ケイケイの映画日記
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2008年05月03日(土) 「相棒-劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」

1日の映画の日に観てきました。私は小さな開業医で受付をしておりまして、GWは暦通り出勤。でも木曜日は定休日なんですね。最近はあっちこっちの劇場で会員になっているので(全部で7つ!)、千円もさほど有り難味がないんですが、でも仕事休みと重なっているとなれば、やっぱ何か観たいでしょ?

ということで、なんばTOHOまで「つぐない」を観に行ったんです。そしたら30分前に着いたのに、ソールドアウト!もう一館上映している、テアトル梅田まで行っても良かったんですが、しかしここも会員なので、常時千円で観られるのです。いつも千円で観られる劇場で、わざわざ千円の日に観に行くのは、いかかがなもんか?ということで、家まで戻り、チャリを飛ばして、ラインシネマでこの作品を観る事にしました。何故戻ったかといいますとね、ワタクシ地元で観られる作品は、地元でお金を落とす主義。だってラインシネマが潰れると、映画的死活問題ですから!

ラインシネマなら空いてると思っていたのに、すごい人気なんですね、この作品。5分前に滑り込みで着くと、最前列しか空いていませんでした。どの劇場もすごく大ヒットしているとか。映画自体は、出来が良いとは言い難いのですが、核にあるものに良心が伺え、好感がもてます。

二人だけの特命係に配属されている杉下右京(水谷豊)と亀山徹(寺脇康文)。謎の暗号が残された連続殺人が多発し、国会議員の片山雛子(木村佳乃)もターゲットと判明し、護衛にあたる二人。手がかりを辿り、三万人のランナーが出場するマラソン大会で、犯人が爆破計画を仕掛けていると判明します。

実はドラマの方を時々(ほんの時々ですが)観ています。そのどれもが、テレビドラマという枠の中での過不足のない問題定義が上手く、上質の番組だという認識がありました。なので映画化されると聞いた時、ピンと来るものがあったんです。その予感は当たっていました。

正直出来としては、期首変時に特別に二時間ドラマ枠で放送されるくらいの出来でした。SNSをモチーフに持ってきたりして、現代感を出そうとしていますが、上手く機能しているとは言えません。盛り上がりの見せ場になるはずのマラソン大会も、不必要なダミーの連続だし、直接の犯人の動機と絡ませるには、無理があります。本仮谷ユイカ扮する少女は清楚で良い雰囲気ですが、この子の現状を問題定義の主に置きたいばっかりに、柏原崇扮する塩屋との関係性の示し方が不味い。そして決定的なのは犯人。あの特徴のある演出では、観客に気付けと言わんばかりです。

この作品が問題定義したかったのは、数年前に日本に起こったある事件が元になっています。「自己責任」という言葉が流行りましたよね。あれです。これだけ難点をあげつらっているのに、私が好感を持ったのは、せっかくドラマを映画化するならばと、派手なドンパチや華やかな特別ゲストのキャスティングではなく、「相棒」というドラマの世界観を踏襲しながら、過去の出来事を見つめ直して欲しいという、作り手の誠意のある心意気に感激したからです。今後の国際情勢から考えて、とても意義のある問題定義だと感じました。

テレビ局というのはマスコミ側ですし、この脚本で映画化にGOサインを押したのは、自分たちの反省と次への自戒もあると思うのは、考え過ぎかな?犯人に対し、「あなたの言う事は正しい。だかやり方が間違っている」と、きっぱり言い切る右京。私は頭脳明晰かつ優秀な彼が、何故こんな窓際に置かれているのか、詳しくは知りません。でも砂を噛むような思いをし続けているはずの彼から言わせたこの言葉は、とても重みがありました。

ドラマを観たことがない方でも、簡単な説明を随所に入れているので、人間関係は把握し易いと思います。オチはあるはずもない事ですが、誰もが納得できる方法で、作り手の問題定義への答えも、明確に出しています。ドラマの映画化という観客層から思えば、これくらいの作りの方が、優しくて良いと思います。大ヒット中らしいので、多くの日本人が「あの事件」に対して、もう一度考える機会に恵まれるかと思います。


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