ケイケイの映画日記
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2007年09月17日(月) |
「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」 |
全編英語で日本語字幕、時代劇をミックスした和風ウェスタンを描き、巷では賛否両論のこの作品、早速観てきました。私は普通に楽しめました。まぁ諸々疑問の箇所はあるでしょうけど、それは感受性と言うか感覚と言うか、そういうもんの相異だと思います。某評論家ががめちゃめちゃ貶しているそうですが、私は結構好きな作品です。
壇ノ浦の戦いから数百年。平氏の末裔たちが集落を作った村「湯田」では、村民たちが平穏に暮らしていました。しかし村にまつわる埋蔵金を目当てに、平清盛(佐藤浩市)率いる平家軍(赤)と、源義経(伊勢谷夕介)率いる源氏軍(白)が、村民を巻き込み対立を激化させている時、一人のスゴ腕ガンマン(伊藤英明)が現れます。
冒頭タランティーノが出てきて、ちょこっとお芝居してくれるんですが、私的には、つかみはOKなノリでした。香取慎吾も出てくるんですが、変にロン毛の金髪が似合い、ムードはビリー・ドラコみたいで、お芝居は下手でしたが、怪しいムードがあってちょっと見直しました。
さて本編の方なんですが、対立する二方の様子を、ユーモアもふんだんに交えてバイオレンスタッチで描いています。今回血しぶきは控えめかな?三池崇史監督のユーモアというのは、笑えない人は多いみたいなんですが、私はだいぶくすくす笑えて楽しかったです。ストーリー的には別に大して面白みがあるわけではなく、演出を楽しむ作品だと思います。なので合わない人は退屈だとは思いました。
主役は一応伊藤英明なんでしょうが、↑以外にも、桃井かおり、香川照之、石橋貴明、安藤政信、木村佳乃、松重豊、堺雅人、小栗旬、塩見三省など、いずれ劣らぬ芸達者が、熱演・好演・怪演を見せてくれ、これが一番見どころでしょうか?
平家・源氏をはじめ、保安官の香川も含め、いずれも鬼畜・外道の集まりなんですが、みんなみんなキャラが立っていて、描き分けがきちんとできているところがいいです。ずるくて小心、チキンなハートと、一見キャラが被っている清盛佐藤と保安官香川も全然違う人。二人ともおふざけが過ぎるぎりぎりで寸止め、さすが腕のある役者は安心して観ていられます。
そんな中同じ下道でも、冷酷にしてひたすらカッコイイ伊勢谷夕介。刀も銃もかっこよく扱い、泥まみれで汚い顔した演技陣の中、彼だけずーっと美しいまま。この「特別扱い」の期待に応えた、抜群の存在感でした。ほんと、すんごくカッコいいのよ!今年の大河(今年のは近年では出色の出来だと思う)でガクトが上杉謙信を演じているんですが、出てくる度そこだけ画面がCGのようになり、表情もセリフ回しも超一本調子で、何故伊勢谷夕介をキャスティングしなかったのかと?と、毎回思うのですが、今回の義経役を観て、改めて同じことを思いました。
桃井かおりも、ジーナ・ローランズかと思うカッコ良さ。こういうカッコイイ婆さんの役は、夏木マリが演じることが多いですが、ちょっと走る姿がドタドタするものの、颯爽とした熟年女性を観る機会は映画では滅多にないので、私的には大満足でした。
木村佳乃も黒いガーター姿を披露したり、泥まみれになってレイプシーンを演じたりと大熱演。女優さんが一皮むけるには、ヌードのなるのが多いですが、今回あれだけの芸達者たちが好き勝手楽しんで演じている中、脱いでも印象に残らず脱ぎ損だと思うし、あれくらいで止めておいた方が、静(役名)の情念がより濃く残ると思うので、私は良かったと思います。充分エロかったしね。
お陰でそれなりにソツなく演じていた、主役のはずの伊藤英明が一番印象薄いという結果に。彼は誠実な好青年役が似合う人なので、もっと陰りがあったり凶暴だったり、個性の強烈な人が演じた方が似合ったかも。彼が悪くはなかっただけに、残念でした。
途中で趣が変わり、ストーリー的には更に弱くなります。でもこじつけというほどでもありません。こういうふざけたノリの作品で二時間はちょっと長いので、20分ほど削っては欲しかったんですが、観た後ちょっと珍妙だけど、あぁ面白かった!というくらいにの出来ではあります。
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