昔邦画のベスト10にいっぱい入ってたんやで。神代辰巳の特集やねん」
夫「神代辰巳って誰や?どこでやるねん?」 私「・・・。『青春の蹉跌』(これくらいは知ってるかと思っていたら、これも知らんかった)とか、一般映画も撮ってる人や。場所は九条。主演は岸田森。シネヌーヴォって、大阪の映画好きの聖地やねん」
夫「九条て、また微妙な(←それはそうやな)。岸田森て、あの気持ち悪い俳優やな。まぁ行っといで。」
岸田森の名を出したら安心するかと思いきや、これが不信の上塗り。う〜ん、一般人は手強い。巨匠・神代も、夫の前では形無し。これが成田三樹夫なら、夫も「俺も行くぞ」となったと思います。(夫は成田三樹夫が好き)私にしたら、二人とも早逝の名優(怪優?)なんですけど、ポジションは違ったからね。でも大阪で日活ロマンポルノが一般館で上映されるのは、稀有なこと。夫の白い眼もなんのその、頑張ってきました。めっちゃ面白かった!
ブルーフィルム監督の十三(岸田森)は、「ワイは芸術を撮ってるんや」が口癖の男。主演女優メイ子(芹明香)が妊娠のため、出演作を降板するのに頭を痛めていましたが、ふとしたことで老人の妾稼業の幾代(谷ナオミ)を見出し、彼女を主演にすべく、あの手この手で策を練ります。
ポルノ映画の中でブルーフィルムを撮ると言う二重構造が面白いです。「ワイの撮ってるもんは、やくざが作ってるもんとはモノが違う」と鼻息荒い十三ですが、妊娠したメイ子にとっては、男性をその気にさせるもんには変わりなし。彼女が「お腹の子に恥ずかしい」と、降板を申し出るにはすごく共感出来る私。まっ、そういう事して子供は出来るもんですが、それを人前で大公開してお金にするのは、彼女に芽生えた母性が許さなかったのでしょう。
十三は動物園で鳴き声や歯医者での会話など録音して、エロテープ作成の副業をしているんですが、私が爆笑しそうになったのは、土俵を下りてすぐの力士のインタビュー。確かにハァハァ言ってます。頭がエッチでいっぱいになってたら、確かにエロエロに聞こえますわな。いや人間の想像力とは素晴らしい。レスリー・チャンの「色情男女」でも疑似ファックの小道具を作るのに苦心惨憺の場面が出てきますが、実際のポルノ映画の苦労を垣間見ているようです。
で、念願の谷ナオミさま登場。ほぉ〜、気品がある!楚々として恥じらいのある風情が何とも可憐。実際自分の盗聴テープのエロさに恥入り観覧車から飛び降りようとしたり(!)、騙されてブルーフィルムを見せられて、身体をよじって恥ずかしがったり、この辺のお芝居がすごく上手。可憐なのにエロエロという稀有な個性が充満しています。
それでまぁ脱ぐとですね、私はあんな完璧なそそる女体を観た事がない。もうほんと、完璧。ちょっと大きめの美乳になめらかそうな肌。エクソサイズで鍛えました!的ではない、筋肉をまるで感じさせない柔らかそうな肉体です。圧倒的に美しい裸体からは、「私を抱いて〜」オーラが発散しているわけ。でも男性を威圧するところが全くありません。男性のモノなんて、見た事もありませんという感じの令夫人が、セックスしたら一転、あらん限りの情熱的な痴態を見せるんですから、たくさんの男性諸氏の「永遠の恋人」になるわけだわと、すごーく納得出来ました。艶技だけではなく、演技も想像以上に上手でした。
岸田森が圧倒的な存在感で熱演していて、これまた嬉しくてホコホコしました。私的には「怪奇大作戦」や「傷だらけの天使」が印象深い人ですが、カテゴリー「怪優」になるんでしょうか?この作品でも、当時まだ30半ばのはずなんですが、既に頭髪薄く哀愁を誘います。熱気と汗でその頭髪がべちゃ〜となると、怪しくてキモイ。でも「ファックこそ人間最大の崇高な行為!」と、なるほどと、丸めこまれそうな理屈を並べながら、やってることは「あんた、頭おかしいんちゃう?(byメイ子)」と、ほとんど詐欺師か山師なんですが、ブルーフィルムで芸術を撮るという信念は強く感じさせるので、可愛くてちょっとカッコよく見えてくるから不思議。
思えば当時は(今でもかな?)、ポルノだからエロ、巨匠が撮る性がテーマの作品は芸術、というのが一般的な風評だったはず。だから神代監督は、十三の口を借りて「ブルーフィルムで今村昌平はんや大島渚はんの映画みたいな作品を撮るんや!」と語らせたのでしょう。ロマポ監督の意地と気概が言わせたセリフだったのですねぇ。
それと印象深かったのは、「ブルーフィルムを芸術にするには、演じる女性は清潔でなければいけない」という、十三のセリフです。ポルノというと、下品なお色気を振りまく安い女優が出てくるような印象がありますが、それは違います。これもポルノはれっきとした映画だと、エロビデオと混同しがちな世間に向けての言葉なのかも。
ラストは艶笑話的ちょっといい話でした。あそこまでやりゃ関係ないと思うんですが、男性にとって、「イク」と「イカナイ」では大層違いのある事なんだなと、勉強になりました。いやほんまに。
たった一つ気分が悪かったのは、何かというと十三が女性陣の髪を引っ張り回して叩いたり小突いたりすること。暴力も愛情表現の一つみたいな、間違った認識が昔の男性にはあったようですが、これは絶対違いますから。幾代もこれに応じて、「あんたみたいな人、待ってたんよ〜」みたいなセリフが入り、正直ワタクシ激怒。これは教養のない盲想ですんで、努々お間違いなきよう。まっ、拙レビューを読んで下さる紳士諸氏におかれましては、関係ないことですね。
舞台が大阪だったので、昔の戎橋、チラッと映る南街会館、松阪屋の屋上の遊園地など、今はもう無くなったものばかり。わ〜、懐かしいと嬉しかったです。ロケではフィルムに入る人々がじ〜と俳優さん達を観ていて、ゲリラ的に撮ったのかしら?と、低予算の苦労も忍ばれました。ポルノというには、ファックシーンはそれほどなく、ストーリー重視で、女性も観易い作品でした。私は時間の関係で、この特集の他のロマポは観られませんが、21日まで特集はやっていますので、興味がおありの方は是非どうぞ。ヌーヴォですので、女性一人でも安心できる環境です。
谷ナオミは堪能しましたが、多分こんなもんじゃないんでしょうね。いつかきっと劇場で、「SMの女王」たる谷ナオミを絶対観るぞ!小沼勝特集望む!
|