ケイケイの映画日記
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2009年10月22日(木) 「悪名」(大阪ミナミ映画祭)

大阪ミナミ映画祭で観てきました。この映画祭は今回で五回目。
何でも日本で一番初めて映画が上映されたのが、現在の高島屋前の丸井だそうです。大阪に所縁のある作品や人物が上映されるのが特徴です。私が観たのは、サテライト大阪と言って、競輪の場外車券場での上映でした。入場券500円なのに、ペットボトルのお茶とお菓子までいただき恐縮していると、特別こしらえの会場では懐かしのポップスや歌謡曲まで生演奏。椅子は120席くらいでしたが、オールドファンを中心に7分くらいの入りでしょうか?皆さんとても楽しそうで私まですっかり嬉しくなり、新作の「エスター」をぶっちぎって、こっちにして正解でした。

終戦直後の大阪の河内。朝吉(勝新太郎)とモートルの貞(田宮二郎)は、松島遊郭で働く遊女・琴糸(水谷良重)を足抜けさせるため、奮闘します。

今回初めて知ったのですが、この作品は私が生まれた年に制作されています。勝新と言えば「座頭市」が浮かぶ方も多いでしょうが、少々むさくるしい市より、私は男気と可愛さがいっぱいの朝吉の方が断然好きです。大昔に幾度となくテレビで観た作品ですが、今回自主上映と言う形で念願のスクリーンで拝見。笑うところは笑い、しんみりするところは会場にその空気が漂いという、ノリの良い大阪のオールドファンと、「悪名」の世界を堪能しました。

まず感心したのが、勝新の大阪弁が完璧なこと。イントネーションから微妙なセリフ回しまで本当に上手いです。この作品のおかげで大阪の河内はがらが悪いと世間から言われるようになったそうですが、なるほど、男が喧嘩の時発する言葉は、大阪弁が最強やなと、しみじみ思いました。

その喧嘩なんですが、近頃のアクション映画とは違い、無手勝流の本当の男同士の喧嘩と言う感じで、非常にリアリティがあります。朝吉の腕っ節の強さに惚れ惚れしながら、やっぱり男は喧嘩の一つも出来んとあかんわと痛感します。

貞のお茶目な一本気さも、さっぱりしているのは江戸っ子だけじゃないぞと、にんまり。制作当時、伸び悩んでいた勝新と、新進俳優であった田宮二郎だったそうですが、二人とも若さと勢いが溢れていて、なるほどこれはブレイクしたはずだわと納得。今なら阿部寛が絶対に昔の田宮二郎の役が似合うと思うんですが、いかが?

男が男らしさを発揮すれば、女の方も艶と愛らしさがいっぱい。艶の方は朝吉を騙して駆け落ちする人妻の中田康子の、色っぽさときっぷの良さが絶品です。清楚で陰のある憂いを漂わせる水谷良重と、初々しく伸びやかな愛らしさがいっぱいの中村玉緒は同年代ですが、同じ水商売についても、体を売る水谷良重の陰と、酌だけの中村玉緒の陽が、鮮やかにコントラストされているのがもの哀しいです。

特に特筆すべきは中村玉緒の花がほころんだような愛らしさです。もう本当にこんな可愛い子がいようか?と思うほど、女の私でもデレデレしてしまいそうなほど、本当に可愛い!バラエティの彼女しか知らない若い方に、是非ともこの頃の中村玉緒を観て欲しいですね。

この50年弱で、人間のDNAって変化したのか?と思うほど、男は男らしく女は女らしくの世界です。琴糸の気持ちも考えず、夫婦の契りを交わした玉緒を紹介するなど、とうへんぼくな朝吉ですが、空気が読めたり気配りが出来過ぎる人より、私は男はこれくらい鈍感(無神経にあらず)な方が好きです。そんなことより大事なのは、命懸けで女を守るということですから。
半世紀で、人権問題など、格段に進歩したところもある世相ですが、その代わり、何か大事なものを失ったとも感じました。

男の強さと負けん気と、女の可愛げが、若々しく充満している作品です。愛嬌もユーモアもたっぷり。ラストの朝吉の「わいが死んでも、わいのど根性は生きとるわ!」のセリフに、拍手喝采。私は大阪の女なのでね、大阪の男が素敵に描かれていると、やっぱり嬉しいです。

映画祭はあと二日。皆さま奮ってご参加下さい。
大阪ミナミ映画祭(HPです)
実行委員の皆さま、楽しい時間をどうもありがとうございました。来年も是非参加させていただきます。







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